心機一転
今日から3年生新学期が始まった。
春休みは怒涛のライブツアーだったから、いまいち休みだった様な気がしない。教室の準備もあるので、俺たちは少し早めに学校に集合する。
「今年も3人同じクラスだねー!」
ひなが嬉しそうに言う。
クラス分けはクラスへの影響なんかで決められるらしいので、学校の考えもあるのだろう。
それでもやっぱり嬉しい。
新しい教室に入ると3年生の文字が見える。
そうか、受験の年だな……。
俺が色々と考え出す前にかなが呟いた。
「今年は、今までで一番忙しい年になりそうやな……」
そう、バンドも今までとは違う。
インディーズバンドになるという事は、見に来てくれる人も「CDを出しているバンド」さらに言えば、シーサイドレコーズの看板を背負っていかなければならない。
それに加えて、人生の分岐点。
高校受験が待っているんだ。
♦︎
入学式が終わると、教科書などを確認して、午前で終わる。 学校が早く終わるのがちょっとうれしい。
久しぶりに、3人で楽器屋さんに遊びに行く事にした。
「なんか新しいベース欲しいなぁ……」
「かなのジャズベ、かなりいい奴だと思うけど何か欲しいのみつけた?」
「ミュージックマン弾いてみたいなって…」
「スティングレイか、アクティブベースはいいかもな……」
「高っ! ミュージックマンこんなにすんの?」
まぁ、高校生でも手が出しにくい金額だな。
かなはそういうと少し落ち込んでいる。
かなのベース、同じくらいするんだけどな……などと思っていると、俺は置いてあったギターが気になった。
「まーちゃん、そのギター気になったの? 今のギターにそっくりだね!」
サイクロンか、弦のテンション、ハムバッカーのピックアップ、チューニングなどを考えたらサイクロンは有りだな……。
試奏をしてみると、"マスたん"の時の衝撃は無いが、使い勝手が良さそうだけど……9万……ちょっと頑張らないといけないな。
かなに続いて俺もテンションが下がってしまった。
インディーズになると言っても、すぐにお金がもらえるわけじゃ無いからなぁ……。
結局、消耗品だけを買いその日は家に帰る事になった。
♦︎
家に帰ると、俺はノートを取り出し今後のやるべき事をまとめる。
バンド関係
・スターリンとのイベント準備
・タキオとの打ち合わせ
・新曲製作
・レコーディング関連
学校関係
・進路関係
・修学旅行
・受験勉強
受験勉強……か。 かなとひなはどこ受けるのだろうか? 一緒の高校に行けないと大分不便になってしまう。
俺は少し考えながら布団にはいる。
日常生活に戻ると、一人で眠る布団が広く、そして隣に誰もいない事の淋しさを感じた。
だけど、そんな事は御構い無しに物事は進んで行く……。
そういえばタキオのやつ、週末にみんな集めて何をする気なんだ?
◯用語補足
・サイクロンギター
サイクロンギターはスピッツやピロウズも使っていたギターです。 見た目はマスタングとストラトキャスターを合わせたようなデザインです。作中でも多少はふれてますが、ピックアップが違い、ミドルスケール。ブリッジなどの作りがストラトに近いので、マスタングよりパワフルで安定します。※個人の感想です。