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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
コンクエストでチート獲得!
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ゲームセンター3 ~昔の悪トモ~

 と、その時、音が消えた。

 否、音が消えたというのは語弊がある。ゲームセンター特有の複数のゲームの音が混ざった雑多な騒音は健在だったのだから。


「カブ」


「ああ、わかってる」


 ブリに喚起され、俺はベンチから立ち上がった。

 辺りを見渡す。


 そこには、人がいなかった。客も、店員も、先ほどまで悪目立ちしていたグラサンスーツもだ。

 異常に気付いたのか一茶と瑞樹も口を噤む。

 エトはコーラを飲んでけぷと可愛らしいゲップをしていた。


 入口が開いた。

 そこから入ってきたのは、異様な集団だった。皮パンに皮のジャケット。ジャケットの下は裸で顔には無数のピアス。

 一見して堅気ではないとわかる風貌だ。

 そして、そいつらの真ん中にいるやつには、俺は見覚えがあった。


 白髪に赤い瞳。肋骨が浮き出るほど痩せこけた身体は、しかし、低く見積もっても190を超える長身だ。

 そしてチロリと覗く舌はスプリットタン(裂けた蛇の二枚舌)。


「番匠か」


 男、番匠正文ばんじょうまさふみは高い位置にある白頭を恭しく下げた。


「ご無沙汰しております、狂鼠」


「教祖?」


 俺は大きくため息を吐いた。


「狂ったネズミで狂鼠。俺がヤンチャしてた時に付いた不名誉な仇名だよ。当時はチビですばしこくて、誰にでも喧嘩売ってたからなぁ」


「今と変わらねえじゃん!」


「まあ、黒マントよりはマシな仇名だと思うけど」


「なんのネズミですか? ジャンガリアンハムスター?」


「ドブネズミだろ」


「てめえら!」


 大声を上げたのは、番匠の隣にいた男だ。緊張感のない俺たちの会話に焦れてしまったのだろう。

 その男の頬に、番匠は、手を当てた。


 バチっという音と共に男は頬から血を流して倒れた。

 ピアサーだ。それも改造してぶっとい針が飛び出すようにしたやつ。

 番匠は男の金髪を掴みあげると、ゲームの筐体に叩き付けた。そのまま後頭部を一発二発と殴り、


「部下が失礼しました」


 と、俺たちに頭を下げた。


 本来は俺たちをビビらすためにやったパフォーマンスだろうが、無駄なことだ。

 バイオレンスには『あっち』で慣れっこになっている。

 一茶や、エトですらビビってない様子に、番匠は眉をわずかに歪めた。


「なんか用か?」


「ええ。部下から狂鼠を見かけたと報告を受けたので、ご挨拶にと伺った次第です」


「へえ、お前ごときが俺の足止めをするたあ、随分出世したもんだなあ」


「今では一応、『街』の最高幹部のひとりですよ」


「『街』、ね。都市伝説の類だと思っていたけど」


 そう言ったのは一茶だ。


「『街』ってなんです?」


「ギャングチームの寄り合いみたいなもの。最初はおまわりに虐められたりやくざに取り込まれたりするのを避けるために小さいチームが集まって互助していたもんだったんだが、今は未成年売春やら違法ドラッグだかで荒稼ぎしている屑共だ。ま、俺たちみたいにお天道様の下でまっとうに生きている人間には縁遠い人種だよ」


「狂鼠が、まっとう、ですか?」


 俺は反射的にエトの持っている缶コーラを番匠に投げつけた。

 番匠は缶を額に受け、コーラ塗れになった顔をスプリットタンで舐めた。


「……失礼しました。あまりにも意外な言葉だったもので」


「気を付けろ。こっちはもう堅気だからな」


「堅気は人に缶を投げつけたりしね~し!」


 ブリうるさい。あと、エト、ごめん。後でまた買ってやるからそんなに睨むな。


「それで、うちのボディーガードは?」


「これは瑞樹様! このようなところでお目通りが叶うとは、私は運がいい」


「おべっかはいい。聞き飽きているんでな。それで、うちのボディーガードは?」


 瑞樹は再び同じ質問をする。

 それにわざとらしく答える番匠。


「ボディガード? ああ、あの黒服の方たちですか。どうも過重労働が祟ったようで外でお休みのようですよ」


「……無事なんだろうな」


「もちろん! まさか友澤と敵対するような愚行は犯しませんよ! それに、今日の目的は狂鼠への挨拶ですから」


「なら用は済んだな。失せろ。こっちは忙しいんだよ」


「ええ。ご迷惑を考えず、失礼しました」


 そう言って、番匠は俺に背中を向けた。が、足を止めたまま、こんなことを言った。


「そう、そう。実は、『街』で新規事業を起こそうかと考えていまして、可能ならお手伝いをお願いしたい、などと考えておりまして、ね」


「興味ねえな」


「その、新規事業、『輸入業』なんですよ。『異世界』からレアな物品を持ち込んで売りさばく。儲かりそうでしょ?」


 こちらからでは番匠の顔は見えない。


「気が変わったらいつでも連絡ください」


「てめえの連絡先なんて知らねえよ」


「『街』に問い合わせいただければ、すぐにでも伺いますよ」


 今度こそ出ていこうとする番匠を、俺は止めた。


「なんで俺が『プレイヤー』だと知ってる?」


「今、『ニューワールド』の掲示板で話題になってますよ。友澤守のケツを掘ったチビがいると。そんなことができるのは、私はあなたしかいないと確信しておりました」


「……それ、嘘だから」


 いや、友澤守の尻を蹴りつけてやったのは事実だけど、それがなぜ掘ったことになる?


 番匠はわかったのかわかっていないのか、手をひらひらと振ってゲームセンターから出ていった。





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