空中戦
「……カブさん、なんか、新手です」
急にエトが神妙な顔をした。
「新手?」
「翼竜っていうんですか? 鷹より一回り大きい竜が空から来ます。それも100体以上」
エトは、サポート関係の能力を伸ばしている。マッパーをマスターした後に『ナビゲーター』というジョブをメインにしてスロット内にも『アナライズ』を入れて全員のサポートをしてくれているのだ。
「100体は多いな。他のやつらは?」
「連絡しました。迎撃準備中です。一茶さんから、カブさんは時間稼ぎしてくれって」
俺は大きくため息を吐いた。
腰からナイフを抜く。先端に幅のある、ククリナイフというやつだ。
銃弾が尽きてからの俺のメインウェポンだが、先に重心があるため斧みたいに力任せに使えるし投げナイフとしても使える、けっこうな便利武器だ。
「あいつ、人使い荒いよな。オッケー、一茶に了解と伝えてくれ」
「もしもし、カブさんが一茶さんのこと人使いがあらい「そこは伝えなくていいから!」」
「カブ、わたしは?」
「ナギサはエトを守りながらみんなと合流。仲村さん、頼むぞ」
ぶるりんと揺れる仲村さん。
ぶっちゃけ、飛べることは飛べるけど、空中戦は仲村さんじゃきつそうだ。
と、言っても俺もまともな空中戦の経験はない。今回はいい機会だ。
余談ながら、コンクエストモードには利点がある。
死んでも、次のクールタイムで生き返られるのだ。
じゃなきゃ飛行練習なんてリスクの高いこと早々できないしな。
つっても、死の恐怖が克服できるわけでもないから、今回も死なない程度に頑張るとするか。
「それじゃ行って来る」
「はい、いってらっしゃい」
「いってら~」
ぶるぶるぷるぷる。
ぼくもいく~。
俺が飛行体制に入ると、背中にのりこが乗ってくる。
「落ちんなよ!」
らじゃ!
俺は一気に空へ飛び上がった。
翼に負荷がかかり過ぎないように注意しながら滑空する。
「……あれか」
翼竜というよりは、前足2本が翼のワニだな。数は多いが、飛行速度は遅い。生意気にもレース鳩がするような編隊を組んで飛んでやがる。
「慣らしには、丁度いいか!」
すれ違い様、ワニの先頭集団の鼻先を掠めるように飛び挑発する。
効果覿面!
ワニ共は旋回し、俺の後を追ってきた。
十分な距離を取り、俺もゆっくりと旋回。そのまま機首を下にして再突撃。
が、下を潜るつもりが角度が緩いためかワニ共の編隊に突っ込んでしまう。
口吻を開け迫ってくるワニに対し、俺の背中に乗るのりこが『咆哮』を上げる。
それに驚いたワニは恐慌状態に陥り、真っ逆さまに落ちていった。
自分でやってみてわかったが、『飛行』ってのはかなり高度な技術だ。ビビッて頭回らなくなったら飛べなくなるのも道理だ。
「のりこ、ナイス」
ごほうびごほうび!
のりこは俺の頬を舐める。
「おし、それじゃあ、取ってこい!」
俺は接近するワニに向かってククリナイフを投げつけた。
ククリナイフはブーメランのように緩やかな弧を描きながらワニ共の翼を傷つけ飛んでいく。
それに向かって、のりこは飛び出した。
空中に、だ。
なにもない空間に魔力で足場を作り、時折障害物は邪魔だと言わんばかりにワニを蹴飛ばし踏みつけにして空を駆けていく。
やがて、のりこはククリナイフを拾い、俺の背中に飛び乗った。
「よ~し、よくやった!」
もっともっと♪
のりこは俺の頬をべろべろと舐める。
ワニ共の群れを突っ切り再び旋回、編隊に突っ込みナイフ投げ。
近づいてきた敵には下級魔法で応戦。
それを数度やっていると、急に空が翳った。
「……おいおい、連絡ねえぞ! エト、どうなってんだ!」
俺はトランシーバーに向かって怒鳴った。
「……カブさん、用意ができましたので退避してください」
「遅えんだって!」




