しなければならない!
「来月半ば中間テストを行います」
中間テスト?? まぁ、いつも通り赤点にならなければ……。
「このテストで、大体志望校は決まると思っておいてください」
志望校……これは重大な問題だ。
なぜなら、ひなやかなと違う学校になる可能性が出てくるのだ。
かなは、こういうのは多分アホだろう。ひなは結構いい点とってそうだな……。
とりあえず、聞いてみようかな。
「あのね、二人はテストどの位なの? 出来ればわたし一緒の高校行きたいなって……」
「せやなぁ。バンドの事もあるし、なるべく一緒の高校いきたいなぁ」
「うん……そうだね」
ひなは不安そうだな、ランク落とさないといけないかもしれないしな。
「3人の中で1番高い子に合わせるようにがんばろ?」
「まーちゃん、それ結構厳しいかも?」
「ひな、わたし頑張って合わせるよ?」
「だってかながいるでしょ? かな、クラスでトップクラスだよ?」
ん? ……まじで?
「あー、うち、近所の軽音部ある公立のとこ行くつもりやったから大丈夫やで? 最悪学科変えたり推薦狙ったらええやん!」
「本当? それなら頑張れるかも!」
「かな先生! よろしくお願いします!」
まさかのかなが1番勉強出来るとは……。
♦︎
休み時間、俺はイベントの時に気になっていた事を雅人に聞いてみる事にした。
ひなや、かなに作曲の話をする前に、何かヒントが得られるかも知れないと考えたからだ。
「雅人、"スターリン"って源さんのアドバイスで変わったって言ってたけど、源さんはどんなアドバイスしてくれたの?」
「やっぱり気になってた? 具体的にはヒロタカさんに一言だけだったな!」
「一言?」
「そうそう、新曲持って行った時に、『グリーンデイとオフスプリングの違いはわかるか? お前たちはオフスプリングをしようとしてるけど、グリーンデイの方が向いてる』って、それだけ」
マジで? めちゃめちゃわかりにくい気がするけど、的を得た様なアドバイスだな……。
「あとは、要所要所で『もっと合うのあるんじゃない?』みたいに浮いた部分指摘してくれたかんじかな?」
その辺りも重要なんだろうけど、確かに"スターリン"はガンガン速さで攻めるよりコード感出した方がしっくり来やすいメロディラインだ。現に今、しっくりと4人の演奏が纏まる曲になってから良くなっている。
俺たちはどうなんだろう?
「でも、そのアドバイスでヒロタカさんが変わったのが1番大きいよ。 作った曲のイメージでドラムやベースが色々とやり易くなったからな!」
そうか、BPMを落とした事で、タム回し主体になっていた雅人の別の引き出しが使えるようになった訳か……。
「やっぱりヒロタカさんすごいね! これヒロタカさんに言っておいてね!」
「ハハッ、ヒロタカさん喜ぶわ!」
ヒントは掴んだ。
俺は急いで2人の元に向かった。
「まーちゃん急いでどうしたん?」
「うん、ひなには言ったけど2人に作曲してもらおうと思ってるんだ!」
「作曲?」
「そう、さっき雅人に"スターリン"がアドバイスされた内容聞いてきたんだけど……」
そう言って、2人に内容を話した。
「そしたらうちらも、テンポ落としてアレンジを広げる感じでええの?」
「わたし達はテンポをあげよう!」
「「えぇっっ」」
「テンポ上げて複雑なアレンジをしよう!」
「ちょっとそれは、まーちゃん出来てもうちらは無理やって!」
「多分大丈夫! かなは元々シンプルスタイルだし、ひなはまだまだ余裕が有ると思うんだよね……」
俺はひなをチラッとみた。
「そ、そんな事ないよ!?」
「だって今のドラム、涼しい顔でたたけてるし……」
「もうっ、まーちゃんのいじわる!」
「これには理由があって、"スターリン"と同じ事しててもダメだと思うんだ」
「そらそうやな……」
「でも、全部そうする訳じゃなくって、メロディに合わせて適切なアレンジをしようってイメージだよ!」
「せやなぁ、テンポあげるだけやったら早口になってまうだけやしなぁ……」
「だから伸ばしたりするのが多いメロディは早く複雑に! みたいなかんじかな?」
「ふんふん、ようわかったで!」
「だから合宿までに各3曲、それぞれテーマを掲げて作って欲しいの、合宿でそこからアレンジしよ!」
こうして俺たちはGWの合宿までの2週間作曲をする事になった。
◯用語補足
・オフスプリング
アメリカのポップパンクバンド、昔空耳アワーでドラえもんに聞こえると話題になった事も……
・グリーンデイ
アメリカのパンクロックバンド、放送禁止用語だらけの曲で、ラジオで"ピー"だらけで放送されていた事も……