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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
海外旅行と淡い恋
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商談

「日本人は時間に律儀と聞いていたがそれは嘘のようだ」


「そう言うなよ。こっちにも色々あったんだ」


 意外にも流暢な英語でそう答えると、カブくんはどかりと男の対面のソファに腰かけた。

 その無礼な態度に、男の眉が少し動いた。


「ま、面倒くせえのは抜きだ。一茶、名刺」


 カブくんの左後ろに立つ一茶くんは男に名刺を渡した。

 男は一瞥すると、名刺をテーブルに投げた。


「まず、理解して頂きたいのは、この商談はシュトーク社の本位ではないということだ。ペンタゴンを通じて日本軍務省から要請があったため時間を取ったが、本来こんなことはありえない、と、理解して頂きたい」


「ああ、構わない、ていうかどうでもいいな。てめえらは物売ってんだろ? 満足できるなら俺たちは買う。気に入らなきゃ他所に行く。それだけのことだ」


「……売る売らないの選択権はこちらにもあるのだがね」


「おう、そうか。福留」


 カブくんの右後ろに立つ福留くんは紙を男に渡した。どうやらリストのようだ。


「……ショットガン3丁、アサルトライフル3丁、アンチマテリアルライフル3丁。それにサブマシンガン20丁。これだけ?」


「それに、各銃に付き1000発の弾丸をお願いします」


 福留くんがそう言うと、男は露骨に鼻で笑った。


「正直失望している。この程度ならアメリカ本土の大型スーパーでも揃えられる。こんなもののためにシュトーク社に商談を持ちかけたのかね?」


「条件の項目を確認ください。弾薬は同量を週単位で日本の米軍基地まで届けて頂きたい」


「他には?」


「ねえよ」

「いや、あるにはあるんですが、とりあえず、大筋でそれだけ」


 男はわざとらしく大きなため息を吐くと、出口を指差した。


「お帰りはあちらだ」


「おうそうか。邪魔したな」


 カブくんは勢いよくソファから立ち上がった。

 そのタイミングで女性が電話を男に渡した。

 もう商談は終わったとばかりに、男は目の前で電話に出た。


「はい……、は? 大統領補佐官?」


 ……私としても聞き捨てできない言葉が聞こえた。


「は? いや、しかし……、はい、はい、……、はい。……はい、了解しました」


 男は私に視線を向けると、無言で電話を差し出してきた。


『ハローマイフレンド、はわゆどぅーい~んぐ?』


「なんのようだ、ナタリー?」


『今回の借りを返そうと思って。シュトーク社には圧力かけといたから』


「頼んでいないが? というかなぜシュトーク社との商談を知っている。私も知らなかったのに」


『気を利かせたのよ。感謝して?』


「わかった。今回の件はチャラにしておくよ」


『ところであなたの新しい恋人、さっき調べたらじゅうろくさ……』


 私は電話を切った。


 見ると、ブースから出て行こうとするカブくんを男は必死で止めていた。


「いや、お互い嫌な思いをすることもねえだろ。こういうのは相性ってのもあるしな」


「そこを、そこをなんとか!」


 男にはもはや『超エリート』としての面影はなく、ティーンエイジのカブくんに日本人ばりに頭を下げていた。

 この手の人間は合理的判断、言い換えれば損得で動くので読みやすかったりする。

 逆にカブくんのほうがファウルラインが不鮮明な分扱い難い。


「カブ、もう許してもいいんじゃない?」


「まあ、待てよ、一茶。そっちから一方的に商談を打ち切って来たんだ、まず謝罪が先じゃねえか?」


 この2人、おかしいことに英語で会話している。

 そしてそれを聞いた男は頭を下げた。


「このたびは申し訳ありませんでした!」


 カブくんは男に近づくと馴れ馴れしく肩を組んで顔を近づけた。


「もう一度(again)」


「このたびは、申し訳、ありませんでした」


「もう一度」


「このたびは、もうしわけ、ありません、でした」


「もう一度」


「……ぐ!」


 男は目に涙を溜めて泣きそうになっていた。

 悔しいのだろう、歯軋りの音がここまで聞こえてきた。




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