俺の音楽ここにあります!
「そうだね、いつも通りやろー」
「うん、僕もそれでいい」
「ほんまやな! って独り言やった?」
みんな同じ方向を向いている。
少し心配だった天気は白く綺麗な雲がいくつかあるだけだった。
俺はギターを手に取りストラップをかける。
そしてボリュームを上げた。
何年も前から夢に見ていたステージでいつも通りのセッティング。
ただ、目の前に広がる景色はテレビの中に入った様に海外の人が沢山いた。
ここでは無名のはずなのにこんなに沢山いるんだな……。
休憩にしている人も多いだろう。
興味本意も沢山いるだろう。
でも、そんな事は関係ない。
カウントが聞こえ、ピックに弦を当てる。
コードやスケール、それぞれ俺が色々な所で会得した感覚やタイミング。
みんなが色々な事に熱中している中俺たちはこれを作り上げて行くだけに掛けていた。
アリーナに響く重低音は俺たちそのものと言ってもいいんじゃないかな?
音が進む速さに合わせて、アリーナの反応がウェーブのように波打っていくのがわかった。
これが俺の夢だったんだ。
ライブが進むにつれどんどんと景色が変わる。一体感を作る事が出来たのだろうか?
すると、またあの声が響いた。
「ねぇ、今……楽しい?」
あぁ、楽しいさ。そりゃ俺の夢だからな!
「夢? でもいつもと変わらないんでしょ?」
する事はね? でも、こうやって初めて見る人や今後日本でも動画が配信されたり、関係のある人みんなが見てくれていると思うんだ。
「そっかぁ、すごいね……流石だよ……」
うん、みんなと出会っていなければこんな事は出来なかっただろうな。
「それは、わたしでもできるかな?」
君はまさか……まひるちゃん?
「そう……もう、時間がないんだよ……」
そっか……。
「やっぱり恨んでる?」
いや、ライブで終われるなら本望さ!
正直、こんなステージに出れる機会までもらえて感謝しかないよ。
「身体もギターも違うけどいいの?」
そうだな、これが俺か? って言われたら疑問だよな? 愛用のポールリードスミスでも無いし……。
でもさぁ、なんて言ったらいいのかな?
全部違うんだけど"俺"っていうか……
"俺の音楽ここにあります!"
って感じかな?
「そっかぁ、わたしには無理だなぁ」
俺と同じにするのはね?
「やっぱり……」
だけどさ、何をするにしても"自分"ってあるんじゃないかな?
憧れの人だったり、なりたい人だったりはあると思うけどその人の"自分"までは知ることは出来ないと思うんだよね。
「"自分"?」
そう、どんな状況でも挫折したり、諦めたりだったりでもいいと思う。それも何処かで"自分"が決めた事。俺だって諦めまくってるし、カッコ悪いくらいわけもわからずしがみついてるし。
でも、そういった見えない部分が一番響くんじゃないかな?
「そっか……そしたらわたしも足掻いてみるね、それが成功するかも恩返しになるかもわからないけど"自分"がやりたいから……」
まぁ、よくわからないけど頑張れよ?
あとありがとうな?
・
・
・
俺の意識がはっきりしていたのは、このライブを終えステージを降りたところまでだった。
♦︎
ピコン、ピコン、ピコン、ピコン
ん? なんだこの音。
白い天井? 病院なのか?
身体が重いなぁ……ライブのあと倒れてしまったのだろうか?
でも、最後って言っていたのに……
本当に長い間ありがとうございました。
この作品は自分が初めて長編を書いた作品で、音楽を通じて色々な事を物語に出来ればと思い綴りました。
途中なんどもエタりそうになり、間が空いた時期もありました。
それでも、こうして最後まで書く事が出来たのは沢山のメッセージをくれた方々やコンスタント残るアクセスなど色々と応援頂いた方々のおかげです。
長い間本当にありがとうございました!
少ししてからエピローグを作成しますのでまた良かったらよろしくお願いします。