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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
第2章 バンド作り
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学生イベント

本日トリのバンド"スターリン"の機材のセッティングが始まった。


このバンドは、高校3年の同級生で作られた4人組のバンドだ。


基本的にはその日の目玉のバンドがトリを飾る、なので今日はこの"スターリン"が一番の目玉なのだろう。


6曲中4曲がオリジナルで曲、インディーズのツアーバンドとも対バンしたりしてるらしい、学生イベントの目玉になるレベルの高校生バンドであることは間違いない。


自主CD-R、Tシャツなんかも作っているので、あくまでほかと差を見せてファンを増やすために出たのだろう。



気の毒に……。



音のチェックが終わると2曲ほど1コーラスづつ弾いて、問題無ければリハーサル終了だ。


"スターリン"のオリジナル曲が始まる。

他のバンド達がさわぎだす。


「やっぱり上手いな……」

「高校生とはおもえない」

「あのフレーズ耳コピして見よう!」

「すぐインディーズになりそう!」


他の出演者達はやっぱり差を感じたようだ。

各々が一つ抜きでたクオリティに、鼓舞しているようだ。


うちのメンバーは……

「ねぇねぇ、まーちゃん」

かなちゃんが耳打ちしてきた。


かな、どうしたの??


「なんかさぁ、下手ではないんやけど、こんなもんなん?」


雅人が割りこんで

「かなこ、"スターリン"がすごくないんじゃねーよ、正直高校生では大分上手い。誰かさんのギターに慣れすぎて、マヒしてんだよ。」


「俺たちが一番最初だから本気でやりづらくなるだろうな……」


それからの4つのバンドのリハが進み、ほとんどコピーやパンクなどにアレンジしたカバーなどでクオリティも大したことはなかった。


ついに俺たちのリハの番になった。


……ふーん、なるほどね、音響は田中さんがしてくれるのか……


初ライブと言ったので気を使ってくれたんだろう。


「はーい、本日のPA田中です、ではサウンドチェックしていくので、よろしくお願いします!」


「「「よろしくお願いします!」」」


「みなさん、サウンドチェックは経験あるかな?? まぁ、気楽にわからなければきいてくれていいから!!」


「ではドラムからお願いします……」


「各パート、なんかいい音でそうだねぇ」

そういって各楽器のチェックを、終えた。


「次、曲やってもらうんだけど、時間とってるから5.6回は曲を回せるよ!」


ホールでは高校生バンドの人達が野次っていた。


「かわいー」

「頑張ってー」

「好きだー」


内容の雑さにちょっと笑ってしまった。


今日の私達のタイムテーブルは。

カロン

高速パンク

パーティチューン

バラード風

西海岸


の5曲、俺は確認として、カロン、西海岸、バラードをする事に決めた。


最初にカロン。


「すいません、そうしたら1曲目のカロンをワンコーラスやります!」


「カロン?"ねごと"かなー??」

高校生が歌ったりしている。


「1曲目ねー! OKどーぞっ!」


雅人のドラムフィルから短いイントロを始め、その瞬間、高校生達は静かになった。


Aメロが終わりかけてたころ、、


「すげー!やべー」


とめちゃくちゃ盛り上がり出した。

続いて2曲目、3曲目も盛り上がったままリハーサルは終了した。


ステージから降り、物販スペースにゆきちゃんにつくってもらったチラシを置いた。


高校生が話しかけてきた矢先、田中さんに呼ばれた。


失礼しまーす。

と田中さんのいる裏の事務所に入った。


「あー、リハ見たけど、君らヤバいね!」


「いやー珍しいよ! 中学生でこのクオリティが揃うのは! しかも可愛い!」


「順番まちがえたなー、悪いことしたわ……えっと……それだけ!」


「あと、君たちはそのうち普通に売れる! うちもいいイベント組むんで、今後ともよろしくお願いします!」





フロアに戻ると"スターリン"のギターが声をかけてきた。


「こんにちは、"スターリン"のギターのヒロタカです。さっきリハーサル見せてもらったんだけど、中学生なのにギターめちゃくちゃ上手いね! 結構ショックだった……」


「"スターリン"はいいバンドだから気にしなくていいとおもうよ!いいと思った音を出していけばいい!」


「ありがとう、それで……」


そのあとヒロタカさんとギターについて色々と話した。こういった、年下でも上手い、いいと思ったら接点を持って情報を得れるのはすごいと思う。


多分"スターリン"は今後も成長し、シーンを賑わすバンドになると思った。





15時。


ライブハウス"ムンド"がオープン。

スタートは30分後だ。


沢山の人が入ってくる、学校で見た事のある顔も多く、懐かしい気持ちになっていた。


「木下さん! 見に来たよー」

「今日は頑張ってねー」

「ライブハウス初めて来た!」


色々な声が聞こえてくる。

俺はまた、帰って来たんだ、このライブハウスという場所に。


もう、戻っては来れないと思っていた。

俺の音楽がまたここで響くのだと思うと、もう離したくないと思った。


スタートの時間になり、バックステージで3人に声をかける。


「文化祭とは違って、みんな大切なお金を払ってきてくれてる、本当ならお菓子や、雑貨、服も買えたかも知れない。だけど、わたし達の演奏を聴くために、それらを諦めて来てくれた」


「わたしは、それに応えなきゃ行けないって思ってる。それと二人はそれに応えていける実力をつけたと思う」

俺は、メンバーの顔を見る。


「じゃあ、いくよ!」


そう言ってステージに向かった。


今回はMCからスタートする。

初めて見る日に知ってもらうために。


「こんにちは! 今日は沢山来ていただきありがとうございます!


本日のTOPを飾る、ハンバーガーパーティです!


まだ中学生ですが、他のバンドの皆さんに、負けないように演奏したいとおもいますので、よろしくお願いします!」


MCを終えてすぐ、演奏を始めた。

その音は、初めて来る中学生、他のバンドが呼んだ高校生など、まだまだクオリティの高い音に慣れていない学生を掴むには充分だった。


俺はこの世界では反則的な位置になるからもちろんだが、雅人もインディーズバンドのドラムクラスのクオリティだし、かなちゃんがベースなのも良かったのだろう。


シンプルにまとめたベースをちゃんと引いてるから、この玄人向けの楽器を判断できる学生はほとんどいないだろう。


5曲をしっかり弾き終え、俺たちの出番は終わった。


会場の歓声とは裏腹に、バックステージでは次のバンドのメンバーがお通夜状態だった。


「こんなのの後にやりたくねぇよ……」

「順番おかしいだろぉ……」


転換の間、ゆきちゃんの作ってくれたチラシを配り見てくれた人と話す。少し間が空いた時にひなと目が合った。


「まーちゃん、すっごくよかったよ」

ひなが笑顔でそう言った。


俺は今回のライブでの手ごたえを感じていた。


ライブが終わると、田中さんが声をかけてきた。


「いや、正直リハの時のイメージ以上だったよ。 本来ね、僕はライブの後は反省点だったり課題だったりを伝えているんだけど、君達にはバンドとしての次のステップを考えて欲しいと思った。」


「次のステップですか??」

雅人は驚いた様に聞いた。


「そう、まだイメージはしてないかも知れないけど、僕は今後インディーズバンドがしっかり出てくる様なライブを用意したいとおもう。 君達は、演奏力、パフォーマンス力はそういった対バンでも引けは取らないと思うけど、それらを受け入れる体制、更に言えば自分達と近いレベルのバンドと当たった時にどう差別化するかを考えて置いて欲しいと思う」


「差別化ですか……」


「そう、ちょっと難しい話だから悩んだりしたら気軽に相談してくれて構わないよ!

君達の年齢的には焦っても、焦らなくてもいいとおもう。


ただ、もしかしたら君達がファンかもしれない人気のあるインディーズと一緒に出るというのは、その憧れのバンドが君達のライバルになるってことだからね……


色々なバンドに憧れ、憧れたバンドの様にライブをしたいと練習してきたと思うけど、

その次のステップがあると言うのを知ってて貰いたい」


「ありがとうございます!!」


その後、スターリンと田中さんとお菓子を食べながら雑談して、その日は"ムンド"をあとにした。


「なんか田中さんすごかったな、、最初の気楽な印象とは違って色々考えさせられた」

雅人はしみじみといった。


「うちももっと練習しなきゃだなー、スターリンのベースの人が、メンバーすごくて大変だねって! あの人うちより上手かったし、気軽に相談してってLINE交換しちゃった!」


「確かに、スターリンのベースは上手かったね、あそこのベースはすごく良かったと思うよ! 相談しちゃえ!しちゃえ!」


今日の話しで盛り上がっていた最中、ひなにそっと手を繋がれた。


俺はそのまま別れるまで、手を繋いだまま歩いた。


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