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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
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バンドの進化

日曜日の昼、2つのメールが届いた。


一つ目はタキオからのメールだった。



"デザインが出来たのでご確認下さい"



件名にそう書かれたメールを開くと、PDFデータが添付されていた。


・ロゴ

・サイトのデザイン

・Tシャツのデザイン

・新しいフライヤー

・ポスター

・缶バッジデザイン


あいつどれだけ早いんだ。

どれもクオリティの高いポップなデザイン。

まぁ流石に今のイメージでドクロや竜にはならないよな。


グループメールだからこれに希望とメッセージを返せばいいのかな?


サイトは……

吉田くんの写真が上手く生かされている。

こうやって並べられていると俺って結構ボーイッシュだな……ジップパーカーのせいか?


ブログやSNSも組み込まれたデザイン。

チケット用のフォームや、紹介なんかもあり、かなりしっかりしている。


Tシャツやグッズもいい感じ……白、黒、ピンクに緑か……。


俺はロゴとサイトのデザインをメールで送り、パソコンを閉じた。


さぁ、今日は練習の日だ。

家を出る準備をする。"キラの助"が少し寂しそうにしているように見えた。


「もう少し待っててね……」


俺はそう言って、部屋をでた。



♦︎



スタジオを待っている間はサイトの話で持ちきりだった。


「タキオさんのデザインすごかったなぁ」

「うんうん、売ってそうなのばっかりだよね! ゆきちゃんのイラストも沢山使っているし」


確かにあれはどこに出しても恥ずかしくないデザイン。バンドとして確実に成長していると思う。


グッズなんかも一気に出来るのは嬉しい。

どのTシャツを着るか? など話は盛り上がった。


時間が来たので、スタジオに入り、セッティングをする。俺はひなの異変に気付いた。


「ひな? もしかしてだけど、もっと叩きたい?」


ひなはハッとしたように頷いた。


「ちょっと気にせず、やりたいようにやってみてよ?」


そう言って、俺は曲を始めた。


ん? なんだこれ?


ひなのドラムが変わった。だけど、この入れ方、何に影響を受けたんだ?


ジャス? ダンス? いや違う、リズムの捉え方自体が変わった訳じゃない。


曲を止め、俺は聞いた。

「ひな……最近何かコピーした?」


「フリー◯さんを……」

「フリー◯さん? えっとドラ◯ンボールの?」


「うん、動画でボカロの曲を叩いてる人がいてその演奏を別で練習してるかな……」


なるほど、打ち込みを生でアレンジして叩いている動画か……どおりで変速的な入れ方になっている訳だ。


本来のアレンジは自分の身体が持って行きやすいアレンジに自然となる。それを意図して持って行きにくいアレンジをしたりして展開していくのだけどデジタルは違う。


実際は腕が何本もないといけない様なアレンジも多々ある。それをドラムの上手い人が、人間の出来るアレンジに落とし込んでいるのだ。


曲の雰囲気も洗練されてる感じだし、これはこれで面白いかもしれない。


「ひな、それでやってみよう!」

「いいの?」

「音楽は自由だよ!」


ふと頭の中でジュンさんが駆け抜けて行った気がした。だけど、引き出しが全然違うところから自分のドラムに昇華するひなはやっぱり天才かもしれないな。


なんだろう? もともとふわっとした雰囲気のせいかまだまだ余裕ある様にさえみえる、あのハイハットとスネアのコンビネーションはあんな涼しい顔で出来るものなのか?


かなも指弾きが主体になり、グルーヴが増した……俺も何か進化しないとな。



♦︎



練習が終わり家に帰る。そういえばもう一つのメール開けるのを忘れていた。


メールを開くと、返信したメールに西田さんやひなやかなも返信していた。


ロゴはもう決まりそうだな!


もう一つのメールは……ドリッパーズ?


"チケット40枚追加してください! まだいけますか?"


40枚? 急にこんなに? 何があったんだ?

俺は急いでナカノさんに電話をかける。


プルルルル、プルルルル


「あ、まひるちゃん? メールみてくれた?」

「見ました! 急に何があったんですか?」


「あー、あれね! ジュンのあげた動画がでかいんじゃないかな?」


「動画?」


「そうそう、次のイベントで"ドリップノットが出まーす! って練習の動画を上げてるんだよ!」


「あー! あの時の! ジュンさんのあの感じってやっぱりわざとなんですか?」


「どうだろうね? 練習はいつもあんな感じだけどね! ただ……」


「ただ?」


「大学1年の時までは大人しい奴だったよ? タカよりも全然喋らなくてさ!」


「ほんとですか??」


「うんうん、最初からあれだったらバンド組んでなかったかもなぁ……でも、あいつはあれでめちゃくちゃ考えてるから」


「なんか今は、ナカノさんが信頼してる感のある理由がわかる気がします……」


「まぁ、悪い奴じゃないから遊んであげてよ! 1番大事なギターあげるくらいには気に入ってるみたいだから!」


えっ? 1番? メインはエクスプローラーじゃないのか?


「キラーが1番なんですか……?」


「初めて自分で稼いで買ったギターなんだよ、あのキラー。 あいつ泣いてただろ?」


「泣いてましたけど……」


「ちなみに、元々"キラの助"だったからな! 俺の弟ってずっと言ってたから……まぁ、だから大事にしてやってくれ!」


俺は色々と繋がった。

"キラの助"がやたらと綺麗で整備されてたことも、パーツがカスタムされてた事も……


来週のイベント、絶対成功させないと。


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