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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
第2章 バンド作り
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サポートライブ

バンドのサポートギターをした事は何回かあったのだが……この身体でのサポートは色々と困る。


今日はジャンルに合わせて、タイトなバンTに、デニムのホットパンツにタイツ、そしてキャップにコンバースを履いた。


もちろんだけどライブ以外はパーカー、外では更にスタジャンを着ている。


ちょっと鏡の前で一回転!

あれ?わたしなかなかイケてるんじゃない?


メイクも普段より濃いめにしてみた。

俺もなかなか慣れてきたもんだ。


「おっ? まひるちゃんいい感じだな!」

タカさんが楽屋にくる。


「でしょ? 今日は任せて!」


「おっ? 気合い充分だね、今日はアレ(・・)でガッツリ見せてやろうぜ! リハーサルが楽しみだな!」


オレはサムズアップし笑った。



♦︎



タカさんの言うアレ(・・)とは


遡る事昨日のスタジオにて。

12曲を3回通したのだが、緊急のサポートとしては充分なクオリティになっていた。


「ねぇ、まひるさん」

ナカノさんが話しかけてきた。


「H.B.Pのメンバーってみんなそのくらいの演奏クオリティなのか?」


「うーん、メンバーも結構上手いですよ?」


「言い方かえるわ、俺らより上手い? 正直まひるさんはうちのジュンより上手いと思うんだけど?」


「そうですね、音で言えばメンバーの方が丁寧で綺麗だと思います。でも、アレンジやテクニック、パフォーマンスはナカノさんたちの方が凄いと思う」


「そうか、経験値の差くらいか。演奏レベル高そうだな……あのさ、思いつきで悪いんだけど、一回ジャムってみないか?」


ジャムセッションか、フリースタイルでオリジナルやるのもアリだな。 ん?今出来ればイベントでも出来るしいいかも知れない!


「今回サポートの目的って、知り合い増やしたりとかだろ? なんかまひるさんに話しかけるきっかけも出来るかもだしね」



「いいですね! どんなのします?」



「正直俺らの感じ好きでしょ? 重いのやろうよ?」


たしかに、ドリッパーズの機材はハードコア寄りでテンションが上がるものが多い。


俺はとっておきのリフを披露する事にした。

ドリッパーズのアレンジに期待しよう。


早速リフを掻き鳴らしだす、イントロは重いカッティングからのタッピング、そして高速ツインペダルを引き出す!


来た!


Aメロで、ギターは大人しく、スクリームを待つ、Bメロで空気感を作り俺が歌う。サビは2ビートで飛ばしソロだ。


リズムが変わる?

ナカノさんがリズムに変化をだした。


そう来たか、そのスラップを生かしてやろうじゃねーか!


と、ソロが終わると音が止まった。

ん?どうしたんだ?


「Aメロ掛け合おう! Bは俺がコーラスいれるわ! そんでからソロ何回かやって詰めよう!」


ナカノさんがテンションが上がる、

タカさんも、


「ごめん、イントロのバスもっかいやらして、今のにもっと良く合わせられる!」


2回ほど合わせるとタカさんがTシャツを脱ぎ出した。


「アチー、これマジで面白いわ……」


テンションの上がった俺たちは、青汁のCMの様に、


「キツイ、もう一回!」


と2時間アレンジを詰め倒した。


「まひるちゃんにサポート頼んで良かったよ! 明日この曲、MCの後にやろう!」



「そうですね!絶対盛り上がりますね!」



♦︎



という訳で、密かにドリッパーズとのコラボの曲を用意していたのだ。


リハーサルで披露した後は、関係者に話しかけていこう、今後の活動にきっといい影響が出てくるだろう。


「ではリハーサルしますね!」


ホールに目をやると、名古屋の有名インディーズが何人か見ている。


そりゃそうだ、ドリッパーズは他のバンドも気になるところだろう。


曲の通しが始まるとさらに見学者は増えて行った。


ついにあの曲も、見ているバンドの反応は変わらずだった。


内心、少し悔しくなったが、仕方ないだろう。


リハーサルが終わると、イベンターのアスカさんが話しかけてきた。


「サポートのギター、すごかったね!」


「ありがとうございます」


「4月に自主企画でイベントするの?」


「はい、スターリンと、ドリッパーズ、サカナも出ます!」


「サカナもでるんだ? これあたしの名刺、良かったら今度見させてもらえないかしら?」


「是非、」と言ってCDを渡した。

アスカさんは名古屋3大イベンターと呼ばれる一人、運が良ければ田中さん以上の大きなイベントも運営しているイベンターさんだった。


「結構若いのねぇ」


「はい中学2年です!」


「えっ? 中学生? 童顔なんじゃなくて本当に若いのね!」


俺はラインを交換し、対バンの人達と話す事にした。


「君、アスカさんに話しかけられてたね!」


「そうですね、イベンターだから……」


「あの人女の子はあんまり話さないから結構レアだよ?」


「そうなんですか?」


他のメンバーが頷き、しばらく沈黙した。


なんだろう、確かにメンズバンドばかりのイベントか……この業界では良くあるような話だが、もうちょっと裏がありそうな反応だな。


ピピッ


ん?ひなから連絡か。 メールを確認するとライブハウスに着いた事がわかった。


外に出ると、ひなとかながいたので俺は手を振って気づかせた。


「まーちゃーん! 会いたかったよー」


ひなとお決まり的なハグをする。


「今日のまーちゃんカッコいいね!」


「でしょ? ドリッパーズのライブには合うかなって!」


「めっちゃ合ってるとおもうわ! サポートの依頼来るなんてまーちゃんやっぱり凄いなぁ」


「これも、わたしたちの宣伝に繋がっていくからね!」


「次一緒に出る予定あるからええね! もうすぐ時間やろ? ほな頑張ってな!」


「かな、ありがと!」


オープンの時間になり、沢山の人が入ってきた、400人くらいはいるのだろうか?


1つ目のバンドがもうすぐ終わる。

バックステージででいつもと違う、エクスプローラーを抱えた。


ジュンさんの相棒だけど、今日はよろしくね。


おれはそっと呟くと、まだ会った事の無いジュンさんが"ありがとうな"って言った気がした。


そして、ドリッパーズで円陣を組み、ナカノさんが叫んだ。


「今日はガツンとやったりましょ!」


「「オー!」」


SEが終わると、俺たちは後ろ向きになり、暗闇にアンプのLEDが光ってるのが見える。


ナカノさんにスポットライトが当たると


「どーも! ドリッパーズですっ! 今日も楽しんで行ってくださいっ!」


と小栗◯風にナカノさんが言って曲がスタートした。


バンドボーイだらけのフロアは熱気が凄く、拳を突き上げ"オイッ!オイッ!"と言い出した。


曲の流れは完璧だ。

気づけばフロアはモッシュアンドダイブでぐちゃぐちゃになっていた。


これ、ひなとかな大丈夫かな?


ライブも終盤に差し掛かり、ついにあの曲をやる時が来た。


「今日は、みんなうすうす気づいていると思うが、ギターのジュンが入院中のためサポートギターに来てもらっている」


(みたらわかるぞー)

(全然違う美少女じゃねーか!)


とヤジが飛ぶ。


「ははっ! だよな? 実はこのギターのまひるちゃんは、4月に一緒にでるH.B.Pのギターボーカルっ!」


(おぉー! すげぇギターだったぞ!)


「今日は、そんなギターボーカルとコラボした曲をやるからおまえらかかってこいっ!」


曲を始めると一瞬声が止み、それまで以上の盛り上がりを見せた。


ナカノさんとの掛け合いはバッチリ、ドリッパーズのライブは大成功を収めた。



♦︎



俺は時間の都合上、ひなとかなと合流し、帰ろうとしていると、ナカノさんに呼び止められた。


「まひるちゃん、今日はありがとね」


「うん、わたしも凄く楽しかったです」


「次、4月たのしみにしてるから!」


「一緒にまた、盛り上げましょ!」


そう言って拳を交えた。


帰り道、ひなが呟いた。


「今日はすっごく良かった。 まーちゃんがドリッパーズに取られちゃうかと思ったよ」


「ひな、わたしのバンドはH.B.Pだよ」

そう言って俺はひなの手を握った。


帰り道は、さっきまでの歓声が嘘のように静かで小さな耳鳴りが、どこか心地よくかんじた。


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