対黒山羊2
黒山羊は飛び上がり、臼歯を見せて俺を丸のみにしようとしてくる。
俺は咄嗟に下級魔法で迎撃する、が、止まらない。
「くっそ!」
眼前に迫る寸前、翼にしていたシールドをぶつけ、ようやく黒山羊は落下を始めた。
が、コブの穴が光りだした。
「中村さん!」
遠くでナギサの声が聞こえた。
そして放たれる光弾は、俺にぶつかる直前でなにかわけのわからないブヨブヨしたものに包まれて吸収された。
さらに翼を失い自由落下する俺の脇下にのりこが駆け寄り、地面までソフトランディングする。
「カブ、へーきか?」
へーきか?
ぶるぶるぶる?
「ナギサ、助かった、けどなんで来た」
「助けに来た!」
来た!
ぶる!
黒山羊は肉食獣のような雄叫びを上げる。
「あのなあ、ここは危険だってわかってんのか?」
黒山羊は駆け出し、俺たちに角を突き出した。
「邪魔だ」
黒山羊は天空を仰いだ。
土魔法『バージアウト』によって、下から隆起した土壁に真下から顎をアッパーカットのように突き上げられたのだ。
「のりこ!」
らじゃ!
俺とのりこは同時に駆け、黒山羊の右と左の頸動脈を同時に切断した。
盛大に血飛沫を上げて倒れる黒山羊、が、光の粒子となって消えることはなかった。
「カブ、倒したんか?」
俺は手を出し、ナギサの言葉を止めた。
しばらくすると黒山羊のコブが割れ、中から血塗れの人、いや、人型の化け物が出てくる。
外見は若い女。
2メートル近い身長に紫紺の髪、琥珀の瞳。
黒人モデルのように手足の長い完璧なスタイル。
そして頭には、山羊の螺旋くれた二本の角。
テレビで見るならため息のひとつでも出るような美貌だが、目の前ではそうはいかない。
威圧感が半端ないのだ。
『カブさん、ベヒーモスです、逃げて!』
もはや隠す気もない膨大な魔力量にエトも感知したようだ。
ベヒーモス、それはレベル100を超えるモンスターだ。ちなみにいうと101かもしれないし1000かもしれない。
カウントされるのが100までなのでそれ以上のモンスターの総称をベヒーモスと呼ぶのだが、俺のレベルが25であるといえばやばさは伝わるだろうか。
俺はナギサを小脇に抱えた。
「のりこ、逃げるぞ!」
らじゃ!
俺はベヒーモスに向かってお得意のダークネスを放った。
そのまま脇目も振らずに逃げる。一気に高度を上げ、最大速度を更新する。
追撃はなく、それから20分とかからず女神像の元に戻る。
首筋に氷を叩き付けられたような冷たさと衝撃。
振り返った瞬間、図太い落雷が俺を襲った。
幸いにしてセーフエリアを発動していたため無傷で済んだが、バリアがひびだらけになっている。こんな状態になっているのは初めて見た。
「つうか上級以上の威力の魔法をたった20分で撃つのかよ……」
こいつ、どうすればいいんだ?




