食べても太らないって夢のよう
俺たちは階段を下りて丘の中に入った。
少し進むと、簡易テーブルにソファと椅子がある20畳ほどの大部屋に出た。
ここがリビングリームだ。
そのソファにトドのように寝そべっている女2頭。
ブリとケイだ。
「おいバカども。一茶とダイゴはどこだ?」
「一茶は女神像のところ」
と、ブリ。お菓子をぼりぼり。
「ダイゴは作業室」
と、ケイ。おしりをぼりぼり。
俺はため息を吐いて椅子に座った。
「おまえらいつまでそうしてんだ?」
俺とエトが出かける数時間前から、こいつらずっとこうしてグデッてた。
「ん~、明日から本気出す」
「そ~そ~、今は充電期間中だから」
床にはお菓子の食いカスやら読み終わった漫画雑誌(両方ともポイントと交換して手に入れた)やらが散らばりまくり。
ブリだけでも手に負えないのに、ケイが加わって酷いことになってる。
「そんな生活してたら太るからな」
「残念でした~、この世界では太りません~」
「全部魔力になるので太りません~」
こいつら……。
最近知ったのだが、こいつらの食べてるお菓子、実は魔力回復やバフ効果があるらしい。
あっても食っちゃ寝して使わなかったら意味ないんだが。
と、イオが一歩前に進み出てバカ2人の尻をスパンスパーン!
痛かったのか、ブリはソファから転げ落ち、ケイは尻を押さえて悶えている。
「馬鹿やってないでさっさと片付ける! こんなに散らかして」
あまりの手際に俺とエトは拍手してしまった。
いやあ、イオは便利だ。
やりたい放題のバカどもをしっかり締めてくれるからすごく助かる。
そういう役割を「できるイコールやらざるを得ない」というジレンマもあるにはあるのだけど。
「お、カブにエトちゃん、おかえり」
タイミングよく一茶とダイゴが奥から出てくる。
「おい、ダイゴ。おまえ最年長だろ? こいつらなんとかしろよ」
「僕になんとかできると思う?」
そう言ってどこか遠い目をするダイゴ。
ダイゴは19歳の専門学生だが、諦観とでもいうのか、やけに落ち着いて、というか歳喰って見える。顔の良さゆえかそれがマイナスにならないところがむかつくポイントだが。
「それで、例のやつ?」
「あ、はい。ゴブリンの大軍がこちらに向かってきてます」
エトがそう言うと、一茶は渋い顔をした。
「なんか問題あるか? 今まで何度か撃退してるだろ?」
「計算が合わない。前回と前々回のスパンを考えると今回は不自然なほど早い」
色々と面倒なやつ。
「というわけでカブ、偵察よろしく」
「……なにがというわけ、なのかわからんのだが、今帰ってきた俺にまた出て行けと?」
「余裕、あるでしょ?」
確かに余裕はある。
理由は、スキルの『体力回復』シリーズを根こそぎ取っているからだ。
回復量自体は全部合わせても1.5倍程度なのだが、使う都度から回復するので俺の体力と魔力はそうそう減らないものになっているのだ。
エトなんかは飛行しながらちょっとした調整で魔力が減り続けるのに対して、俺は飛びながらでも魔力が回復する。この差がでかかった。
それともうひとつ、俺には利点があった。
「はいはい、んじゃ、ちょっくら行ってくる」
俺はケイの持っている袋菓子を引っ手繰ると口に放り込んだ。後ろでなにか騒いでいるが無視だ。




