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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
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新たな扉

メンバーの顔を見てから、事務所のドアを開ける。


小さな部屋にまだ3人は座って話している様だった。


西田さんは少し微笑んでこっちを見る。

俺は少し後押しされたような気になった。


「あの……」


くたびれたソファからフラットさんが立ち上がって後ろを向く。


「おせーよ」


ん??


「あ、君らの? 意思が? 定まってないから? 演技して? 待ってたのに?」


「えー?そうなん?」

かなは打ちごろの球を空振ったような顔になる。


演技?

嘘つけ! 思いっきり私情挟んでたじゃねーかよ。


「あー、なんだろ? これくらいで逃げる様ならこれからやっていけないし? プロデュースする身としては??」


明らかにいつものフラットさんと違って、なんか分かりやすい。


「ふっ!」

我慢できなくなったのか西田さんは吹き出す。


「西田さん!」


「でもフラットさん代理店嫌いですよね?」


ちょ、サヤ。君に空気を読むことは求めてないけど、今だけは読もう!


「嘘はついてない。まぁ、何というか、中日と巨人みたいなもんだな」


「阪神じゃないんだ?」

サヤは追い討ちをかける。そういえばサヤは大阪に居たんだよな。


……。


「あーもーう、君黙っててくれるかな?」


サヤはハッとした様に驚き、目を潤ませた。


「俺が代理店嫌いなのは本当。だけど、"ハンパテ"を作り上げてきたメンバーがもう1人いたことくらいわかってる。ササミや唯さんがその意思を引き継いでくれてる事もね」


フラットさんの口調が徐々に戻って行くのがわかった。


「タキオさんの事……」


「そう、ハンパテにはデザインやブランディングにもしっかり取り組もうとしている意思を感じる。他のインディーズバンドと一番違うのはタキオさんや、リクソン、俺や唯さん。他にも色々な人の武器をしっかり取り込もうとする姿勢と、それを良しとする西田さんだと思う。だから……ごめ…ん」


ん?


「いや、ダメだな」


そう言うと、フラットさんは正座し、西田さんの方を向き頭を深く下げた。


「すいませんした! 皆さんの意図も、事情も想いもわかってて、わかってて……」


俺はこの時、初めてフラットさんの素を見た様な気がした。


いつも何考えているのか分からず、空気を作りながら冷静に物事を進めて行く。正直無敵のプロデューサー。


だけど、この時の雰囲気は1人の人間としてのフラットさんを感じた。


「いや、僕はフラットリクソン時代を知ってるからね……ある程度は予想していたんだよ……。でも、"ハンパテ"のみんなはちゃんとタイミングを作ってくれたみたいだね」



「フラットさん、唯さん、西田さん。これからもよろしくお願いします!」


フラットさんは笑顔になると

「そうと決まれば、みんなでアッと言わせてやろう!」



♦︎



その後事務所内ではフラットさんを中心にプロモーションの方向性が熱く討論された。


「だからぁ、それじゃこいつらを活かしきれないんだって!」


「でもね、それはエゴです!ブランディングとしてはこの子達の武器を最大限に打ち出すべきです!」


相変わらず、フラットさんと唯さんはぶつかっているのだけど、西田さんも微笑んで見ている様に、以前とは違い確執はない様に感じた。


「でさー、お前らはどっちなんだよ? まひるのギターみる限り限界に挑戦してる様に感じるけど?」

「だってまひるちゃんは……」

「ん?」


そういえば、唯さんは、俺が転生してるのに気づいているんだっけ??


「わたしは、また、色々な凄いギタリストと同じステージにみんなと立ちたいかな?」


あれ? 売れなきゃいけないんじゃなかったっけ? 今俺……。


「そうなのか?」

「それは僕も初耳だね。てっきりまひるちゃんはロックスターになりたいのかと……」

「まーちゃん、そうなの?」


「え、あ。うん」


ふと漏らした言葉がこんなに反応されるとは思わなかった。


「ほんま、そういえばまーちゃんがバンドでしたい事言うの初めてちゃう?」

「うんうん、いつも良い方向にって考えてる感じだよねー」


「まぁ、ジョニーに女王と言われたギタースタイルだしなぁ。オッケーそれならこれに連絡してみろよ?」


そう言うとジョニーの連絡先をメモし、俺に渡した。


「時差があるから普通に出ると思うぞ? 国際電話だから長電話にきをつけろよ?」


フラットさんは一体誰に連絡させる気だよ。

みんなの見守る中、電話をかける。


プルルルル、プルルルル

「hello?」


やっぱり英語じゃねーか。

「ハロー、アイアムまひる……」


「あーなるほどね……ちょっと変わって?」


そう言うとフラットさんは電話を取り上げて英語で話し出す。海外で活動していたから話せるとは思っていたのだが改めて凄いと思った。


2分ほど何かを話してから俺にニヤニヤしながら電話を渡す。


「ヒサシブリダネ!」


えっ、この話し方は……

「えっ? ノエル??」

「ソダヨー! ミスターフラットカラキイタヨー」


ノエルを懐かしく思い、話が弾む。

ふと、盛り上がりを見せた時ノエルはおもいがけない話を持ち出した。


「マヒル、Nozy festival二デテミナイカ?」

「ノイジーフェス?? わたしらで出れるの?」


ノエルは少し間をあけると

「アニキ二イエバ……デレルヨ……メイビー」


ノイジーフェスといえば、世界的なメタル、ハードコアの祭典。ジョニーってそんな繋がりがあったのか!

まぁ、コールドプラン。あってもおかしくは

ないのか……。


事務所内では、話している内容が気になるのか注目が集まった。


俺は電話を伏せて、みんなにつぶやく。

「ノエルがノイジーフェスに出ないか? って……」


みんなの驚いた顔とフラットさんのニヤニヤが忘れられない瞬間だった。


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