魔法を使おう1(カブ)
4回目のクールタイムは、特にやることがなかった。
ちょっと語弊。
俺を除いた3人、エト、一茶、ブリは探索すると言って広場から出て行った。んで、俺、カブはお留守番。
この世界のシステムとして女神像を守るというルールがある以上、最低一人は残っている必要があるとのこと。
俺には、宿題があった。
電動銃は極めて有用な武器だが、ゴブリンジェネラルクラスになるとまるで役に立たない。
空手は強いが戦車の装甲は正拳突きでは砕けない。戦車には戦車向けの武器が必要なわけで、俺には強力な武器が必要で、それを探さなければならないのだ。
あ、そうそう、俺のレベルは15になった。それで選択できるジョブの幅が広がった。
さらに、サブジョブなるものが選択可能になった。これは、メインジョブのようにステータス上昇がないし、スキル熟練度上昇が半分になるが、ジョブのスキルは使えるようになるってものだ。
んで、今の俺のステータス。
カブ Lv15
メインジョブ シューター
サブジョブ 下級魔法使い
筋力 6
知覚 8(+1)
耐久 8
カリスマ 4
知性 3
敏捷 7(+1)
運 2
魔力 15
スキル
体力回復小 上級
体力回復中 中級
射撃 上級
狙撃 上級
連続魔法発動 初級
下級魔法 初級
称号
実戦主義
条件
レベル12までの経験値をモンスターを倒すことのみで取得。
効果
戦闘中に得られる熟練度プラス100パーセント。それ以外で得られる熟練度マイナス20パーセント。
スロット 2/3
なんか、変な称号がついた。マイナス効果もあるんでいいのか悪いのかよくわからん。
知覚はポイントで上昇させたわけではなく勝手に上がってた。
そんで、サブジョブには『下級魔法使い』を選んだ。
その名の通り、魔法を使えるようになるジョブだ。
『下級魔法使い』
補正なし。
ジョブスキル
連続魔法発動
下級魔法
取得条件 レベル15以上
魔力 15以上
連続魔法発動は前回使った魔法を2倍の魔力を消費して即座に発動できるスキル。
下級魔法は全ての下級魔法を使うことができるスキル。微妙に威力が下がって消費魔力が上がるみたいだけど。
俺は、高威力の魔法で劣った攻撃力を補えないか、と思ったわけだ。
んで、せっかくの留守番なのでいろいろ試してみることにした。
「まずは、一番攻撃力の高い闇魔法のダークマターを……」
感覚としては、前頭葉に文字が叩き込まれたような感じ。その文字は、四則演算の穴喰い問題のような、タイピング練習ソフトの文字列のような感じで、それを解いた瞬間、魔法が発動した。
拳大の黒い塊、それがまっすぐ森を進み、木々をへし折り貫いて、やがて消えた。
「強い……けど、遅!」
威力は申し分ない。ゴブリンジェネラルでも直撃できれば一撃で倒せるだろう威力だ。
が、遅すぎる。時速60キロないくらいだろう。遠くから狙っても普通に避けられる。
たぶんこれ、接近戦で使うもんなのかもしれないが、敵が武器振るってる最中に魔法使う自信ないぞ。
そう考えるとこの下級魔法使いってジョブ、取得に知性がいらないからラッキーくらいに思ってたけど、知性低いまま魔法使うのってけっこう地雷だ。
「もったいないよな。威力は文句なしなのに。手で投げたほうが速い。なら、実際に手で投げたらどうだ?」
確か、そういう魔法があったような。
女神像の前まで戻り、魔法のリストを見た。
「あった、これだ」
『付与魔法ダークマター』
俺は通路を駆けて外に出ると、落ちている石にダークマターをかけて、放った。
石は木にぶつかると、砕けて500円玉大の黒い塊になって、消えた。
「いいんじゃね?」
威力は半分以下になるが、これなら及第点だ。
俺は、次に電動ガンの弾にダークマターをかけて、銃を撃った。
弾は木に当たって弾け、幹の半分を消し飛ばした。
「いいじゃん!」
けっこうあっさり問題が解決してしまった。
もっといい魔法があるかもしれないので、俺は魔力の許す限り色々と試してみた。
まあ、攻撃系は下級魔法ではダークマターが一番威力が強いので、そんなに参考にならなかった。
それ以外だと、目晦ましに光魔法のフラッシュ、敵のバランスを崩すのに地魔法のベントあたりが使えそうだ。
「闇魔法のダークネス?」
俺は闇魔法が気に入っていた。思った以上にダークマターが使えたから。
俺はダークネスを使ってみた。
手元に黒い雲が生まれる。大きさ、範囲などはある程度調整できるようだ。ちょっと面白い。
俺は目の前に縦横2メートルくらいの黒い空間を作った。
「……これはあまり使えなさそうだな」
説明によれば、ダークネスの空間の中では、視覚聴覚嗅覚に魔力まで感知できなくなるらしい。
だが、場所固定のため数歩歩けば抜けてしまえるのだ。
俺は、とりあえず、ダークネスの空間に入ってみた。
「おお、これは怖い」
なにも見えないし聞こえない。閉ざされた空間に閉じ込められたような感覚だ。余分なものがないので座禅するには集中できていいかも。
しばらく、だいたい5分くらいだろうか、それくらいでダークネスは消えた。
と、今回から導入したトランシーバーから声が聞こえた。ダークネスの中では音が消失するため気付かなかった。
「おう、エト、どうした?」
『どうしたじゃないです、大丈夫なんですか!?』
なんか涙声のエト。
「なにがだよ」
『なにがじゃありません! カブさん、5分くらい消えてたんですよ?』
「なんだそりゃ」
『オートマッピングの光点に、カブさんの反応がなくなったんです』
考えられるのはダークネスか。あれ、魔力も外に漏らさないんだな。
俺は再びダークネスを出現させ、手のひらでしばらく弄んだ後、ほくそ笑んだ。




