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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
ウェルカムニューワルド
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現実から異世界へ2(一茶)

 そこでは当然のように、弓道は行われていなかった。


 立っている2人の男。一人は縄跳びを頭上で振り回し、もうひとりはそれに備えている。


「は!」

「とう!」


 一人は縄跳びをもうひとりに向かって投げた。もうひとりはそれを飛び上がってかわそうとする、が、失敗した。縄跳びは足に絡みつき顔から地面に倒れこむ。


 そして上がる拍手。


「……なにしてんだ、こいつら」


「……さあ」


「お、清士郎殿、参上ですな!」


 その男は、メガネをかけて七三分けの髪型をしていた。一見人畜無害、その実、腹に一物ありそうな容貌だ。


「急な申し込みに快く応じてくれてありがとう。カブ、彼はここ、『救世主創生委員会』委員長の福留啓太くんだ」


「おや、新顔ですかな? よろしくお願いします。ただいまご紹介に授かった福留です」


 差し出される手、それをカブは払って拳を出した。

 福留はにんまり笑う。


「いいですな。洋画の世界のようだ」


 福留はカブの拳に自分の拳をぶつけた。


「カブだ。んで、さっきのはなにやっていたんだ?」


「その前に、我々『救世主創生委員会』の活動について説明させてもらっても?」


「ああ」


「カブ殿はこの世界がいつまで『もつ』と思いますかな?」


「なんだその質問?」


「現在世界は様々な問題を抱えております。それも深刻な。核兵器の拡散や人口爆発、温暖化に経済格差」


「回りくどい。さっさと核心を話せ」


「おや、失礼しました。つまり、我々はやがて訪れる世界が崩壊した、ポストアポカリプスの世界で生き抜くための研究をしているのです!」


 カブはそっと僕に言った。


「頭いいやつはいいなりに馬鹿なことやってんだな。少し安心した」


「褒め言葉と受け取っておくよ」


「例えば先ほどのロープを使った捕縛術ですが、知能のないゾンビなどには有効であると我々は考えております」


「ゾンビって……」


「いや、ゾンビパニックは想定されるシナリオのひとつですぞ!」


 ペラペラと薀蓄うんちくを話す福留。横を向いて露骨に興味の無さをアピールするカブ。

 いつまでも話が終わらなそうなので、僕は割ってはいることにした。


「ところで福留くん。頼んでおいたものは」


「ええ、もちろん用意しております」


 福留は指をパチンと鳴らすと、後ろからアタッシュケースを持った男が出てきた。僕はそれを受け取る。中を見ると、そこにはY字型の棹が入っていた。


「少し大げさ。それと、これは急で悪いんだけど、彼が使えるものを」


 そう言ってカブを指差す。きょとんとしているカブ。


「おい、なんのことだ」


「武器だよ。あいつらを狩る」


「ちなみに、なにを狩るのかお聞きしても? ねずみかうさぎですかな?」


 カブは少し躊躇った後、言った。


「……ゴブリンだ」


「ほおほおゴブリン。そのセンス、嫌いじゃありませんぞぉ!」


 なぜか福留と救世主創生委員会の連中、大喜び。


「ボウはいかがです?」


「ボウ?」


「ボウガンです。強力なものなら50メートル先の猪でも仕留められますぞ」


「連射性に欠けるね。それより電動ガンを強化したもので。もちろん弾は鋼鉄製で」


「電動ガン? さすがにおもちゃの銃じゃ倒せねえだろ?」


「いや、おもちゃの銃と言っても強力なものはスチール缶を軽く打ち抜くくらいですからな。もちろん威力が上がれば規制の対象になりますが」


「見た感じあいつらの耐久度は低かった。体当たり一発で倒せるくらいだしね」


「ふむ、それでは魔改造した電動ガン、と。カブ殿、なにか種類にこだわりは?」


「いや、ない。ていうかわからん」


 そういうと、今まで黙っていた委員会の連中が突然前に出てきた。


「ここはやはりウージーで」「ガリル、絶対ガリル!」「彼の小柄な体躯を考えるならスコーピオンが妥当では?」「いや、いっそワルサーで」


 当事者である僕とカブをそっちのけで議論に盛り上がる委員会の方々。


「俺、今日はおまえに色々聞こうと思って来たんだけどなあ」


「なに? 答えられることなら答えるよ」


「もう忘れちまったよ。質問自体」


「それでいいんじゃない? どうせ長々と説明したって忘れるでしょ? 必要に迫ったら話すよ。その時に話した内容は忘れないだろうし」


「……とりあえず、あれは現実なんだな?」


「君が僕の前に現れるまでは夢って可能性もあったんだけど、ね」


「だが、会っちまった」


「つまり、今度の金曜23時59分に再びあの場所に行く可能性がかなり高い、と」


「行かない方法は?」


「行きたくないの?」


「一応命がけだぜ、あれ」


 そう言って、今は無傷の左肩をカブは叩いた。

 僕は、僕が考えるあの異世界「ニューワールド」に行くメリットを話した。この土日に、頭の中で広がった世界を。


「……つまり、金になると」


「俗っぽい言い方だけどそういうこと。道路工事よりもかなり、というより軌道に乗れば比較にならないほど実入りはいいはずだよ」


「一考に価する、か」


 正直、今の時点で彼にリタイアされては少し困る。

異世界を使って現実にパラダイムシフトを引き起こそうとしている僕のプラン上では。

ここで彼の武器を提供するのも言ってみれば先行投資だ。


 プラス思考、これって大事なことだよね。

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