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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
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誰?

販促活動の疲労が思いの外ダメージがある。肉体的というか精神的疲労がヤバい。


これを自然に出来るかなが凄すぎる。

ギターでも弾いて癒されようかと思っていると登録していない番号からの連絡がきた。


ブーン、ブーン


バンドマンだからよくある事なのだが、慣れる事が出来ない。俺は仕方なく電話に出る事にした。


「はい、もしもし?」

「ヤッホー! 俺俺! あのさー……」


プツッ


ヤバい、あまりの勢いに切ってしまった。

いやいや、俺って誰だよ……。


ブーン、ブーン


ヤバイまた同じ奴から電話だ……


「はい、あのー……」

「あれーっ? 電波悪かった? 俺俺!」


「……多分間違えてますよ?」

「えー? そんな事無いと思うけどなー。まひるちゃんでしょ?」


!?


マジで俺に掛けてるのかよ……俺が知らない奴だったらどうしようか……。


「そうですけど……誰ですか?」

「ジュンだよ! ジューん! やっと退院できたんだよー!」


ジュン? どこかで聞いた事あるような……


「あれー? ナカノから聞いてない? 俺の嫁まで貸したのにー」


ナカノさん……ドリッパーズのギターだ!

って会った事ねーよ!


「あ、エクスプローラーありがとうございます!」

「いやいや、こっちこそ代打ありがとねー」


「それで、今回は? ライブの件ですか?」

「そうそう! あいつらとオリジナルやるんでしょ? 俺もなんか一緒にやりてーなって」


「そうなんですか? それで……」

「でさ、ノットやろうぜ? 今から俺のギター渡しにいくから! それじゃ!」


プチッ


えーっ! ヤバイ、コイツめちゃめちゃだ。

というか家にくるのか? 親もいるしマジでやめてほしいんだけど……。


ブーン、ブーン


「はい、今度はなんですか?」

「あ、そういえばまひるちゃんちどこ?」

「えっと……家に来る気なんです? ちょっと親も居るし、男の人と会うのは、ちょっと出れないんですけど……」


「……あー、そっか。中学生だったなぁ。そしたら明日の朝学校の前で渡すわ! 雅人と同じ(学校)だろ?」


「そうですけど……」

「じゃあ7時半な!」

「あの……」

「あー、いいっていいって! 俺、大学ダブってるから!」


プチッ


そうじゃねー! 朝早すぎるわ! そして勝手に切るなー! 俺はどっと疲れが押し寄せた。


今日は早く寝よう……。



♦︎



次の日、俺は早めに支度を済ませ、学校の前に向かうと、ジュンさんはいなかった。


もう35分なんだけど……。


しばらくして、カウルの割れたビッグスクーターが来た……。


赤い髪の人が降りる。タンクトップに柄シャツ、う、牛柄のハーフパンツ……さらには足にギブスが付いていた。


「ヤッホー! あれ? 意外と普通の美少女だねー、もっとゴリゴリの感じかと思ってたわー」


「それでノットや……」

「そうそう! 覆面被ってやろーぜ! えっとねー、ゾンビと、フレディと、ジェイソンがあるけど……んー髪長いしジェイソンだなー、はいっ!」


そう言ってジェイソンのマスクを渡して来た。ちょっと俺に喋らせてくんねーかな。


「あと、はいっ! これキラーのギター。ドロップBにしてゲージも合わせてあるから、これ使って!」


「……」


「だーいじょうぶだって、ちゃんとショートスケールでもテンションでる弦張ってあるから! 変えの弦もいれとくな?」


「……」


「そしたら今週、うちのアジトで練習するからまた迎えに来るわー! じゃーなー!」


「……」


そう言ってジュンさんは去っていった。

ヤバイあの人むちゃくちゃだ、ナカノさん大変だろうなー。


ところで、スリップノットのどの曲するんだろ……。


俺はスタッフパスが貼りたくられた、牛柄のギターケースを持って学校へ行った。

というか、スリップノットはエクスプローラあるならテレキャスかアイバニーズだろう? おかげでパートすらわかんねーよ!


一応ミックのパート練習して、違ったらキレよ。このケース、牛柄好きなんかな……?



♦︎



「……まーちゃん? なにそのギター?」

「んー、なんかね、ドリッパーズの人に朝渡された……」


「そ、そうなんだー。それで弾くの?」

牛柄にひなは明らかに苦笑いだ。


「うん……」

スリップノットは好きなんだけどね……。


「なんか、すごいケースだね……」


ちょっとぐったりしているとかなも登校し、このギターケースを見ると……


「なんやこれ? めっちゃかっこええやん!」



……おばあちゃんの血かな?



♦︎



その日もチケットの手売りを終えると、家に帰ってギターケースを開けた。



白いキラー。



あの適当そうな雰囲気の割にはメンテが行き届いている……そして、意外にもケースのポケットにはマルチエフェクター、そして、曲名とメッセージの書かれた紙が入っていた!


やる曲

Wait and bleed

"俺の元カノを預ける!"


うるさいわっ!

まぁ、曲が絞れたのと、エフェクターを貸してくれたのは助かる。


この曲なら昔練習した事が有るからパートわからなくても大丈夫だな……。


ドロップBか、懐かしいな。

俺はその晩、慣れるためにジェイソンのマスクを被り練習した。途中覗きにきた兄がびっくりしていたがここはご愛嬌!



♦︎



手売りを始めて4日目、この日から俺たちの事を聞いた"スターリン"も参戦。


だが、参戦したものの雅人の見た目で避けられ、殆どチケットは売れなかった。


「雅人がゴリラだからだって!」

「いやいや、ヒロタカさんが下心全開で話しかけるからですよ!」


その日は合わせて11枚、うち"スターリン"は2枚だった……。


イベント……埋まるかな?

◯用語補足


・スリップノット

アメリカの覆面ヘヴィメタルバンド


・ドロップB

ギターのチューニングを下げた状態


・マルチエフェクター

様々な種類のエフェクターが詰め込まれたエフェクター

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