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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
海外旅行と淡い恋
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明るい軍隊生活(カブ)

 すごくわかりやすく言うなら、地獄だった。


 俺、カブの外国軍隊生活が、だ。


 朝飯前に早朝ランニング。なんか歌いながら2時間くらい走る。

 飯食ったら山やら川やらアスレチックコースやら強行軍して体力作り。

 昼飯食って少し長めのお昼寝タイムの後は格闘技練習やらペイント弾使ったサバゲやら。

 スコールが降る頃に一旦休憩で射撃訓練。

 夕飯を食べた後は座学でお勉強。銃火器の取り扱いから狙撃爆破技術、戦略戦術体系から意思決定プロセスまで、ぶっちゃけ半分以上理解できなかった。こういうのは一茶とか士官にでも勉強させろって思う。

 座禅で精神安定を取り戻せなかったら発狂していた自信がある。


 そうそう、一茶と福留はさっさと日本に帰った。

 笑顔で見送ったが後悔している。だってこんなにきついとは思わなかったし。


 明らかにオーバーワークだと思うのだが文句も言えない。

 なぜならやっているのは俺だけじゃなくてアメリカの兵隊さんも一緒だからだ。


「カブ、アーユーオーケー?」


「オーケーじゃねえよちくしょう。ジョンはきつくねえの?」


 俺は隣にいるつぶらな瞳を持つ身長2メートルの黒人ジョンに聞いた。


「きついことはきついけど、もっときつい訓練もあるから。無人島にナイフ一本で3か月滞在とかもあるしね」


 そう言って白い歯を見せるジョン。

 さすがは世界最強アメリカ陸軍ってところかね。


「僕に言わせればへとへとにでも訓練についてくるハイスクールスチューデントのほうが驚きだよ」


「おべっかはいいって!」


 俺は真横に飛び跳ねた。寸前まで自分のいたところにペイント弾が炸裂する。


 むせ返るような熱気、深い緑の群れ。


 ジャングル。


 茂みに入り、留まらずに奥へ。

 後ろでペイント弾が茂みを貫通する。


『いいぞ、遮蔽物はその材質を理解しろ。姿が見えるのか見えないのか、弾は防げるのか通すのか』


 イヤホンから聞こえる貴美子さんの声。

 わかってるって、こっちは異世界で『ダークネス』使ってるんだ、実体験があるんだよ。


 俺は振り返り様、引き金を引いた。


「……HIT!」


 少し遅れて聞こえたその声を聴く前に、複数の銃弾が俺に迫る。

 俺はそれを地べたに這いつくばってかわした。


「ジョン!」


「OK! ガンファイアを確認した!」


 ジョンが俺を撃ってきた敵に斉射。後、弾が当たったことを伝える「HIT!」の声が聞こえる。


 終わったか? と少し気を緩めた瞬間、後ろから羽交い絞めにされた。


「どこに、いやがった!」


 俺は思い切り体を九の字に曲げる。敵はそれをさせまいと俺の身体を引っ張り上げる。

 ある一点、俺の右腕が股下を通って敵の右足に手がかかった瞬間、俺は身体を跳ね上げた。敵は片足になりバランスを崩す。

 反動で後ろに倒れる俺と敵。

 敵は急いで立ち上がる、が、俺は寝ころんだまま敵にアサルトライフルの銃口を向けていた。

 敵は苦笑を浮かべて両手を上げた。


 俺は銃を捨て、地面に身体の力を抜いた。


「見事だ、カブ。まさか4週間で負けることになるとは思わなかった」


「ようやく1回、しかもハンデ付きだけどな」


 俺は敵役だった米兵さんの手を掴んで立ち上がった。


 今回俺がやっていたのは、サバゲで言うところの『キツネ狩り』ってやつだ。

 俺対俺以外の米兵20人。

 と、言っても俺にはジョンという仲間がいたし貴美子さんのナビもあった。しかも武器は俺たちがアサルトライフルなのに対して米兵サイドは弾数制限ありのハンドガンのみというハンディキャップマッチではあったのだが。


「カブ、やったな!」


「おう、ジョン。俺たちの勝ちだ」


 ジョンは俺に駆け寄ると俺の脇の下を掴み思い切り抱き上げた。

 うん、こう喜びの表現が大きいところはアメさんのいいところでありうざいところでもあるな。


「おい、子ども扱いするな!」


「俺の娘より小さいくせに、ぐは!」


 俺はジョンの顔に蹴りを入れてやった。


『盛り上がっているところ悪いが、カブくん、そろそろ戻ってきてくれ』


「了解」


 俺は貴美子さんのところに戻ることにした。


「カブ、来週にはジャパンに帰るんだろ? 後でパーティー開いてやるよ」


「遠慮するよ。ていうか毎週パーティー開いてるじゃねえか」


 ちなみに言うとパーティーはなにかと理由を付けて開かれている。

 アメリカ人のバーベキューとパーティー好きはガチだ。

 おかげで休日も拘束されるので、せっかくの海外なのにほとんど観光らしい観光もしていない状況だ。

 なので、最後の週くらい貴美子さんと観光でもしようかと計画しているのだ。

 つうか、飯もほぼほぼマッシュドポテトにグレービーソースかけたステーキだったし。いや、うまいことはうまいんだけど、初日に食べたバクテイとかレアなものが食べたかったんだ俺は。


 8月も下旬に差し掛かっている。そろそろ戻らないと俺が、ていうか貴美子さんがまずいらしい。

 俺個人としては学校が始まる寸前まで残ってもいいのだが、貴美子さんいないんじゃいてもつまらないしなあ。

 中旬の寺が忙しいお盆の頃は優婆塞どもが血の涙を流して帰ってきてくれと言っていたが、今は音沙汰無しだ。ま、死んじゃいないだろ。


 土産も買わなくちゃなあ。クラスの連中と寺の連中、創生委員会には福留が買っていっただろうから買わなくていいか。

 そういえば、最近エトの機嫌が悪いんだよな。久しぶりに会った家族となんかあったんじゃないかと邪推しているが、ご機嫌取りになんか買っていってやるか。うん、これは貴美子さんに相談だな。





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