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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
ウェルカムニューワルド
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ゴブリンをやっつけろ!前編 2(エト)

「んで、これからの予定は?」


「エトちゃん。外の様子は?」


「すいません。範囲外でわかりません。一度でも外に出て視野に入れればわかると思うんですけど」


「それじゃあ先、進んでみるか」


 私たち4人は通路に出た。セーフエリアは時間切れのため、もうとっくにセーフエリアではなくなっているから、広場で縮こまっていてもいいことはないだろう。

 先に進むとそれに合わせて通路出口付近のマップが表示されていく。


「エトちゃん、どう?」


「……真っ赤です」


「簡単にでいいから数で言ってくれ。10か20か」


「100とか200、そのレベルです、と、動きがあります、来ますよ!」


 私の掛け声で、ブリさんとカブさんは臨戦態勢を取る。

 それと同時にゴブリンが突撃してきた。


 ッタタン!


 カブさんの銃声。が、数が多く全てを撃ち殺せない。

 漏れたゴブリンはこちらに肉薄してくる、だが、そいつらはブリさんに比喩ではなく殴り殺されていった。……ブリさんってなにもの?


 ようやく全員を倒し終わる。ゴブリンたちは光の粒子となって消えていった。


「死体が残らないのはいいな。邪魔にならないし死んだふりされないで済む」


「カブさん、すぐ次が来ます!」


「っとお、休めねえのかよ!」


 カブさんは慌てて弾倉を交換する。


 二波、三波、四波。

 ゴブリンたちは捨て身で迫ってくる。

 カブさんとブリさんはなんとか撃退に成功しているが、危うい場面も出てきた。


「ブリちゃん、まだ大丈夫?」


「おう。元気いっぱいだぜ」


「カブは?」


「続くとまずい。弾がもたないぞ」


「……ジリ貧ってのは一番まずいね」


「一茶さん、これ、私、思ったんですけど」


「なに?」


「このゴブリン、統率が取れてると思うんです」


「……うん、それは僕も考えていた」


「ということは、指揮官がいると思うんです」


「こちらから打って出て倒すって?」


「実は、それらしいのがマップに映ってまして。他のゴブリンより赤い丸が大きいんです」


「……カブ、ブリちゃん。一度広場に戻るよ」


 私たちは一度広場に戻った。そこで私は先ほど一茶さんに話したことをもう一度話した。


「その案、俺は悪くないと思うぜ。ただ、それをやるなら一茶とエト、おまえらには自分の身は自分で守ってもらうことになるが」


「なんとか通路に誘導できないかな」


「待っていれば来るかも」


「来るか?」


「向こうはカブの残弾数なんてわからないから波状攻撃が無駄だとわかれば別の手を使ってくるかも」


「他人任せだな」


「! 新しいのが来ました。けど、今度はゆっくりです」


 私たちは通路に出てゴブリンたちを見た。

 そこには、3メートルほどの通路の横幅いっぱいに並んだゴブリン。その手には大柄な木の盾を持っていた。

 それが足並みを揃えてゆっくりとこちらに向かってきている。

 そして、後ろにいるゴブリンたちは、手に弓矢を持っている。


「また厄介な。あの盾、俺の銃じゃ壊せないぞ」


「……ブリちゃん、働いて」


 一茶さんに言われて、ブリさんはいつの間にかポイントと交換した缶ジュースを飲み干した。


 一茶さんはベルトに差していた棹を取り出した。


「切り札にもうちょっと隠しておきたかったけど」


 そう言って一茶さんは棹を構えた。


 それは、Y字型をしていた。一茶さんは私に説明してくれる。


「スリングショット。いわゆるパチンコ、だね」


「パチンコですか?」


「パチンコと言っても、狩猟用の強力なやつでね。こいつなら……」


 一茶さんはパチンコに備え付けられている太いゴムを引っ張った。


「猪でも狩れる!」


 瞬間、ブオンッと空気を叩く音がして弾が射出された。

 ゴブリンの構えていた盾は安々と砕け、構えていたゴブリンごと後ろに吹き飛ばした。


「すごい……」


「ブリちゃん、ゴー!」


 ゴブリンたちの戦列に空いた穴に向かってブリさんは駆け出していく。

 動揺して隊列の崩れた敵の隙に容赦なくカブさんは狙撃していく。

 そして一茶さんの2射目。

 ブリさんに接近されたゴブリンの弓兵は一射も撃てずに崩れ去っていく。


 敵陣を、叩き潰す。


 こういったことは不適切かもしれない。

 理由がどうあろうと暴力行為である以上倫理的にも問題があるかもしれない。


 でも……、心躍る!


「カブさん! 大きいの、きます!」


「おでましか!」


 そいつは、確かに大きかった。普通のゴブリンが120センチくらいの身長なのに、そいつは180センチ、一茶さんと同じくらいはあった。

 さらに、金属製の盾と鎧、兜までかぶっている。

 一目見て他のゴブリンとは違う、それがわかる。


「ゴブリンたちの将軍、ゴブリンジェネラルってところかな」


 一茶さんはブリさんにヒールをかけた。


「どう、ブリちゃん。いける?」


「行きたくないなあ」


「カブ、残弾は?」


「マガジンがひとつと今装填されてるの。30発もないな」


「それはきつい。けど、相手も待ってくれないからね」


 ジェネラルは咆哮を上げると右手に持っている巨斧で逃げる仲間を薙ぎ払った。

 そして、こちらに駆け出してくる。


「ブリ、右行け。俺は左行く」


「オッケー」


 一茶さんを中心に、ブリさんとカブさんは左右に分かれていく。

 そして、一茶さんはスリングショットを見舞った。

 ジェネラルは急停止し、それを盾で受ける。

 止まった隙にカブさんはジェネラルの手の甲に銃弾を放つ、が、効いていないのかジェネラルは武器を取り落とさない。

 ジェネラルは銃撃を嫌うように巨斧をカブさんに向かって振るった。

 

 鮮血!


 かわし切れなかったのか、カブさんの頬が裂けた。

 倒れながらもカブさんはジェネラルの顔に向かって銃を放つ。ジェネラルはそれを避けるため盾を顔の前に構えた。


「もらい!」


 ブリさんは隙だらけになったジェネラルの左踵を払った。

 グラリと揺れるゴブリンジェネラル。

 そして、その隙を突いて一茶さんはスリングショットを放った。


 盛大に倒れるジェネラル。

 だが、すぐに身体を起こしてきた。


「火力が足りない! スリングショットで傷を負わせる程度じゃあ倒せないわよ!」


「じゃあ、どうすんだよ!」


「エトちゃん!」


 急に名前を呼ばれる。


「先に広場に行っていて」


「え、でも……」


「今は役に立たないから! なにかスキルを取得してきて!」


 私はひとつ頷くと広場に駆け込み、台座に触れた。


「な、なにか、なにか攻撃力のあるもの!」


 壁に紋様が広がる。が、それに触れても『取得条件を満たしていません』の文字。


「ど、どうすれば、どうすれば」


 頭の中がいっぱいになってパニックになる。


「火力の強いもの」

『取得条件を満たしていません』

「あいつをやっつけられるもの!」

『取得条件を満たしていません』


「もう!」


 スキルではだめだ。なら、物質交換で強力な武器を。


「爆弾とか、それじゃなかったら本物の銃とか……」


 それらはあったが、ポイントが桁外れに多かった。100万とか、そういう単位だ。


「これもだめ!」


 私は最初の項目に戻った。まだ選択していないもの『ワールドカスタマイズ』。


「えっと、水場作成10万ポイント、粘土帯作成10万ポイント、石切り場……1000まん!」


 だめだ、これも使えない、と思ったがひとつ安いのがあった。と、いっても万単位のほかのと比べて、だが。


「! セーフエリア、10分1000ポイント。これだ!」


 私はセーフエリアを選択し、広場を指定する。


『セーフエリアが発動されました』


 その声とほぼ同時に、広場に3人が飛び込んでくる。3人とも、傷だらけの満身創痍だ。


「ガッガガガggggッガア!」


 ジェネラルは怒り狂って透明な壁を叩くが、びくともしなかった。


「カブ、今!」


「おう!」


 カブさんと一茶さんは安全地帯からジェネラルに攻撃を加える。ジェネラルは盾でそれを防ぐと、やがてあきらめたのか後退していき、やがて通路から外に出た。

 それを確認してからカブさんと一茶さんは地面に倒れこんだ。


「……、エト、助かった。あと5分遅かったら普通に死んでた」


「私、3分でも死んでた自信ある」


「僕、1分」


 そう言って3人は笑った。負けそうになったけど、士気は下がってないみたいだ。


「それで、ごめんなさい。いいスキルが見つからなくて」


「いや、本当に英断だったよ。一息つけた」


「それで、これからの予定は?」


「残念ながら手詰まりだね。今回は時間まで防衛して終わり。もしまたジェネラルが攻めてきたらセーフエリア発動して乗り切ろう」


 一茶さんはカブさんにヒールをかけた。

 私は思わず顔を顰めてしまった。カブさん、耳が、千切れてる。


「じゃあ、次回は?」


「なんとかあいつを倒せる武器を調達しないと……」


「ボウか?」


「それだけだと足りない……」


 私たちはその後のことを話し合う。


「エト、外の様子は?」


「大丈夫です、動きはありません……、て、ええ!」


 私は通路を覗いた。そこから先は見えなかった。

 煙で、溢れていたのだ。


「……次は煙責めかよ。ゴブリンのくせに頭良過ぎだろ」


 幸い、というべきか、セーフエリアのおかげで煙が広場に入ってくることはなかった。


「でも、煙が炊かれている間は、敵も攻めてこれない」


 私たちは安堵のため息を吐いた。


 こうして、私たちの2回目のクールタイムは終わりを迎えた。

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