レイドバトルでリクルート2
「! カブさん。敵の反応、ありました」
「数は?」
「えっと、3時方向に300ほど。距離は10キロ。接敵まで10分ってところです」
エトちゃんも育ったなあ。必要な情報も答えられるし10キロ先の敵も見つけられる。
おまけに接敵時間まで……。
「って、10キロ10分?」
「は、はい」
「速すぎる。時速にしたら60キロだよ」
しかも300。もしも重厚な騎馬群なんかだったらひと飲みで壊滅しかねない。
「エトちゃん敵の素性わかる?」
「ちょっと待ってください。……フライングエイプ。蝶々の羽が生えたお猿さんです」
「飛行タイプかよ」
「厄介、ではあるけど」
「どうすんだよ」
「お手並み拝見、といこうか」
僕が視線を向けた先には、見知った顔があった。
艶やかな黒髪をひっつめ髪にしてモノクル(片メガネ)を掛けている長身の女性。
「どっかで見た面だな」
「我が母校、夢の島学園の生徒会長、川瀬祥子女史だよ。一回会ったことあっただろ?」
カブは眉間に皺を寄せて首を傾げた。
「覚えてねえなあ」
と、祥子女史は目敏く僕たちを見つけると、歩み寄って来た。
「誰かと思えば、工藤清士郎と、相田、藤次くんだったかな?」
僕は思わず吹き出してしまった。
あの時、カブは自分の名前を名乗らなかったはずだ。なのに知っているということは、祥子女史自らカブのことを調べた、ということだ。
よっぽどからかわれたのが悔しかったのだろうと想像すると、たまらなく可笑しくなる。
カブは、そんな祥子女史の心境を知ってか知らずか、陽気に答えた。
「よう祥子か。久しぶりだな。元気にしてたか?」
カブもカブだ。ついさっきまで会ったことすら忘れていたくせに。
「ええ、おかげさまで。それにしても、変な場所で会うわね」
モノクルの位置を直し、作り笑顔で答える祥子女史。だが、頬のひくつきは隠せていない。
もし円盤で発売されたのならこのシーンはお互いの心境を吐露したコメンタリーで見たいところだ。
「カブさんカブさん」
「なんだよ、エト」
「そろそろ来ますよ」
その言葉に、祥子女史は作り笑いを止めて僕を見た。
「敵が接近中。飛行能力持ちが300というところ。さて、天才の誉高い祥子女史はどう対処を?」
「……別にどうもしない。時間を稼ぎ上級魔法で一網打尽にする」
一見無計画に見えて理に適っている。上級魔法には1000体単位で敵を消滅させるだけの威力があるからだ。
ここで少し上級魔法について説明しておこう。
これ、言うほど簡単なものじゃない。
これを発動するのに、大学入試レベルの難問を1時間以上かけて解かなければいけないからだ。
この世界には、だいたい10歳から19歳までの人間が確認できているが、単純に大学入試レベルの問題を解けるのは高校3年以降、つまり18歳19歳の全体の2割程。そのうち、大学進学率は50パーセントとするならそこからさらに半分の1割。
つまり、上級魔法を使えるのは全体の1割しかいない計算になる。例えば、エトちゃんは地頭はすごくいいと思うけど、それでも上級魔法は使えないのだ。
余談ながら、そんな中で魔力さえあれば誰でも使えるようになるダイゴのスクロールはまさにチート級ではあるんだけど。
だが……。




