かなとおばあちゃん
おばあちゃんの家は、古い家の香りがした。
俺にとってはかなり懐かしい感じのする作りなのだが、ひなは生まれた時に新築に近い家だったためか、文化遺産を見ている様だった。
「あんたら、かなちゃんのちっちゃい頃の写真みるか? 名古屋の友達やったら、昔のかなはみたことないんちゃうか?」
「みたい!」
「おばあちゃん、ちょっとやめてよ」
かなは止めたが、「こんな時しか見られへんから」と言われ、説き伏せられた様だ。
見たことの無い友達、髪が長く清楚なかなが、写真の中にいる。そうだよな、かなのストーリーは、俺はともかく、ひなも知らない。
かなはちょっと恥ずかしそうにページを早くめくり「はい! おしまい」っと言ってとじた。
「かなって昔から背が高かったんだね!」
「ほんまに、今年はほとんど伸びんかったからよかったわ」
かなは手を水平にジェスチャーした。
「でも、もう髪は伸ばしてもいいんじゃない? 編んであげるよ?」
「髪はなぁ……」
「かなの髪って……」
俺は一瞬伸ばしていない理由を聞こうとし、やめた。
「ん?」
「かわいいよね」
「あはは、ほめても何もでぇへんで?」
俺は、かながショートなのには理由があったんだろうと思う。しかも、それは多分俺やひなか本当は良く知っているはずの何かが。
「ねぇ、ひな、まーちゃん。今日はおばあちゃんと寝てええ?」
かなはちょっと恥ずかしそうに言った。
「いいよ! 久しぶりだしね!」
かなは嬉しそうに笑うと、おばあちゃんをみた。おばあちゃんも嬉しそうだった。
「そうや、まひるちゃんひなちゃん、もう夜も遅いから、はよお風呂はいりや!」
かなはおばあちゃんと入るようで、あんまり待たすのも悪いからと、俺はひなとお風呂に入る事にした。
「まーちゃん、お風呂が深いよ!」
ひなは昔ながらのお風呂にテンションが上がる。深いお風呂も、外付けのシャワーも初めてみたんだろう。
「熱いー! まーちゃん、お風呂が熱いよ!」
そこは設定の問題じゃないのか?
はしゃぐひなが子供みたいですごく可愛い。
するとひなはアカスリを見つけた。
「まーちゃん、これすっごくザラザラ!」
「えっ? ひなアカスリ見たことないの?」
「アカスリ?」
ひなはくびをかしげる。
「ちょっと貸してみて、ほらこうやってこすると、垢かとれるの!」
「すごい、まひる先生やりますな! まーちゃんちょっと背中して!」
俺はひなの背中を擦ると小さなホクロを見つけ何となく優越感にひたる。
「まーちゃんも、やって…あげよっか?」
「お願いしまーす!」
ひなは力一杯擦る!
「イテテ! ちょ、ちょっとひなつよすぎるよ! 撫でるくらいでも充分だから!」
「ごめん、そうなの?」
ひなは優しく洗ってくれ、あったまってからお風呂をでた。
「お先にあがりましたー」
お風呂上がると畳の部屋に、来客用の布団が敷かれ、ちょっと旅行みたいな感じがした。
「まーちゃん、旅館みたいだよ! あたし畳で寝るの久しぶりかも!」
ひなは俺の布団はいり、
「まーちゃん、明日も頑張ろうね……」
と言って、すぐに寝てしまった。
ひな、可愛いなぁ。
なんとなく、俺もひなに抱きつくと、最近の色々な出来事が、安心感で癒された。
ひなもこんな気持ちなのかな?
俺はひなにそっとキスをした。
♦︎
朝起きると、珍しくかなが早起きして、おばあちゃんを手伝っていた。
かなとおばあちゃんの話し声と、なにかを切る包丁の音にどこか懐かしい感じがする。
「おっ? まーちゃんおはよう!」
そう言うと、かなは少しもじもじして、言った。
「今日、朝ちょっとだけおばあちゃんと出かけてええかな?」
お昼の集合時間に間に合えばいいから俺は笑顔で了承した。
「ひな、わたしらはどうする? 現地集合にする?」
「かなは全然大丈夫そうだよね? そうしよっか?」
かなも手でOKマークをつくると、俺たちはライブを予定している江坂に向かった。
ちょっと綺麗でおしゃれなカフェがあり、乙女心?をくすぐった。
最近の俺は女子化が進んでいる気がする。