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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
海外旅行と淡い恋
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エト、グレることにする(ベン)

 何事も最初が肝心。


 使い古された言葉なれど、私、半沢祐樹ことベンにとってはこれほど身に詰まされる話はないことです。

 高校デビューの失敗はその後3年間のボッチ生活を決定付け、大学デビューの失敗はわずか2か月で退学するまでに至ったのですから。


 今度は失敗できない。

 金曜午後11時59分までにチェック目録を付け、万全の態勢で挑みます。

 鏡で鼻毛のチェックはしたし、服装は安物ながらも清潔感のあるものを着用。

 制汗剤に口臭消しも使用済み。

 あ、場を白けさせないためにクラッカーや手品用品をポケットに隠しておかないと……。


 そうして臨んだ新しいクラン、ヘブンズウルフの会合は、ものの見事に裏切られました。



「ちょ、やめてよお!」


 出会い頭、悲鳴のような声を上げたのはイオ氏でした。ソバージュ髪がお似合いの少しオシャレな中学生です。


 すわ、なにかミスしたか! とも思いましたが、どうやらイオ氏は私にではなく私の隣にいるカブ氏に言ったようでした。


 その理由は一目瞭然、カブ氏は全裸だったのです。


「カブ、なんで裸なの?」


「そりゃやることやってたからに決まってんだろ。んなことより、今回おかしいぞ。まだ11時のはずなのに」


「カブ、時差って知ってる?」


「あ……」


 そういえばカブ氏と一茶氏は今外国に行っているのでしたな。羨ましい、私も仲良くなって一緒に連れてってもらえるようになりたいものです。


「とりあえず、前くらい隠したら?」


 そう言ったのはダイゴ氏。確か彼は私と同じ歳です。


「別に見られて困る貧相な身体してねえよ」


 確かに、カブ氏の身体はよく鍛えられていて、さながら体操選手のように見えました。欠点を言うなら背が低いことでしょうか。


「あ、そうそう。おまえらに言っておくことがある、、、なんだよ一茶」


 カブ氏がなにかを言おうとすると、一茶氏は首を横に振って止めます。

 ですがカブ氏は一茶氏を振り切って、こう言いました。


「俺、彼女できたから」


 なぜか膝から崩れ落ちる一茶氏。

 カブ氏の股の間をガン見していたエト氏はそれを聞いた途端フリーズしました。

 ちなみに、小学生のナギサ氏はのりこ氏と中村氏を連れてさっさと遊びに行ってしまっています。


「あ、とりあえずおめでとう、かな?」


 と、ダイゴ氏。


「ちょ~どうでもいい」

「同意」


 これはブリ氏とケイ氏。


「うっせ! 人の幸せを妬むんじゃねえぞ」


「はあ! 誰が妬むか!」

「そうだ! うちら、ちょーモテるし!」


「オタサーでか?」


 ギャンギャンと騒ぐ女子2人をスルーして、カブ氏は全裸で女神像のほうに行ってしまいました。


「……てやる」


 さて、だんまりはあまりいいことではない。私もそろそろ発言しようかと思っていると、隣のエト氏がなにか言いました。


「グレてやる! ものすごい不良になってやる!」


 いきなりそんなことを言い出しました。


「もういいです。私は世をはかなみました。私は不良になって悪いことをします。しまくります」


「あ~やっぱり面倒くさいことになった」


 そう言って頭を抱える一茶氏。


「エトちゃん、参考までに聞くけど、悪いことってなに?」


 ダイゴ氏の問いにエト氏は可愛らしく人差し指を唇に当てて考えました。


「そうですねえ。夕ご飯がコーラにポテチ、とか?」


「駄目、それは絶対駄目! 私たちの歳でそれやったら翌朝ニキビで酷いことになるわよ!」


 と、イオ氏。


「じゃあエトちゃん、私はマグネットピアス貸してあげる」

「じゃあ私はタトゥーシール!」


「ありがとうございます♪」


 後年、これが『大姦婦』、あるいは『全人類の敵』とまで言われる女怪の若かりし姿など、誰が想像できるでしょうか?




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