フラットさん
「西田さんが呼んだ音楽プロデューサーってリクソンさんの元相方なんですか?」
リクソンさんは少し苦い顔をすると
「そう、俺がVIPスタジオに入るまで一緒にやっていた……というか……な」
なんだかすごく裏がありそうな言い方だな。
するとユージさんは
「歳は同じですが、リクソンさんの師匠みたいな存在なんです!」
「バカっ、ちげーよ」
「だってあの頃はフラット・リクソンでメインフラットさんだったじゃないですか!?」
「そうだけどさぁ……」
フラット・リクソン?
なんか聞いたことあるような……
「インディーズのエンジニアといえば、東京のアンドリューさんか名古屋のフラット・リクソンと言われて……」
「もう、マジでやめろよな……そんなに有名じゃねーよ……」
「まぁ、とにかくすごい人なんです!」
「多分、お前のイメージとかなり違うぞ?」
「そうなんですか?」
「あぁ……」
元エンジニアで、今は音楽プロデューサー。
色々凄そうなんだけどな……まぁ、そんな人に曲を良くしてもらえるならそれは有り難いな。
♦︎
しばらくして、サヤと合流しフラットさんと待ち合わせの場所に向かった。
待ち合わせ場所はオアシスという、開放的なカフェ空間。
俺たちはオシャレなドリンクを頼み待つことにした。
「ごめん、俺ちょっとトイレ行くわ」
リクソンさんは何処か緊張している様子で、さっきから何度もトイレに行っている。
「なぁ、まーちゃん。リクソンさん大丈夫なんかなぁ?」
「まぁ、元相方なら仕方ないんじゃない?」
ユージさんはワクワクしながら
「早く会ってみたいですね!」
しばらくして、スーツに無精ひげのダンディな外国人風の男がこえをかけてきた。
「ハンパテのメンバーの方でしょうか?」
いかにもやり手の雰囲気に、漂うスタイリッシュさ。
まさかこの人がフラットさん?
まぁ、名前がフラットさんだし、ハーフというのは納得だ。
そしたら純日本人のリクソンさんは……やっぱり憧れてリクソンにしたのか?
「もしかしてフラットさんですか?」
「はい、今回シーサイドレコーズに依頼を受けました」
確かに、元エンジニアとは思えない佇まい。
この人が俺たちの……。
早速ドリンクを頼んでもらいリクソンさんを待つ事に。
「ユージさん! 思いの外ダンディなイケメンでしたね!」
「ほんとに! リクソンさんの言うようにイメージと大分ちがいましたね!」
入れ違いの様に、20代くらいの美少女魔法使いのアニメTシャツにエプロンのお兄さんがドリンクを持ってくる。
「おまたせしましたー」
「あれっ? フラットさんの分もう来たの?」
まだ本人来てないんだけど……
するとリクソンさんが帰ってくる。
「こちらの方のドリンク下げて宜しいでしょうか?」
そう言ってリクソンさんのドリンクを下げようとする。
「ダメです! 今戻ってきてます!」
すると、リクソンさんは、
「お前何やってんの?」
「いや、この人がドリンク下げようとするから……」
「まひるじゃなくて、お前だよ」
「お、お客様〜?」
明らかにふざけ口調のお兄さんに、リクソンさんがキレそうだ。
「俺がわからないわけないだろ?」
「っもう〜。リクソンは相変わらずノリ悪いんだから!」
「えっ?」
リクソンさんはため息をつくと、
「こいつだよ……」
「はい! 俺、水野です!」
「水野さん?」
「こいつが、フラットだよ」
「あれ? さっきのイケメンは?」
「こいつの仕込みだろ」
どんだけ手が込んだ嫌がらせだよ……。
「いやいや、若すぎないですか?」
このお兄さんはどう見ても20代に見える。
「俺と同じ年だよ」
「っもう〜歳までバラしちゃって〜」
という事は本当にこの人がフラットさん??
「っいやぁ〜噂通り! 美少女たんですね!」
あ、あぁ……これはリクソンさんとコンビだったのが奇跡の様なキャラだ……。
「で、なんでうけたんだよ……」
「っだって? 美少女って言うし?」
に、西田さーん!
この人ダメです!
「っまぁ、よきよき。音源きいたよ」
い、一応すごい人なんだよな?
「あ、ありがとうございます」
「っまぁ? 仕事だし?」
やっぱりダメな人です!
「それで、どうでした?」
「うーん、中途半端? リクソン何やってんの?」
「何がだよ。"ハンパテ★"いいだろ?」
「ハードコア、メタルな重さに、軽いポップな歌声。まぁ、目新しいよね……」
「それだけじゃねーよ、演奏のクオリティは群を抜いているだろ?」
「確かに上手いね。 でも、上手いのは当たり前じゃない? 確かにガールズバンドで、ここまでバックが重いのはいいけど普通にそのまま纏めるとか……仕事する気あんの?」
「このミックス、コード感、世界観どれも一流クラスの音源にしている! 手は抜いた覚えは無い!」
珍しくリクソンさんが感情的だな。
まぁ、フラットさんはそれにしてもいい過ぎだ。
「一流ね……だから何度も言ってんだろ? 最善をつくした? 何のために? そんなの練習したって言ってるバンドマンと変わらねーよ。おまえは何がしたいんだっけ?」
フラットさんはこっちを見る
「き・み・も! リクソンにだけ言ってるわけじゃないよ?」
何? この人超喧嘩腰! リクソンさんが優しく見えるレベル……というか、この人の所為でリクソンさんの仕事スタイルがこうなってるのか?
「別に売れ線書けとは言ってないよ? 自分の理想はなんなのかをはっきりさせて掘り下げてって事。何かしたい事があるから俺を呼んだんだろ?」
「はい……シーサイドを事務所としてメジャーレーベルと契約したいんです」
「ほう……」
フラットさんは、一瞬無表情になる。
「なるほどね……じゃあ、リクソンやめるか!」
「ちょっと! なんでそうなるんですか??」
「だってこいつは自分の好きな音を録る為にメジャーを蹴ってんだぞ? 君たちの目的にはいらないだろ? えっ? 何? いるの?」
俺は説き伏せられ言葉が返せずにいると、かなが口を開く。
「さっきからなんなん? うちらはシーサイドの人やリクソンさん達と音楽作りたいから移籍せぇへんのやで?」
「それで? それならメジャーに行かなければいいだろ?」
「それは……」
「ほらな? シーサイドは俺にいくら使ってるか知ってるか? 1年で2000万だぞ? おまえらのわがままな希望を叶える為に、いい大人が可能性にかけてんだよ」
「フラット……やめろ……」
「リクソン、何してでも売れたい、食って行きたい奴はいくらでもいるんだ。おまえが一番良く知っている筈だろ?」
「あぁ、だが俺は"ハンパテ★"なら出来ると思っている。だから、俺は"ハンパテ★"に声をかけたんだ」
「リクソン、おまえは"ハンパテ★"なら音楽の力で、回りのメンバーと一緒にメジャーレーベルの人に売り込みだけさせるだけの力がある。そう言っているんだな?」
「あぁ。正直おまえの事は嫌いだ。だが音楽プロデューサー"フラット"の力も借りたい」
フラットさんは、口角に力を入れると
「リクソンはこう言っているが、お前達はどうだ? 正直俺も金を貰う以上、出来なかったじゃ済まされないんだが?」
正直リクソンさんが、力を貸して欲しいと言うとは思っていなかった。だけど、この人は多分それ程の実力者なんだろう。
「うちも、フラットさんは嫌いや。せやけどリクソンさんが言うならフラットさんの力を貸して欲しい」
かながそういうと、俺たちは頷いた。
「ははっ! リクソンはともかく俺も初対面で中々嫌われたな……」
フラットさんは少し目を瞑る。
「はーい! オッケー! 水野くんに戻りまーす!」
えっ?
「ええーっ!」
「まぁ、こう言うのって一体感大事じゃん? お揃いのTシャツ持って来たからあげるよ!」
そういうと、着ていたアニメTシャツと同じものを俺たちにわたした。
俺たちはその場でポカーンとなった。
リクソンさんは横に目をやり、
「こういう奴なんだよ……だから苦手なんだよなぁ……」
「リクソン、仲間はずれにされたと思った? 安心して? みんなの分あるから!」
「ちげーよ!」
「リクソンさん、フラットさんヤバイっすね……」
「ごめん、エプロンは買って無い……」
ユージさんもあっけにとられたのか棒立ちになっていた。
この人本当に大丈夫なんだろうか?
本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!
もう少ししたら更新がもとにもどります!
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