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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
第2章 バンド作り
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誤解だよ!

あれ?今、どんな風に弾いていたっけ?

ひながいいと言った曲は俺の手を水の様に流れて行ってしまった。


「ひな、ごめん。意識してなくって忘れちゃった」


「えー!」


「ごめん、どんな感じにひいたっけ?」

俺は必死で思い出そうとしたが、出ない。


ちょっと困ったようにひなは、

「そしたらあたしが、ちょっと歌ってみるね」


そう言うと、ひなは俺が作ったであろう曲を歌い出した。


俺からこんなメロディが出てたのか? メロディに合わせて俺はいつものようにギターを弾いてみる。


「まーちゃん、違う! さっきはもっと優しい綺麗な音だったよ?」


「あ、いや……この進行じゃないのかな? あれ? どうやって弾いてたっけ? こうかな?」

クリーンを生かしたコードに変えてみる。


「もう! 違う!もっと柔らかく切ない音!」


くそっ! 構成音まで違うのか、一回意識して弾けたら大丈夫なのに、どんな風だったか思い出せない!


俺は頭をフルに回転させ、引き出しをひっくり返すように雰囲気の再現をひなと試す。


「あ、そうそう! 最初そんな感じだった!」


そのフレーズは普段の俺なら絶対に弾かない様な空気感のフレーズ……おれはどこの引き出しを開けたんだ??


その後もひなとやりとりを繰り返し、じょじょに再現されていくフレーズは、今までになかった雰囲気の曲となった。


不思議とまひるの声にマッチするこの感じ、俺はもしかしたら凄い曲を作ったのかもしれない。


そう思った時、ホテルのドアが開いた。

入って来たかなは何かの袋を落とした、かなもこの曲に何かを感じたのだろう。


「ひな、まーちゃん……何してるん?」

かなは、驚いた表情でてこっちを見ている。


「かな! おかえり!ねぇねぇかなもきいてみ……」

「ひな、流石にそれはあかんよ……」


かなの反応にハッとした。

そう、俺はTシャツとパンツ、ひなはパンツとタオルだけの格好のままだった。


「わー! 夢中になって忘れてたー」

ひなは慌ててパジャマを着た。


「ちょ! 違う、かな!ちがうよ!」


ひなは慌ててかなに事情を説明し、新曲の話からの経緯を話してようやく理解してもらった。


「ビックリしたぁ〜もう2人はそんなとこまで進んでんのかと思ったわ」


いやいや、始まって無いからね!


「まぁ。えぇねんけど、うちの見いひん所だけにしてな?」と言って笑った。


「かなは、アキさんと話してたの?」


「うん、アキさんとベースの情報交換しててん! そう言えば新曲作ってたんやろ? うちにも聞かしてや!」


俺はひな曰く9割くらい再現した曲を披露すると、かなは驚いたようにもらした。


「めっちゃえぇやん! そら服着るの忘れて再現するわ! 」


「ちょっと、かなー!」

ひなはちょっと膨れた。


「あはは、まーちゃん、この曲のベースうちがアレンジしてえぇ?」


「もちろんいいけど、どうしたの?」


かなは自信満々に

「アレンジの考え方みたいなのをアキさんと話してて、ちょっと試してみたいねん」


かなはそう言うと、ノートとスマホを取り出して録音するから俺にコードを書いて欲しいと言った。


俺はもう一度弾き、コードとコードの詳細を書いてかなに渡した。


「なんやこれ、めちゃめちゃ複雑やん」


細かく音を詰めたコードはいつもより大分複雑になっていた。


「構成音を確認すると、アレンジする時に必要な音が見えてくるねんて、メジャー、マイナーの3度以外は今まであんまりコード感出せてなかったやろ?」


確かに、無難にシンプルにアレンジしていたからそうなっている。


「聞いた感じよりかなり複雑やったけど、頑張ってみるわ」


俺はコード感の部分は演者のセンスみたいに思っていたから、かなは自力で打開策を見つけて来たようだった。


「まぁ、アキさん的にはまーちゃんがゴリゴリに入れるタイプだからシンプルになるのは仕方ないとは言ってたけど、この曲なら色々出来そうやなって思って」


確かに、この曲ならベースのコード感がかなり重要になりそうだ。


だけど、新曲は今回のライブでは出来ないだろう。


ライブの事を考え、3人が揃ったので、俺は移動中に考えていた内容を話し、ライブの構想を話し合うことにした。


「間奏で、振り付けかぁ、ええと思う!」


「上半身を維持すればある程度動けるから足で出来る範囲でやってみよ!」


かの伝説級ギタリスト、布袋寅泰もあの暴れまわるパフォーマンスで、音ブレしないのは上半身を固定してるから。 だから俺たちの武器であるクオリティには支障は出ないはず。


こんな可愛い女の子がステージで暴れまわるのは想像しただけでも衝撃的だろう。


残りはステージのストーリー、この演出の構成を纏めればいいはずなのだが……。


「まーちゃん、ストーリーだけどあたしが考えていい?」


全然問題は無いのだが、ひなにはイメージがあるのだろうか?


「構成はイメージ出来てるよ! 明日練習の前にノートで渡すね!」


ここはひなに任せよう。学校でも、考えてから人を楽しませるのが得意だからきっと大丈夫だ。


話が終わるとかなはまた、練習を始めひなは机でノートを書きだした。

かなはアキさんにも相談したんだろう、かなのスラップのフレーズは完成し、精度を高める段階にまできていた。


俺は新曲のフレーズをなぞるように、ギターを弾く。気付けば3人とも夜中までつづけていた。


ひな、かな、俺は本当に一緒に出来て良かったと思ってる。ありがとう。


俺は心の中でそう言ってこの日は眠る事にした。

◯用語補足


・布袋寅泰

元?ボウイのギタリスト。活動休止なので?をつけました。


・コード感

構成音の特色。たとえばマイナーだと暗く、メジャーだと明るくなる構成音またはメロディラインになるが、その違いは1音の位置の違いだったりするので、その音が入る事で空気が変わる。


Fm7だと、3度のマイナーと7度の抜けた感じが入ったFを中心とした音になります。


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