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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
レイドバトル
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レイドバトル ボス戦2(守)

「まだだ!」


 どこかでそんな声が響いた。


「……まだいる、だと?」


 今度現れたのは、頭狼人間、ワーウルフだ。


「くそ、今は戦えん! 誰か、回復を!」


 俺がそう叫んだ時には、ワーウルフはすでに俺の前に立っていた。

 ワータイガーがパワー重視だったのなら、ワーウルフはスピード重視、それを証明するように、まるで反応ができていない俺の咽喉めがけて、ワーウルフは唾液に塗れた口吻を近づけてきた。


 甲高い悲鳴が上がった。


 女が俺を庇い、代わりに噛まれた、などという美談ではなく、ワーウルフの上げた咆哮だ。

 

 見ると、首筋に矢が刺さっていた。


 アイン隊の誰かが助けてくれたのか、そう思い目を向けると、なぜか黒い靄が漂っていた。


 あれは、闇魔法のダークネスか? あの中から撃ったのか?


 ワーウルフもそう思ったのか、身体がぶれるほどの猛スピードで黒い靄に向かっていった。


 そして、黒い靄を掻き消すように腕を振るった。


 だがその中には、なにもなかった。


 ダークネスは囮か!


「今だ! 撃て!」


 瑞樹の声。それに合わせて放たれる遠距離攻撃。

 だが、ワーウルフはそれを寸前でかわす。


 そして気付く。


 見せびらかすようにボウガンを持った男がいることに。


 ワーウルフは首に刺さった矢を抜くと、遠距離攻撃をかわしながら男を襲った。


 絶影。


 そう呼ぶに相応しい猛スピードは男との距離を一瞬で消失する。


 そして、ワーウルフは周りに畏怖を覚えさせる咆哮を上げると、男に殴りかかった。


「阿呆」


 綺麗な、それは綺麗な弧だった。


 突き出された腕を掴んで放たれた見事な一本背負い。

 ワーウルフは受身も取れず背中から地面に落ちた。


「エト!」


「はい!」


 男の掛け声に合わせて少女がアサルトライフルを男に放った。

 男は立ち上がろうとするワーウルフの口に銃口を突き入れ、引き金を引いた。


 甲高い銃声。


 ワーウルフは頭部を消失し、その活動を永久に停止させた。


 一瞬静まる戦場。


 男は両手を上げると、大声で言った。


「勝ちだ! 俺達の勝ちだ! 勝ち鬨を上げろ!」


 瑞樹はにやりと笑うと、声を張り上げた。


「えい、えい、おー!」


 それに合わせて周りも声を上げる。


「「えいえいおー!」」


 やがて、そこにいる全員が勝利の歓声を上げた。


「終わった……か」


 俺は両手に持っていた重苦しい長大な棒を地面に突き立てた。


 ふと気付くと、男が、こちらを見ていた。

 顎を精一杯突き出してこちらを見下ろす視線を作り、下劣た笑みを浮かべて。


 そのあまりに滑稽な表情に、俺は苦笑してしまった。


 俺は、先ほど俺の尻に蹴りを叩き込んだ男に言った。


「助かった。一応礼を言っておこう」


「ああ~ん!? 状況を理解しろ! おまえは最後俺にいいとこ取りをされたんだよ! 咽び泣いて悔しがりやがれ!」


 そう言って地団太を踏む男。

 なるほど、こいつ、面白い。


「なに余裕ぶっこいて笑ってやがる!」


 俺を殴りかかろうと振り上げる手に、瑞樹が甘えるようにしなだれかかった。


「なんだ、二人は和解してしまったのか。よかったようなつまらないような」


「和解なんてしてるわけねえだろ!」


 瑞樹と男の間を、自然なわざとらしさで割ってはいるまだ幼さの残る少女がいた。


「カブさん、お疲れ様です」


「おう、エト。これ、やるよ」


 そう言って男は少女に狼の意匠が施されているブレスレットを渡した。

 ワーウルフを倒した時に手に入れたアイテムだ。

 少女は目をキラキラさせながらブレスレットを受け取った。


「なんだ、私にはないのか?」


「ねえよ。ていうか、おまえ、誰だっけ?」


 絶句する瑞樹。なかなかに珍しい表情だ。


「あんた、本当にセンスないわよね~」


 横から、先ほどまで俺と共闘していた女が入ってきた。


「貴様ら、仲間か?」


 一瞬黙った後、男は言った。


「仲良しかと言われれば全力で否定するところだが」


 女は言った。


「仲間かと問われれば否定すべからざるなにかがあるのも確かなわけで」


 少女は言った。


「仲良しで仲間です♪」


 3人の後ろを見ると工藤清士郎がこめかみを押さえている。

 なるほど、こいつらの傍若無人さには見逃せぬ共通項がある。

 清士郎の苦労は押して知るべし、だ。


「それよりブリ。俺のセンスがないってなんだよ」


「あんたねえ。その腕輪見なさいよ! めちゃくちゃダサいじゃない! そんなもの送られて喜ぶと思ってるの!?」


「いや、私はすごく嬉しいですけど……」


「……、……待て。おまえが俺にくれた腕輪、これ、どういう意味だ?」


 女は俺の顔を見て一瞬「やば!」という顔をして逃げようとした瞬間、俺達の身体が淡く光りだした。


「ここまでか」


 こうして、初めてのレイドバトルは、今後、死生を共にする様々な出会いと共に幕を閉じた。

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