ライバルと協力者②
ヒロタカさんは返事を待っている様だ。
俺は頭をフル回転させ考えた。
自主企画ってことかな?だとすると集客力が有り、学生の時間帯などで融通が利くスターリンは確かに持ってこいだ。
そしてちょっとヒロタカさんの喋り方が砕けたのも気になった。
痺れを切らしたヒロタカさんは
「ん? 悩んでるんすか?」
「わたしだけではちょっと……メンバーと相談したいです、」
「スケジュールなんかもあるとおもうからいいすよ? というか普段のまひるさんなんかかわいいっすね!」
「えっ? ライブの時はちがう……?」
「最初、ライブ見た時は、ギターが凄すぎて、なんかそんな余裕はなかったっすね。 正直ギター辞めたくなるレベルで」
そう言うと、頭を掻きながら苦笑いになる。
「あはは、でもヒロタカさん充分上手いですよ!」
「そう言ってくれると嬉しいっすね!」
「イベントは前向きに検討しますね!」
「ありがとうございます!」
そういうと、ヒロタカさんは少し目をそらし尋ねた。
「こっそり聞きたいっすけど、俺の今日のギターどうでした?」
「ヒロタカさんの? リズムの安定感や疾走感が凄くいいと思いましたけど……」
「けど?」
「まぁ、こんな小娘に言われてもかもなんですけど、」
「いえいえ、まひるさんは身近なギターヒーローっすよ!」
「あはは、ギターヒーロー! まぁわたし的には、遠慮なく言うなら、コードの使い方は考えてもいいかなって……」
「コード?ちょっと待って、楽屋にきてもらっていいっすか?」
そう言って、俺はヒロタカさんに手招きされる。楽屋に連れられ、ヒロタカさんはギターを手に取った。
赤茶色のレスポールスタジオ、高校生だと大分いいギターだな。
「俺、こんな感じのコードで弾いてるんだけど、コードを変えた方がいいんすか?」
「コードを変えるとはちょっと違うかな、コード進行がスタンダードだから補助コードなんかで色をつけてもいいけど……。それよりはギターの目立つ間奏なんかでは、同じコードでも、人差し指でセーハーしない押さえ方で解放弦のスケールを生かした響きを入れると雰囲気が出るとおもう」
「それだとコードの流れが変わらない?」
「うん、もちろん音の流れは合うように詰めないとダメ、解放を入れるといっても……ちょっとギター貸して!」
俺はギターを手に取り、指が見えるようにヒロタカさんに向けた。
「例えば、ここは人差し指で押さえ切ってセーハー、ここでセーハーしてる指を離し上下は解放。ここも押さえてセーハー」
「どう?」
「マジっすか? 解放の時のコードってなんですか?」
「あー、コードって別に音の構成があってたら成り立つんですよ。今みたいに真ん中ら辺で押さえてても、音の構成が合うなら入れられるから。進行的には同じなんですよ!」
「マジっすか? 目からウロコなんすけど! ありがとう!」
そういうとヒロタカさんが抱きついてきた。
俺は急な反応に少し驚いた。
「あっ、ごめんつい嬉しくて……やっぱり凄いっすね」
ヒロタカさんは照れてるのか落ち込んでるのか、少し顔を赤くし俯いた。
「ギター弾いてるまひるさんは、なんか兄貴って感じっす」
「えっ? 兄貴? 」 そんな感じなのか……
「いやいや、もちろんかわいいっすよ? でも、やっぱりギターヒーローみたいな」
俺は嬉しかった、ヒロタカさんはギタリストとして接してくれて、少しかわいい後輩のような感じがした。
「そうだ、まひるさん!今度、ご飯行きません?」
俺は何故か少し照れた。
俺は別にいいんだけど、"まひるちゃん"としては、男の子と2人でみたいな感じがなんとなく躊躇してしまう。
「あ、デートとかそんなんじゃなくって、ギターの話とかしたいんす! でも2人だとパッとみデートみたいなんで、スターリンのメンバーを連れて行きます!」
ヒロタカさんは察してくれたのか、すかさずフォローした。
「うん、面白そう!そこでイベントの話もしよう!」
「決まり! そしたらそろそろ時間ですよね、今日はライブに来てくれて、ありがとうございました!」
「こちらこそありがとうございます! また是非呼んでくださいね!」
「はい、是非!」
そう言ってヒロタカさんはひなとかなの待つホール内まで送ってくれた。
「まーちゃん何話てたの?」
ひなが気になったのか聞いて来た。
「なんかね、ヒロタカさんが一緒にイベントしないか?って」
「何それ? 楽しそう!」
「でしょ? 今度一緒に打ち合わせしよ?」
「うんうん、雅人も上手くなってるし、あたしももっと頑張ろうっと」
今日は結果的に見に来て良かったと思う、多分これからスターリンとは良きライバルとなって行くんだろうなと俺は思う。
ひなとかなは凄く成長しているけど、スターリンは雅人はもちろんベースも高校生レベルじゃないくらい上手い。ひなやかなにとっていい影響になる事は間違いない。
ま、ギターも上手いんだけどね。
スターリンの集客力や俺たちのホームライブが出来たと考えると、自主企画イベントは集客力の地盤作りがスタートしたんだと思う。
今後の課題は、集めた人達をどうやってファンにするか?もう一つ言うなら、囲い込めるか?が課題になってくると思う。
♦︎
夜、イベントのアドバイスをもらう為、時子さんに自主イベントの話をLINEで話した。
"何ーイベントするの? 面白そう! 4月あたり? タイミング合えばわたし達も出る!"
そういうのは経験が大事!と言ってアドバイスゼロでまさかの返事が返って来たのだった。
いやいや、学生イベントにインディーズトップクラスの"サカナ"が出ちゃうのはダメだろ!
そう思って返信すると、
"面白いって思ったらどんどん取り入れないとファンも面白いと思ってくれないわよ! わたし達が出るなら他のバンドも出てくれやすくなるとおもうし、使える物はどんどん使いましょう!"
思い付きのような内容でも、時子さんは常に2歩先くらいを考えている。
世話してるバンドでコレなら自分たちのバンドでは一体どのくらい考えているんだろうか?
俺は、売れないバンドマンの考え方との差をまじまじと見せつけられた様な気がした。
前のバンドの頃。もし、このどんどん前に進むような発想が出来ていたなら俺たちはもっと上に行けてたのかも知れない、そう考えると今まで俺は何もできてなかったのかも知れない。
昨日からアクセスが増えてますが、こんな感じで書き続けちゃっていいのでしょうか?
とりあえず出来る事をやって行きます。
良かったら感想やコメントなども全部返信させて頂く心構えは持ってますのでよろしくお願いします!