ゴブリンをやっつけろ!後編 1(エト)
金曜、23時59分になった。
私、エトは過去2回と同じように目を開けると広場にいた。
「あ、カブさん、一茶さん、ブリさん、こんばんわー」
「おう、エト」
「こんばんは。ま、一応夜かな。エトちゃん、頼んだの、持ってきてくれた?」
「はい」
わたしは、ズタ袋を差し出した。
500ミリペットボトルを3つも入れればいっぱいになるような小さい袋だ。
正式名称『持ち込み袋』。現実の世界から、またはこの異世界から物を持ち出すためのものだ。基本的には持ち込みはこの袋に入れて行うらしい。
正直服のポケットに入れていたり手に持っているものは持ち込めるので、設定はすごく緩いと思うけど。
持って来たのは、色紙だ。100枚100円で売ってる折り紙作る用のやつ。
「お、なんだなんだ、折り紙か? 俺、手裏剣作れるぞ」
「私なんて鶴折れるわよ!」
「うん、それは今度にしようか。さ、エトちゃん」
私は一茶さんに言われて、女神像の台座の下にある、引き出しに色紙を一枚入れた。
そして、台座を操作する。
『ポイント交換』
すると、私のポイントが10ポイント増えた。
なぜか一茶さん、ガッツポーズ。
「次は丸々一袋行ってみようか」
私は台座の引き出しに薄ビニール袋に入れてある100枚の色紙を入れてポイント交換した。
すると、10ポイントだけ入った。
「一茶さん?」
「次は、ビニールから出して」
私は言われた通り色紙を台座の中に入れ、ついでにビニール袋も入れた。
今度はなんと、1010ポイントも入っていた。
「カブ!」
「お、おう」
カブさん、よくわからないまま一茶さんとハイタッチ。私もよくわからない。
「このポイント交換、現実から持ち込んだものが10ポイントで交換されるんだ。おそらくは最低値で」
「ふぉーゆーことよ?」
ブリさん、お菓子食べてる。それ、1000ポイントもするのに……。
「例の共有掲示版。そのレポートに現実から金塊持ち込んだ人がいてね。でも、10ポイントと交換だったんだ。それで、他のものではどうだって思って今回、エトちゃんに色紙買ってきてもらったんだ」
「よーわからん」
「うちも」
「つまりね。この色紙100枚100円と金の100グラムインゴットとが同じポイントで取引できるんだ!」
「……へ~」
「……ほ~」
「……エトちゃん」
「えっと、つまり、この色紙が40万円くらいだってことです」
「「な、なんだって~~!!」」
「ちなみに今ブリちゃんが食べてるお菓子も40万円くらいだからね」
ショックだったのか、ブリさんはふらふらとよろけてその場に座り込んでしまった。口はもぐもぐ動いてるけど。
「なんでそんなことがあるんだ?」
「仮説でいいなら」
「早く言えよ」
「……たぶん、この世界はベータ版なんだと思う」
「おまえは本当に言うことがわかりづらい!」
「最初、女神が言っていたこと、覚えてる?」
首を横に振るブリさんとカブさん。この二人、まるっきり聞いてなかったもんな~。
「女神が言うには、この世界『ニューワールド』はその名の通り、新しく作られた世界なんだ。僕たちの目的は女神像を守りながらモンスターを倒すこと。たぶん、僕たちはモンスター退治というバグ取りをしながら、この世界のテストプレイをさせられているんだ」
「うん、よーわからん」
「同意同意」
……ブリさんとカブさん、仲いいな。
「そうだなあ。商品開発で言うとね。まず、新商品ができました。だけど、それにどんな問題があるかまだわからない。だから社内で使ってみて使い心地を試してみましょう。これがアルファ版ね。そして、アルファ版が終わって、発見した問題を改善したら今度は社外の人にテスターとして使い心地を試してもらいましょう、これがベータ版。ここで起こった問題を解決すればいよいよ商品として売り出すことになるんだ」
「ほー、つまり、今はこの世界がどんな使い心地か、どんな問題があるかを外部の俺たちが確かめているところ、てことか?」
「そ、だからまだまだバグも多いし作りも緩い。僕たちは、それを最大限活用するんだ。さ、エトちゃん」
「はい」
私はズタ袋に持って来た、残りの色紙を台座に入れた。今回、私が持って来た色紙は10袋だ。一袋はそのまま入れちゃったから10ポイントだけだけど、これで私は9090ポイント手に入れた。ちなみに90ポイントはビニール袋の分。
けっこうなポイントが一気に手に入ってしまった。




