異世界の日常
コンクエストモード放置プレイを初めてからけっこうな月日が流れた。正確な日にちは覚えていないが、だいたい1か月は過ぎていると思う。
今日も今日とてのりこを連れてエトと空中散歩だ。
飛行技術もだいぶ上達して、時速300キロくらいは出せるようになった。そうなると『後ろ』がついてこれなくなってしまった。トランシーバーの通信可能距離もけっこうぎりぎりのところまで来てしまっている。
で、最近はもっぱらエトとふたりでゴブリンの群れを潰している。
「2時に群体、300はいます」
「了解、視認した」
高度1000メートルから急降下、地面を舐めるように飛び、数体を跳ね飛ばしてすれ違い様にゴブリンキングの首を刎ねる。
大将がやられて混乱しているところ、そのまま急上昇して敵地を離れる、タイミングでエトの中級範囲魔法で幹部のジェネラルを一掃。倒し損ねたのをのりこがガブリ。
これだけで群れは解散する。ポイントの低いモブゴブリンは基本無視。
見敵から討滅まで10分くらいだ。
んで、1時間に3つか4つ潰す。
そんなことを繰り返していた。
メインは飛行練習がてらの探索だが、ゴブリンどもは10キロ置きにいるので遅々として進んでいない。
「あ、カブさん、またです」
「また? 例のか?」
「はい」
放っておくと群れを解散したゴブリンは再び集まって一大勢力になることがある。
その勢力はなぜか途中の群れを吸収しながら女神像に向かって進軍してくるのだ。
「けっこう多いですよ。1万はいます」
確かに多いが、脅威ではない。大した防備もないこいつらは上級魔法の餌食だからだ。
上級範囲魔法一発で数千を駆除できるので、
「フィーバータ~イム!」
などと言ってケイは小踊りしていたほどだ。
「エト。魔力は?」
「残り半分くらい。まだ少し余裕ありますけど」
「少し早いけど、一度帰るか」
戻ってきたのは、今まで使っていた森の中の洞窟ではなく、小高い丘のようなところ。
ここは、ダイゴたちの使っていた拠点だ。
一応、コンクエストモードという設定上、俺たちがダイゴたちのところに攻め込んだ、という形になっているらしい。
「おーい、のりちゃ~ん!」
なぎさちゃ~ん、なかむらさ~ん!
プルプルプル!
丘に降り立つと、ナギサが駆けてきた。
のりこは俺の背から飛び降りるとナギサに飛びついて顔をべろべろ舐める。のりこは今大型犬並の大きさになっているからナギサを押し倒してしまいそうだ。
「カブ、のりちゃんと遊んでくる」
「ああ、1時間くらいで戻れよ」
ナギサは頷くとのりこの背中に飛び乗った。そのナギサの肩に中村さんは飛び乗る。
そして、のりこは丘を駆け下りていった。
「あいつら仲いいな」
「ええ。少し妬けますね」
ま、のりこの価値基準から言ったら、一番上にご主人のエトがいて、その下に先輩とか兄貴分的な立ち位置としての俺、その下が仲のいいナギサ。次に有象無象があって一番下にブリ。そんな感じになってるっぽいけど。
「おかえりなさい。早めのおかえりですね」
出迎えてくれたのはイオだ。
「ただいま。無線で連絡しただろ。またゴブリンの大群がこっち向かってる」
「ええ、聞きました」
そう言ってイオは手を差し伸べてきた。俺はその手を握った。
小さくて滑らかな、女の子らしい手だ。
「『ポイント譲渡』」
俺はポイントを200万ほどイオに渡す。
「こんなに、いいんですか?」
「ああ。俺とエトは荒稼ぎしてるし、俺も欲しい施設あるからな」
イオのジョブは『ディフェンダー』。
スキルは『陣地防衛』と『陣地構築』。
陣地防衛は、指定した範囲内の味方の防御力を10パーセント上昇させる。
陣地構築は、『ワールドカスタマイズ』のコスト5パーセント減だ。
今までは死にシステムだったワールドカスタマイズだが、凝ってみたら意外と使えた。
例えば、『リビングルームレベル1』。
女神像のある広場から少し進んだ所に設置したこの施設は、そこで休憩を取ると、魔力体力スタミナの回復量1.5倍だ。
他にもダイゴが籠っている『作業室レベル1』は作業効率1.5倍、敷地内では防御力の上がる『サークル』や、落とし穴や落石を発動する『罠設置』、その場所で魔法を使うと威力と発動時間短縮の『魔法砲台』なんてのもある。
ただ、これ、バカみたいにポイントが高い。
一施設作るのに100万とかの世界だ。
そこで重宝したのが、イオの『陣地構築』だ。
俺たちが貯めてきたポイントをイオに渡して施設をほんの少し割引で作ってもらっているのだ。




