レイドバトル3(一茶)
「なんの騒ぎだ!」
そう怒鳴ってきたのは友澤兄妹の兄、守だ。
守は僕に目を留めると一寸考えるそぶりを見せて声をかけてきた。
「確か、工藤清士郎だったな。去年、うちの主催するパーティーで会っていたな」
「ご無沙汰ですね。僕なんかを覚えていてくれたんですか?」
「逸材は宝だからな。忘れんよ」
そう言って守はフレンドリーに僕の肩を叩いた。そこ、ブリちゃんのよだれが付いたとこだけどね。
「それで、これは貴様の仕掛けか?」
「まあ、そんなところです」
守は、その身長からごく自然に、だが、はっきりとわかるように見下す視線をカブに向けた。
そして再び僕に視線を戻して言った。
「駄犬には鎖が必要だな。貴様なら万が一と言う事もないと思うが、手綱はしっかりと締めて……!」
瞬間、守は倒れ伏した。
カブに、殴り飛ばされたのだ。
??カブなにやっちゃってんの?
僕も、誰も動けなかった。
「ごちゃごちゃうるせえんだよ、太眉野郎」
「……貴様、誰になにをしたかわかっているんだろうな」
「みじめに地面に座り込んでるくせして凄んでんじゃねえよ……、!」
守は寝転がった状態から、向けられているカブの銃を蹴り飛ばして立ち上がり、カブに殴りかかった。
「ちょ、ちょっと待って。なんで……」
確かに事前にカブには暴れて注目を集めるように伝えていたけど、これは違う。
僕が言葉を終える前に、殴り合いは始まってしまった。
カブが守の脇腹に拳を叩き込めば、守はカブの肩に肘を振り下ろす。
守がこめかみに手刀を見舞えばカブは咽喉に指を突き刺す。
「ちょ、全力すぎるんですけど!」
ブリちゃん大喜び。
て、これ、想像の外過ぎる!
「なんでこんなことになってるんだよ!」
「いやいや、まったくわからないな」
僕の隣で答えたのは、いつ現れたのか、黒衣の女、友澤兄妹の妹、瑞樹だった。
「瑞樹先輩、お久しぶりです」
「あれ、君は美夜くんじゃないか。懐かしい再会もあり、また、兄がぶん殴られる姿も見られる。今日はいい日だ」
そんな素っ頓狂なことを言い出す瑞樹。
「ただ、メインディッシュは他にある。ここで腹いっぱいになるわけにはいかないな」
瑞樹は指を鳴らした。
見るとカブは腹部に叩き込まれた守の膝を抱え込み、そのまま押し倒していた、ところに、頭上から水が振ってきた。
水魔法の『ウォーター』だ。どうやら瑞樹の隣にいるおかっぱの少女がやったらしい。
が、そんなことはお構い無しに少し離れてお互いをけん制するカブと守。
カブは目元に青タンを作りながら言った。
「温室育ちのお坊ちゃんにしてはやるじゃねえか」
守は白い制服を泥に汚し、口の端を切って言った。
「貴様こそ、薄汚い野良犬にしてはやる」
「ほら、もうその辺で」
僕は二人の間に割って入った。できるならこんな役は他の誰かに代わってもらいたいが、誰も勤めない。瑞樹はニラニラと笑っているだけだ。
「カブ、さすがにやりすぎだよ」
「なんか、なんかこいつむかつくんだよ!」
「貴様がむかつくんだがな!」
「おまえがな!」
「いや、貴様が!」「おまえがだってんだろ!」
カブはわかる。彼、知性を感じさせるタイプではないから。
だが、友澤守とはこんな人間だったか?
カブに引きずられたのか、これではまるっきり同レベルの子供の喧嘩だ。
「兄様、見世物としてはなかなか楽しめましたが、お遊びはその辺で」
妹に言われてやっと我に返ったのか、守はひとつ深呼吸をすると制服の乱れを整えた。
「……そうか」
そう言って、後ろを見せた、瞬間、カブが飛び蹴りをかました。
守は本日2度目の転倒を経験した。
「き、貴様!」
「なに勝手に自己完結してやがる。続きだ!」
「……ブリちゃん」
「らじゃ」
倒れてる守に踊りかかろうとするカブ、に、ブリちゃんは後ろから抱きついた。
そのまま首を絞め、きゅっと落とす。
地面に倒れるところをエトちゃんがキャッチ。
「申し訳ありませんが、この辺で。お詫びは後日」
僕がそう言っても、守は激昂しており、髪の毛を逆立てて気絶したカブを見下ろしていた。
「守、敵が来たぞ」
そう言ったのは、守と同じように白い帝王高校の制服を着た、長髪メガネのいかにも切れ者といった男だった。
「……敵戦力は?」
「100がふたつ。2時と10時から」
それを聞き周りはざわつき出した。
敵は2倍、それも右左から挟み撃ちを仕掛けてきているのだ。




