有楽町でラーメン2(カブ)
「みなさん、いろんなこと知ってますね」
「エトちゃんもそうなるよ。高校になって行動範囲が広がれば友達といろんなとこ行くようになるし」
俺の場合は高校の仲間たちと色々行って覚えたというよりは現場のおいちゃんたちに教えてもらったんだ。
おいちゃんたちは都内のいろんな場所で工事をしていて、安くてうまい店をいっぱい知っているのだ。
「どう、でしょう。今でも学校と寮の往復で一日が終わっちゃってるし」
「そういえばエトって中3だよな。内部進学?」
「ええ、そうですよ。高校はエスカレーターです。佃島は大学はないんで大学受験はすることになると思うんですけど」
「それじゃあ受験勉強しなくていいな。これから俺たちがいろんなところに連れてってやるよ」
「! はい、お願いします♪」
「僕、来年受験ね」
「水差すなよ。どうせお前なら、東大失敗しても有名私大にひっかかるだろ?」
「国立と私立で学費いくら違うと思ってるの?」
「それこそケチくせえ。俺たち、けっこう稼いでるじゃねえか」
「え、なんの話?」
俺はゴールドによる換金の話をした。
「そんなの聞いてない!」
「おまえ、先週一緒に下関まで行ったよな。そんとき財布一度も出さなかったのはなんだったんだ!」
「とりあえず、これからカブと換金に行くから来週にでもまとまったお金を渡すよ」
「まとまったお金っていくら?」
「そうだね。200万は軍資金に留保しておいて残りを4等分で、ひとり40万くらいかな」
「よんじゅうまん!」
「現状、ひとり1キロズタ袋に入れて異世界から持ち帰るとして、1週間に4キロ。現金換算週に1600万円。月を4週として、月に6400万。これが今のところの上限、かな」
「ろくせんよんひゃくまん!」
「ただ、このレベルになると換金も今使っている古物商では対応できなくなるだろうから別の換金方法を考える必要があるんだけど。あ、カブ、パスポートは持ってる?」
「いや、持ってない」
「それじゃあ取っておいてね。夏に外国行くから」
「なにしに?」
「実銃買いに。それまでになるべく軍資金は貯めておきたいんだ」
それ、決定事項なのか?
ちなみに言うと、換金できそうなアイテムは他にもあるっちゃあある。
が、例えばダイヤのネックレス1万ポイントは、質屋で換金すればせいぜい10万円になるかならないかだ。
それと同じポイントの金塊が400万であることを考えれば、まるっきり割りに合わない比率だ。
ふと、エトが俺のほうをじっと見てるのに気付いた。
「どうした?」
「カブさん、餃子食べないんですか? ひとつも食べてないけど」
「ああ、俺の分、食べていいぞ」
「いただき!」
そう言って横から箸を伸ばしたのはブリだ。
「なに? あんた餃子嫌いなの? こんなにおいしいのに」
「いや、好きだぞ。だけど願掛けしてるんだ。願いが叶うまでは餃子断ちしてるんだ」
「なにそれ。甘いもの断ちとかなら聞いたことあるけど、餃子断ちって!」
と、そこで俺の携帯が鳴った。
相手は、珍しい、義姉だ。
「もしもし、クズか?」
『誰がクズだ!』
「そう言われるのが嫌ならさっさと籍入れて苗字変われよ。兄貴、待ってると思うぞ」
『ガキが大人の恋愛事情に口出しするな。ついでに言うと私女。プロポーズするのはあっちからだろうが!』
「んで、なんの用だ? 半年ぶりくらいだろ、連絡寄越すの。基本的に嫌な予感しかしないんだけど」
『いやあ、どうしてるかなって思って』
電話の主は葛岡陽子。俺の兄貴の彼女だ。まあ、兄貴っても血縁じゃなくて近所のお兄ちゃんなんだけど。
この人と兄貴には小学生の悪ガキだった頃から世話になっているので、俺の頭が上がらないひとりだ。
『ところでさ。最近、金についてなにか噂聞いてる?』
「……金って?」
『ゴールドよ。先週くらいから未成年の換金報告が数件あってさ。そんで、なぜか今日は午前中の現時点ですでに5件。なーんか引っかかるのよね』
「休日出勤お疲れ様。んで、なぜそれを俺に聞く?」
『バイトばっかしてるけど、一応高校生でしょ。なんか知ってるなら教えてよ。ご飯奢るから』
「わかったわかった。なんか掴んだら連絡するよ」
『あ、ちょ、ま』
俺は急ぎ携帯を切った。
「誰から?」
「……警察」
陽子義姉は、警察のキャリア官僚だ。去年警視正になったとか言ってた。
俺は、先ほどの電話の内容をみんなに話した。
「さすが日本の警察。優秀なところは優秀だね」
「おい、どうすんだよ」
「今しばらくは放置で。僕たちも、その他大勢に紛れておこう」
一茶はよくわからない笑いを浮かべた。
まるで、警察とやり合うのが面白くて仕方ないとでも言うように。
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次回は20日16時を予定しております。
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