偉いやつらはたいていどっかでつながっている
警察署を出てすぐに一茶に連絡を取る。
どうやら近くの喫茶店にいるらしいので、2人を連れて俺はそこに向かった。
「お勤めご苦労様」
「感謝には形で返せ、いて」
俺は独身女に後頭部を叩かれた。
「いつもうちの藤次がお世話になってます」
「葛岡先輩ですね? 藤次くんの友人の工藤清士郎です。僕、夢の島の学生ですから後輩なんですよ」
「あら、そうなの?」
途端に柔らかくなる陽子姉。
俺は隣の亮兄に聞いた。
「陽子姉って夢の島だったの?」
「ちなみに僕もね」
頭のいいやつって大学とか高校とか、知らないところで繋がってるんだな。猫のうんこ踏めばいいのに。
「それで……、これは、大物ですね」
一茶は亮兄を見て言った。
「各省庁の若手が集まったグループのリーダー、石田亮先輩、ですか。カブ、なんでこんなすごい人と知り合いなの?」
「大したことねえよ」
「いや、今、官僚の派閥で石田派って言ったらけっこうすごいよ」
「藤次に言われるとムカッとするけど、本当にたいしたことじゃないよ。ただの勉強会での面倒な事務を押し付けられているだけだからね」
「しかし、忙しいところ時間を頂いて感謝します。僕達には都合がいいけど」
「いや、弟に関わることだからね。しかも警察の取り調べ室にいると言われたら多少の時間は取るよ」
「それが結婚を遅らせてる原因じゃねえの、いっってえ!」
横脇腹に一発いいのをもらった。くそ、頭ばっかりだったから油断した。
それから、一茶の説明が始まった。
「信じられないだろうけど」
その枕詞で始まった話は、現物のゴールドを目の前にしてもやはり半信半疑だったようだ。
ま、当然だ。いきなり『異世界行って来た』なんてことを言ってるやつがいたら普通は病院を進める。
俺?
暇だからエトとメールしてた。
エトはメール魔だ。
授業の合間合間にメールを送ってくる。
だいたい1時間置き、それが寝る前まで続く。
不精である俺は基本無視だが、たまに返信するとすごい速さで返信し返してくる。
『今、銃を撃つ練習してま~す。コツはちゃんと構えて手ブレを無くすこと!』
写メには照れ笑いを浮かべながらハンドガンを構えるエト。普通に可愛い。
育ちなのか、エトは品がいい。ブリとは正反対だ。
そういえば、エトの住んでいる女子寮の寮長がミリオタだかサバゲマニアだかで、最近銃の撃ち方を習ってるって言ってたな。
「なにニヤニヤしてんのよ」
俺は陽子姉にエトの写メを見せた。
「あら可愛い。なに? 彼女?」
「残念ながら違う。最近仲良くなった娘」
「あんた、そっち系で問題起こしたら半殺しじゃ済まさないわよ」
「信用ねえな。おい、一茶」
「……なに、今けっこう大切な話してるんだけど」
「俺とエトってけっこう仲いいよな」
「あ~、うん」
なぜそこでどもる。
「彼女も『ニューワールド』のプレイヤーってことなのかな?」
「はい」
亮兄は腕を組んで考え込んだ。
「にわかに信じがたい、けど……」
「スルーするには厄介な情報、でしょう?」
「なぜそれを我々に?」
「単純に隠し通せる情報ではないから。警察ではすでに出所不明なゴールドが出回ってる情報を掴んでいるようですしね」
「それだけかい?」
「細かい理由はいくつかありますよ。現役官僚とコネクションが欲しいとか、これからの行動に警察からの阻害が入らないようにしたいとか」
「それ以上に……」
「ええ、申し訳ないけど、『これ』を新たな税収の一環程度に思われるわけにはいかないので」
亮兄は深いため息を吐いた。なんのこっちゃ。
「わかった。私の一存で来週関係省庁の人間を集めよう。そこで『実験』をさせてもらう」




