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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
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アートディレクター②

バンド名を変える?

タキオは何を考えているんだ?


「ちょっとまって、今までやってきたバンド名を変えるってこと?」


タキオは少し困った様な顔になり

「現在のバンド名ですが、H.B.Pでハンバーガーパーティですよね?」


「エイチビーピーと呼んでもいいんだけど……」


「ネット社会で検索の際、どう検索しますか? 初見では読めないのも問題です」


「だけど……H.B.Pで打てば……」


「ネットだけじゃ無い、CDショップで"は行"なのか"H欄"なのかもわからない」


「それはバンド名だし……」


「例えばどちらかでしか置いていない店舗で、気になったユーザーがどちらかの名前しか知らなかったら? それだけで置いていないと思って売れない事にも繋がってしまう」


「それはそうなんだけど……そしたらどのように変える気なんですか?」


「そこでなんです。若さや、現在公開しているデザイン、またレーベルでのカラーなんかを考慮してカタカナで提案したいと思ってます」


「カタカナ? まぁ、"サカナ"もカタカナだしね……」


「私としては、H.B.Pは長くなってしまうバンド名を省略しようとしてこの名前にしたんだと思ってますがどうですか? それとも別の意味がありましたか?」


いや、H.B.Pはイベントの際咄嗟に省略しただけの名前。 俺は何も反論ができなかった。


「その系譜を考慮して、"ハンパテ★"にしてみてはどうかと思います」


えーっ! 省略しただけじゃねーか!

可愛くなっちゃってるし……。


いや、可愛くなっちゃってるんじゃ無い、可愛くしたんだ。元のバンド名を考慮し、なおかつ中学生〜高校生バンドと言う雰囲気をいれる……。


適当じゃない、さりげなくめちゃめちゃ考えられている。


「ちょっと適当すぎひん? 略しただけやん」

かなは不服そうに言う、そりゃパッと見適当にしか見えないから無理は無い。


「読みやすくしました! と自ら打ち出した様な変化で、違和感が無く、先程言った条件は全てクリアできます」


検索、可愛さ、デザイン性……更には元のバンド名も生かしている。 タキオは本当に凄い奴なのかも知れないな。


「ちょっとこの場で決断と言うのも酷なので、一旦考えてみてください」


そう言うとタキオは、新しいバンド名でのフライヤーのデザインをみせた。


「これって、ユキちゃんのイラスト?」

ひなは驚いた様に呟いた。


「はい、事前に連絡してトレースさせてもらって、レイアウトを組み直してます」


そのフライヤーは、イラストを上手く使い装飾し、仮で入れられたテキストは分かりやすく配置されている。


手書き風のデザインの雰囲気にもバンド名はマッチしている。なんだか城を攻められてる様な完璧さに感服した。


少しメンバーと話してみてくださいとタキオは席を外した。



♦︎



俺たちはしばらく沈黙が続くと、かなが重い口を開いた。


「まーちゃん、タキオさんの提案どう思ってるん?」


やっぱり俺の決断になるのか……。

「かなはどう思う?」


大人げないが、ちょっと荷が重すぎる。

タキオが凄いのは分かるけど、土足で踏み入られた様な感覚になっているのもまた事実だ。


受け入れられるのか?ひなやかなの意見も聞きたい。


「うちは、いいと思う。 イケメンやからと違うで。ただジャンルが違うだけでリクソンさんに近い感じがするんよ……」


「あたしも、最初ちょっと嫌な感じがしたけど、タキオさんはしっかり考えてくれてるんじゃないかな……」


2人とも大人だな。たしかにタキオはユキちゃんのデザインも取り込んだあたり、フォローも考えている。


あいつはマーケティングやデザインの分野で本当に化け物レベルだと思う。協力出来れば凄いモノが生み出せるかも知れないな。


「ファンの事を考えたら、タキオさんの言ってる事は正しいよね……使って来たものを変えたくないのはわたしのエゴだと思う」

俺は呟いた。


「多分、まーちゃんは想像を超えた内容だから受け入れ難いのかも。 あたしらはまーちゃんやリクソンさん達の内容は毎回想像を超えてたから……」


未知の世界を進む事がこんなに不安だとは考えていなかった。でも、ひなやかなはずっとそんな感じだったんだな……タキオに頼ってみようか……。


「うん、やってみよう! みんなその方がいいってことだよね! デザインも可愛いし!」


「うんうん、あのフライヤーは行きたくなるで!」

「そうだね! めちゃ可愛い、ユキちゃんのイラストの使い方も凄いよね!」


なんだよ、めちゃめちゃ気に入ってたのか、良かった。俺の判断は間違ってなかった。



♦︎



しばらくして、戻って来たタキオに受け入れる旨を伝えると、


「良かった、この後も色々準備してたから拒否されたらどうしようかと思いました」


そういったタキオは、実は受け入れられるか心配だったんだなと思った。そんな賭けに出てもやりたかった内容だったのか。


「とりあえず、バンド名の件がまとまったので、午後関係者のみなさんと合流するまでランチにいきませんか? オシャレで美味しいパスタ屋さんがあるんです!」


タキオまでパスタかよ! ってそういえば中身デザイナーのお姉さんだったな……



♦︎



パスタ屋さんに着くと、3人は意気投合してはしゃいでいた。


「タキオさんって彼女とか居ないんですか?」

「僕は当分はデザインを頑張っていたいかなぁ」

「もったいないやん! モテそうやのに!」


「学校に行ってないから同世代の子とは会う機会がないからね……」


「おっ!? まーちゃん、狙い目なんちゃうん??」

「わたし? いやいやいや」


タキオととかややこしすぎるだろ。


「3人はすごく仲がいいんだね?」

「そうやで、ツアーの時とか3人で1つのベッドで寝てたからなぁ」


「へぇ、一緒に寝てたんだ? 楽しんでるようでなによりだね」


ちょ、やめて! タキオの視線が痛すぎるんですけど……


その後も話は盛り上がり、俺はヒヤヒヤしながらランチを食べた。そして、タキオは頃合いを見計らった様に言った。


「僕は、今回の案件は双方にとってチャンスだと思っているんだ。君たちはバンドを売っていくチャンスだし、僕は実績を作るチャンス。だからシビアに話すけど双方の為とわかってて欲しいと思ってる」


「大丈夫ですよ、あたしらこう見えて結構そのあたりは理解してると思ってます」


「よかった、しっかり伝えるのは嫌がらせにも聞こえちゃうからね……でも嫌な事や納得出来ない時はどんどん言ってね!」


しばらくしてタキオはお会計を済ませ、俺たちはお礼を言った。


そうして、カフェに行くとユキちゃんと吉田くんを待ち、2人が来るとタキオはまた、2人に切り込む様に話し始めた。


「吉田さん、電話では話してますが、ドメイン移行したらサイト管理から離れて貰おうと思ってます」


「ちょっとタキオさん、それはいくら何でも……」

◯用語補足

・ドメイン

ホームページのメインアドレスのこと。


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