ハードコア、メタル
俺のなかで、新曲の意思が固まった。
次の日、かなとサヤにもその事を伝えると、二人は快く承諾をしてくれる。
「今までで一番ハードなのつくるんやろ? そんなん反対するわけないやん!」
「僕も賛成。今までに無い凄い曲にしよう」
「二人ともありがとう、曲はひなと作ってみるから心の準備しておいて!」
二人は笑顔でサムズアップする。
後は、西田さん達にも伝えないとな……。
連絡を入れると、週末全員で打ち合わせることになった。
♦︎
それから週末までひなのうちで曲を作る事になった。
「まーちゃん、新しい曲だけど……」
「うん……」
「ハードコアとメタルってどう違うの?」
そうか……そこかぁ。
「ひな、実際歪みの音だったりテクニックだったりは近い物があるよね」
「うん……」
「実際は、思想だったり背景だったりが関係したりしているんだけど」
「思想? それって」
「そう、ハードコアはハードコア・パンクと言って、パンクの派生なの」
そう、明確な違いとしては労働者階級の反骨心だったり、世界平和的な話などの思想的な話だろう。ただ、音楽的に言えばノリ方などのリズムが違うというのが区切りなきもする。
まぁハードロックよりのオールドスクールだったり、パンクロックよりのニュースクールだったりある訳だけど、正直日本ではあんまり関係ない。
俺はひなに簡単に説明する。
「音楽ってそんなに政治的な思想まで関係あるんだ?」
「うん、やっぱりみんな何かを変えよう、伝えようとするのが音楽だからね!」
「そうなんだ……なんで世界は争うんだろう?」
「わたしは、人それぞれの解釈でいいと思うけど、それぞれ育ってきた環境が違うからじゃないかな?」
「環境? お金持ちで生まれたか貧乏で生まれたかみたいなこと?」
うーん、この話は難しいけど。
「それだけじゃない、多数派や少数派、それぞれの目線では違う事もあるんだ」
「なるほど……難しいね……」
「わたしは、今見えている考えを曲にして少しでも共感されたり、反発されたりするのがいいかな……」
ひなは何かを理解したように言う。
「わかった、ハードコアやメタルを入れたい理由ってそういうこと?」
「うん、自分の考えや思いを全力で出したいんだよ」
「わかった! あたしも表現する!」
「うん! それがいいと思う!」
それから、俺たちは曲を作り続けた。
感情を詰め込むように、音選びを繰り返し形を作る、西田さんと打ち合わせする頃にはある程度の形が出来上がり、ひなのパソコンに曲を入れて持っていくことが出来た。
♦︎
久しぶりに会う西田さんは少し元気が無い。
山野さんまで来ているのに違和感を覚えた。
「みんな揃ったみたいだね」
「はい、デモ作ってみたんですけど……」
「うん、聴いてみようか!」
そう言って音源を流す。
「やばっ! めっちゃ重いやん! 」
「流石まひる、これはガールズバンドではまずいない。声が合っているのが凄い」
メンバーの反応は上々。
だが、西田さんは……
「正直、凄く考えられているのはわかる」
「ダメ……ですか?」
「ダメじゃない……」
「えっ……じゃあ何が?」
「ちょっといいかな?」
西田さんは、息を飲みゆっくりと言った。
「君たちに、メジャーからオファーが来ているのだけど、どうしたい?」




