人を呼ぶ事は
イベントの2日前、家に帰るとタキオから荷物が届いて居た。
そういえば昨日メールで、イベント用に用意できる分だけ送ったと言っていたな……。
ダンボールを開けると、Tシャツ10枚くらいと、フライヤー、缶バッジと手紙が入っていた。
"Tシャツは各2枚メンバー用"
販売用じゃ無いのか……。
俺はとりあえず、お礼を言うためにタキオに電話をかけた。
プルルルル、プルルルル
「もしもし! タキオさん?」
「あぁ、まひるさん! グッズ届きましたか??」
「はい! ありがとうございます!」
「そうそう、あとサイトもテストアップは出来たので、イベントには間に合いそうですよ!」
「早い! 流石タキオさんですね!」
「いえいえ、まだコンテンツが少ないので、早いです」
「明日、メンバーにTシャツ配っておきますね!」
「それと、まひるさん写真で着ていた黒いパーカーライブの日着てくれます?」
「黒いパーカー? いいですけど……あれ何かわたしだけ邪悪な子みたいに見えないです?」
「サイトの写真で気づきませんでした? 写真を弄ってちょっと邪悪さを出してます」
「確かにアイシャドウとかが濃くなってるように見えたけど……加工してたんですか!」
「そう! その方が印象付いていいと思うんです! ちょっとした毒があった方がね!」
確かに、メンバーをそれぞれキャラ付した方がいいのは聞いたことがある……。
「女の子の服苦手でしょ? 丁度いいんじゃない?」
「まあね、最近は慣れたけどね! ネイルとか黒にしてみよっかな」
「まひるさん、ネイルできるの?」
「ネイルは元々できるよ、爪割れ防止でしてたから!」
「なるほど、いいと思う。そんな感じで意識してみて?」
「わかりました!」
「勿論、普段は可愛い服着てもいいよ! あはは」
♦︎
次の日、2人にTシャツを渡すと、今日も手売りに……流石に1週間してるとマンネリ化するなぁ……
ペラッ
「ちょっとかな! なにするのっ!」
かなは俺のスカートをめくりパンツを凝視……
「まーちゃん、パンツから気合入ってへん……」
「そ、そんなことないよ!」
「赤とか履き! 女はそこからやで!」
「かなはどうなのさ?」
するとかなは自分のスカートをめくり!
「赤や! どうや?セクスィーやろ?」
「あはは、本当に履いているの?」
「当たり前やんかー!」
そうか、当たり前だったのか……俺も赤いパンツ買わないといけないな。
だか、アホな話をしてる間もかなは何やら悩んでいる様だ。
「まーちゃん、ひな! 今日何枚売ったんや?」
「1枚……」
「0枚……」
「なんやてっ! ひな! 0枚やて? そのおっぱいは何のためにあるんや!」
「だって……」
「言い訳はいらん! ちょっと待っとき!」
そう言ってかなは、何処かに行った。
「まーちゃん、不安しか無いんだけど……」
「わたしも……」
すると、10分位でかなは袋を持って帰ってきた。
「まーちゃん、ひな! これに着替えるんや!」
こ……これは!
「やだぁ〜! かなこれはやだよ!」
「わたしはこっち……?」
かなは目を細め
「ひな? 今日何枚売ったの?」
「0枚……でも……」
「はいっ! 黙って着てくる!」
こうしてひなはメイド服を着せられ、俺は小悪魔セットを持たされた……。
「かなぁ〜恥ずかしいんだけどぉ〜」
「めっちゃええ感じやん!」
「かな? 似合う?」
「まーちゃん、バッチリや! めっちゃ似合ってるで!」
かなの作戦は、めちゃくちゃ目を引いた。
ただ、目を弾くのと売れるのはここまで行くと話が違うようだった。
ひなは、色々な人に声を掛けられ、一緒に写メを撮られて……
結局売れたのはかなの7枚と俺の2枚で今日は終わった。
♦︎
帰り道、ひなは今日の事を思い出し、恥ずかしそうだ。
「もう〜今日は恥ずかしすぎたよ」
「でも、ひな……似合ってたよ?」
「本当? 可愛かった?」
「うんうん、ひな可愛いかった!」
ちょっとひなは目を逸らすと、
「まーちゃんが、可愛いって言うなら……」
「もう一回着る?」
「嫌!」
「即答! あはは!」
「まーちゃん意外とコスプレ好きだよね?」
「ん? なんで?」
「まだ、ツノ付けてる……」
「あっ……あはは」
「明日、イベント頑張ろうね!」
「うん!」
色々な人が色々と考えて、一つのイベントになる。この1週間ちょっとの間で人を呼ぶ事の大変さと、呼ぼうという意識の大切さを学んだ。
そういえば、明日どうやってギター2本持って行こうかな……。