目立ってなんぼ!
「イベントあんまりよべてないん?」
俺は翌日学校で、2人にまだ半分も売れていない実情を話した。
「これはなんか考えんと、折角アキさん達もでてくれはるしなぁ……」
「そうだよねぇ、合同イベント一回目で滑るのはやだなぁ」
「うん、わたし達ツアーで"スターリン"に迷惑かけ過ぎだと思うし」
「まーちゃん、ちょっとうちにええ考えがあるんやけど、明日まで時間くれへん?」
そう言うとかなは何処かへ行ってしまった。
かなは何を思いついたんだろう?
しかし、不思議とかなの自信が心強く感じた。
「集客ってやっぱり難しいよね、あたしらやっぱり"サカナ"さんに頼り切ってたんだと思うよ……」
ひなも考え、悩んでいるみたいだった。
その晩、かなからラインが飛んできた。内容は"明日Tシャツとメイク道具を持ってくる事"俺は嫌な予感しかしなかった。
♦︎
次の日、俺はかなに言われた様に、Tシャツと今あるメイク道具をポーチにいれ学校に行った。
「やあやあ君たち! 着替えはちゃんと持ってきたかね?」
かなは、大きな紙袋を持っできており、テンションが上がっている。
まだ理由を聞いても教えてくれず「放課後のお楽しみ」なんだそうだ。
「かな……何する気なんだろうね?」
「わたしも不安しかないよ……」
俺はひなと2人で今日何をするのかが心配でたまらなくなっていた。
そして、俺たちの悪い予感は的中した。
放課後教室で上を着替えると、かなは大きな紙袋からピンク色の"はっぴ"を取り出す。
「はいはーい! ちゃんと可愛くみえるようにメイクバッチリするんやで!」
背中には"ハンパテ★宣伝中"とシールを切った文字が大きく書かれている……まさか!
「着替えとメイク出来たら、これを着て宣伝に行くで!」
いーやーだー!
ひなも俺と同じ気持ちに違いない。 げっそりしてる俺たち見てかなは言う。
「宣伝は、目立ってなんぼ!」
マジでこれで外を歩くのか??
ひなはもう既に涙目になっている。
かなは"はっぴ"を着たままCDショップに向かう、まさに意図通り、行き交う人がかなをみていた。
♦︎
CDショップに着くと、衝撃を受けた。
そういえば、かなが売ってるところは初めてみた気がする。
インディーズ欄以外どころか道を歩く人まで遠慮なく声をかけていく。なるほど、このスタイルなら少しでも目を惹く格好でしたいのは納得だ。
かなには俺たちみたいに対象を探している時間というのがほぼなかった。
「あれ? まーちゃん、ひな、何やってるん? 早よ声かけな!」
かなさんごめんなさい!
勢いに当てられ、俺たちも声をかけた。
なんだあの鋼のハートは……。
3時間呼びかけクタクタになると、かなはまた衝撃の発言をする。
「あと9日場所変えてやったら150くらいよべるんちゃう?」
毎日やる気かよ! 確かに今日の収穫は11枚、他がここより人は少ない事を考えても土日を考えたら150枚くらいはもしかしたら行けるかも知れない。
まさかこんなスーパーアナログな方法で呼び込みする事になるとは……。
こうして俺たちの地獄の日々がスタートするのだった。




