あんたのせいかよ!
もの凄い衝撃に車内が揺さぶられる。
ぶれる視界が正常に戻ると同時に身体中に痛みが走った。
「……なんだぁ?」
隣を見ると意識のない上代さん。
状況を整理できないでいると、リムジンタクシーの扉が開かれて俺は引っ張り出された。
救助か、とも思ったが、相手の手にナイフが握られているのを見て認識を訂正。
突き出されるナイフを左手で払い、親指と中指の腹で相手の眼球を撫でる。
怯んだところ、襟首を掴んで顔面を車に叩き付けた。
ぼんやりする頭で確認するとリムジンタクシーの横っ腹に別の車が突っ込んでいた。
「追突されたのかよ」
運転手を見れば頭から血を流してぴくりともしない。
俺は上代さんを車外に出した。
「おい、生きてるか?」
「……逃げろ」
「そんなこと言われてもね」
上代さんはまだダメージが抜けきらないらしく、ふらふらしていた。
周りを見れば人だかり、ほとんどが事故車をみているが、その中の数人は明確な意思を持って俺たちを見ていた。
「……やば」
俺は上代さんに肩を貸し、人混みから離れた。
「……違う、そっちじゃない。人目がなくなれば奴らは銃を使う」
「遅えって!」
言われた時にはメインストリートを外れ人通りの少ない道に出ていた。
ぽつりぽつりと立っているのは現地人向けのコールガールくらい。
そもそも奴らなんなんだ?
最近は官公庁との絡みが増えてきたけど、命を狙われるほどやばいことしてたつもりじゃなかったんだけどな。
「……おそらく、CIAだ」
「CIA? なんでそんな連中が?」
「いやあ、昔やんちゃしてね。これでもキルリストの上位に名前が載っていたことがあるんだ」
「あんたのせいかよ!」
上代さんはダメージが抜けたのか、ようやく自分の足で立ち上がった。
そして、多少覚束ない足取りながらもコールガールに向かっていった。
それを、ガタイのいい現地人が止める。
おそらくはボディガードだろう。『街』で未成年売春やっている奴らもそうだったが、トラブル防止、それにコールガール自身への監視を含めてこの手のお目付け役がいるのだ。
上代さんはそいつを、問答無用で殴り倒した。
悲鳴を上げるコールガールを無視してボディガードの懐から拳銃を取り出す。
「粗悪品だな。まあ、文句も言えないが」
背後を見れば数人の男が迫っていた。
「行くぞ」
俺は上代さんの後に続いて建物の中に入った。
足を止めず階段を上りそのまま屋上へ。
そこでも足を止めず柵まで移動。
目前には隣の建物。距離は3メートルというところか。
「行けるかい?」
「あんたこそ。酒入ってんだろ?」
背後で音がした。俺と上代さんは一瞬だけ目を合わせると隣の建物に飛び移った。
そのまま先に行こうとする俺を上代さんは止める。
そして、振り返り、今、まさに追いかけてくる敵が建物に飛び移るため跳躍しているところを狙撃した。
建物から真っ逆さまに落下する敵。
「えげつねえな、っとお」
足元に火花が散る。どうやら狙撃されたらしい。
俺たちは急ぎ建物の中に入った。




