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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
ウェルカムニューワルド
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現実から異世界へ1(一茶)

 授業終了のチャイムが鳴る。

 僕、工藤清士郎は思い切り伸びをした。

 特に集中していたわけでもないがそれでも半日以上座りっぱなしの状態っていうのは肩が凝るものだ。


「工藤お疲れ」


「はい、お疲れ様」


「清士郎、今日はS予備校でしょ。一緒にいかない?」


「ごめん、今日は寄るところがあるんだ。先に行ってて」


 学友に別れを告げつつ、僕は鞄に教科書、ノートを詰めた。


 ここは私立夢の島学園。世間では『東大予備校』なんて呼ばれてる、超進学校だ。

 去年までの僕は、まあ、ここの学生に相応しく偏差値至上主義で東大を目指してた。今は適当に肩の力を抜いて過ごしているが。


 僕は席から立ち上がると鞄を手に取った。

 と、外がなぜか騒がしい。窓から外を見てみる。

 校門前、そこに、見知った人影があった。



「だ~か~ら~! 人を待ってるだけだって言ってるだろ!」


「だからその待ってる人の名前をいいなさい」


「だから一茶だって。小林一茶。知らねえのか? 人間だものってやつだ」


「それは相田みつをだ!」


 生徒会とやり合っている少年はガードレールに腰を落としていた。

 前を開け放った長ランに坊主頭。横には年季の入った50CCのバイク。

 見た目はDQNなのに、小柄な体躯のおかげで威圧感より愛嬌が勝っている。


 僕は急ぎ下へ降りると集団の輪を掻き分けて彼の前に立った。

 彼は僕を見つけると屈託のない笑顔を見せて僕に拳を突き出した。


「よお一茶。おせえぞ」


「約束した覚えはないけど。それに目立ちすぎ」


 僕は彼の拳に自分の拳を合わせた。


「おまえ、ボッチってやつか? 誰もおまえのこと知らねえてよ」


「そりゃ、一茶で聞けばね。工藤清士郎、名乗っただろ?」


「そんなの忘れちまったよ」


 彼、カブはカカと笑った。

 人徳ってやつかな。口調は荒っぽいのに不快感はまったくない。僕にはない才能で少しうらやましい。


 僕は周りに目を向けた。


「迷惑かけたね。彼は僕の友人だから。場所もすぐ移動するから」


「工藤くん。しかし、このようなことは……」


「なにか問題があった? 彼は校門の前で僕を待っていただけでしょ? バイクで校内を爆走したわけでもなし。それともカブ。下校途中の女子生徒をナンパでもした?」


「いや。言っちゃ悪いがここの学生は色気にかけるな」


 それを聞いて女子生徒会役員は言葉に詰まった。

 うん、素材は悪いと思わないけど、ファッション雑誌を読むよりは参考書。また、そういうことに時間を使っている連中を軽蔑してる人たちだからねえ。


「やれやれ、堕落は止まらないようだね、工藤清士郎」


 横から声をかけられた。


 そこにいたのは、女性だった。

 170を余裕で超える長身に気だるげなたれ目。その片方にはモノクル(片眼鏡)をかけていて、髪は艶やかな黒髪、なのだが、わざわざひっつめ髪にして色気を殺している徹底振り。

 我らが夢の島学園の生徒会長「川瀬祥子」だ。

 彼女を一言で表現するなら、天才だろう。

 偏差値至上主義の夢の島学園のトップを爆走し、全国模試でも一桁台の順位をキープする才女。

 僕と同世代における、最高の頭脳のひとり、それが彼女だ。


「個人の堕落なら自己責任で済ませるが、腐ったりんごが周りまで悪影響を及ぼすようなら対処を考える必要がある」


「なんだ、この女」


 川瀬はそこで初めてカブを見た。


「驚いた。今日日の猿は口が聞けるのね」


 カブは俺を見て一言。


「言うことに面白みがない。こいつ、あんま頭よくないだろ」


 僕は思わず声に出して笑ってしまった。

 絶句する川瀬祥子女史。

 万人が認める天才に向かって『頭がよくない』とは。

 これが意図して出た言葉なら、この目の前にいる少年も間違うことなき「天才」だ。


「ま、おまえと合流できたことだしもうここには用はないだろ。邪魔したな。一茶、いこうぜ」


「っまちなさい!」


 呼び止める才女。


「あなた、名乗っていきなさい」


「工藤清士郎だ」


「それ、僕じゃん」


「やっぱおまえの名前じゃまずい?」


「ていうか普通に偽名だってばれるから」


 笑いあう僕ら。歯軋りする天才美少女。


「ま、俺なんかに気を取られないで勉強頑張ってくれよ。あんたら世の中をよくする係。俺、よくなった世の中を享受して笑う係。役割分担役割分担」


 カブはバイクにまたがり、エンジンをかけた。僕はタンデムにまたがる。

 そのまま川瀬祥子を残しバイクは走り去る。


「一応礼を言っておくよ、彼女をへこませてくれたこと。中々見ものだった」


「あの程度で? こんなのジャブ程度だぞ。エリート様は打たれ弱いねえ」


「ああ、この学校が進学校だってこと、知ってたんだ。だから僕がこの学校に通ってることわかったんだね」


「おまえ、制服だったからな」


「カブはどこの高校に通ってるの?」


「おまえんとこに比べたら鼻くそみたいなところだよ。進路が進学、専門、就職って綺麗に三等分されるようなところ。国立大学に受かるやつなんて数年にひとりだ」


 そんなことを話していると、目的地に到着した。今日、僕が寄る予定だった場所だ。


「弓道場?」


 僕は頷いて、弓道場に入った。





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