男ですもの
そう言って上代さんは列に並ばずにさっさと荷物を預けてしまった。
いわゆるファーストクラス口だ。
そこから俺たちは機上の人になった。
途中ハイジャックに遭遇、などということもなくゆったり7時間空の旅。
「なあ、金あるんだからファーストクラス、とは言わないまでもビジネスくらいにしてもよかったんじゃないか?」
「そう? 帰りはファーストでもいいけど」
つっても現地までたったの7時間。7時間なんて小さい画面で映画1本見て、疲れた目を休めるために一眠りしたらすぐに着いた。
飛行機を出た瞬間、鼻孔に付く空気の粒子が変わり、あ、外国に来たんだって実感した。
時刻は夜の7時頃か? 確か日本との時差は1時間マイナスでもうすぐ日が暮れる、そんな時間だ。
「思ったより暑くねえな。日本より赤道に近いのに」
「今は雨季だからね」
「雨季? 雨が降るのか?」
「雨、というよりスコール。夕方に一降りして昼間の暑気を取っ払ってくれるんだって。だから夜はけっこう過ごしやすいんだよ」
「へ~、そうなのか」
俺たちは飛行場を出て、お出迎えのリムジンタクシーに乗ってホテルに直行した。
そして、そのホテルってのが凄かった。
いや、飛行機もエコノミーだったし一泊1万くらいで泊まれるビジネスホテルを想像していたのは俺の勝手だけど、まさか友澤グランドホテルだとは思わないだろ?
ランクで言うなら星五つ、ペニンシュラやフォーシーズンに並ぶ大ホテルだ。
「おい、こんなとこに泊まるのか?」
「そうだけど?」
「そんな無駄遣いすんなら飛行機もわざわざエコノミーじゃなくてもよかったんじゃねえか?」
「まあまあカブ殿。外国での商談では連絡先に宿泊先のホテル名を伝えますからな。だから、あまり格の低いところには泊まれないのです」
「おう、大学生。それ、どこ情報だ?」
「本で読みました!」
まあ、今回の目的は実銃の買い付けだからな。遊びで来たわけではないのは本当だ。
「日本の友澤系列のホテルなら一泊20万くらいするか? 日本に帰ったらブリに自慢してやろう」
「案外、イオちゃんが羨ましがるかもね」
そうこう話している内にチェックインを済ませ、エレベーターに乗り部屋に向かう。
「夕飯どうする? ホテルで済ませるか?」
「あ、カブ殿。ここからは別行動で」
「まあ、別にいいけど。一茶もか?」
「うん。福留くんと行くところがあるんだ」
「なんだよ。俺も連れてけよ、どこ行くんだ?」
「スパですぞ!」
「スパ? 風呂か? いいぜ、俺も行くよ」
「申し訳ありませんが、R18なので」
「……」
そういうことかよ。
「屑が! なにが格だ、ドスケベども」
「わはは! 酒やタバコと一緒、カブどのも大人になれば味がわかりますぞ!」
「うるせえ、バカ野郎!」
「あ、そうそう。ホテルでの飲食ならジャケット着用ですぞ。外で食べるなら急いだほうがいい。9時に閉まる店は多いですからな」
俺は部屋に荷物を放り込み、ロビーに戻った。
「おや、カブくん。ホテルも同じか」
「ああ、上代さんか」
上代貴美子は部屋に荷物を置いてきたのか、空港で会った時より軽装でそこに立っていた。
「ひとりか? 他の仲間はどうしたんだ?」
「……女買いにいった」
「……それはそれは」
上代さんは赤い唇を歪めて苦笑した。
「それなら君は暇なのか? じゃあよかったら付き合いたまえ」
「? なんだ?」
「ディナーだよ」




