3度あがるかも?
昨日はひなとの電話で久しぶりにまったり過ごす事が出来た気がする。人間たまにはこういう日もないとね!
今日も学校が終わると怒涛のスケジュールラッシュ、4人で事務所に向かう。
今日はフラットさんよりスケジュールの相談を受ける日になっている。キャッキャ話しながらスタジオに向かう俺たちは普通の女子高生にしか見えないだろう。
「なあなあ、最近人気のタピオカ飲まへん?」
「あー! いいねー、駅前のが美味しいらしいよ!」
「僕はまだ飲んだ事が無いから飲んでみたいな」
おいおい、みんな中々女子高生してるな。
「まーちゃんもはやくいこ?」
「あ、うん」
なんだろ、昔からあるような気もするがナタデココみたいなもんか? タピオカミルクティまあまあな値段がするんだな。
「おいしー!」
「そんなに甘く無いのがいいね!」
「タピオカに甘さが付いてるのかー」
事務所のある駅の駅前のタピオカ屋さんではしゃいでいると。
「おいおい、どこの女子高生かと思ったらおまえらかよ」
「リクソンさん!」
「うちら女子高生やしねぇ〜!」
「まぁ、間違ってはないわな」
「どういう意味や? リクソンさんもJKすきやろ??」
「おまえみたいにうるせーのは勘弁だな」
「なんやてー」
今日はリクソンさんも参加する事になっていた。かなはもう自然にリクソンさんと話せるようになっていて、あの頃が少し懐かしくおもえた。
「ところでおまえら、ノイジーフェスでるんだろ?」
「そうですね、出ますよ? フラットさんも俺すげーってなってました」
「普通にすげーな。ってかあいつそんなに喜んでたのか……意外だな……」
「意外なんですか?」
「まぁ、昔から出来て当然スタイルだからな……そんなフラットはあんまり見れないぞ?」
俺は以前のフラットさんとリクソンさんのやりとりを思い出し、少し不安になった。
「でもあいつがそんな大事な時期に俺を呼んだって事は何か考えがあるんだろうな」
かっこいいはずの雰囲気の中リクソンさんもさりげなくタピオカを買って飲んで居たのが少し面白かった。
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「オッケー! 全員揃ったな!」
事務所に全員が揃うとフラットさんはハキハキとそう言ってホワイトボードの前に立った。
「今回、西田さんとは擦り合わせているけど、これからの"ハンパテ★"について共有しておきたいと思う」
いつになく真剣なフラットさんの雰囲気にみんなは怖い先生の授業のように集中していた。
「まず、3カ月後のノイジーフェス。手前のテクリハなんかも含め5日間くらい滞在予定だ、だがそれまでプロモーションも兼ねて7本ライブを入れている」
「3カ月で7本ならそんなに多くもないねー」
ひなは俺に囁いた。
「まぁ、ライブ前後の取材などの打ち合わせもあるから学校をなるべく休まない様に考えると限界だろう」
なるほど、ノイジーのステージを考える時間も必要だし中々忙しいかもしれない。
「それで、そのあとが肝心だ。ネット動画やテレビ、インターネットの記事や雑誌関連でかなり打ち出しつつ取材をこなす事になる」
「えっと、フラットさん。うちらノイジーフェスに出た後に取材があるん?」
「あぁ、事後の取材を受けられる様に多少は開けているがこのタイミングでガンガンメディアに出ておきたい」
なるほど……。出るだけで有名になるわけじゃなくそこをフォローする事で更に知名度を上げていくのか……。
「そこで、出演の2カ月後。メジャーレーベルと連携しデビューアルバムをだす!」
「えぇーっ!?」
「そんな話全く聞いてへんよ?」
フラットさんは少し笑うと
「だっておまえら移籍するわけじゃないからな!あくまでマネジメントはうちがやるからほとんどの話は付けてある。意思の確認はしたはずだが?」
マジかよ……まぁ、確かに意思の確認はされてはいるけど経過はいきなり発表かよ。
「そうですけど……」
「で、それからリリース直後今のところ3本の主要音楽番組に出る予定が決まった」
「そんなにガンガン決めていくの??」
「すまない、その件だけど僕から話すよ」
そういうと西田さんが口を開いた。
「今までは相談しながらスケジュールを決めてきていて、一応うちの方針でもあったのだけれども今回のイベントは一つのチャンスだと考えているんだ」
「でもそれとフラットさんが決めていくのはちゃうんちゃいますか?」
「いや、テレビなんかのメディアではこういった決定でのスピード感がかなり重要になってくる。特に出始めの時はね……うちとしては今後その辺りを臨機応変に対応して、なるべく君たちに決断するコストをかけさせない様にすると決める事にした」
なるほど、確かに色々なバンドが出たい中すぐ判断してもらえると印象が付いている方が有利だ。
「最善と考えこの様にしたのだけど、もし納得出来ないのであれば言ってくれてもいい、僕も、フラット君もなるべく君たちの意思を反映しているつもりなんだ」
確かに、どの件も反対する様な内容ではないものだった。出来る事を最大限にしていかないといけない。そう、俺たちはアーティストなんだ。
そう、思ってメンバーの顔を見渡した。みんなそれぞれ納得した表情に俺は安心した。
「そうですよね、ノイジーフェスわたしは今まで一緒にやってきたメンバーを信じて成功させます!」
こうして俺たちの怒涛の3カ月がスタートした。