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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
154/185

吹っ切れた

受け取った手紙はアルファベットが見えた。


「ノエル、ありがとう……」


手紙にはこう記されていた。


"兄貴は知っている"


単純に俺でも分かる英語だった。

『知っている』?なんのことだ?


俺たちはスタジオに着き、一度合わせた。

いつも通りの安定したクオリティ。アレンジもしっかりと詰められている。


「何が違うんだろう……」


ジョニーと演奏していたかなとサヤは明らかに雰囲気が違う。それどころか、ひなとかなのグルーヴが噛み合っていない様に感じた。


「やっぱり、まーちゃん居ると安心してまうなぁ……」


「やっぱりまーちゃんとしたく無いんじゃん」

ひなはかなを睨む。


「ひな、それはちゃうで。でも、うちら結構弾ける様になったやん? サヤさんは会った時から上手いけど……」


「だからジョニーみたいなトップアーティストとやりたかったんでしょ?」


「ごめん、正直絶対違うとは言われへん……」


「やっぱり……」


なんだなんだ? かなは何か思う所があるのか? それと、ひなはやっぱりかなに疑問を抱いている。


「かな、何か思う所があるんだよね?」


「うちもよくわからへんけど……ずっとまーちゃんの背中を追いかけてきたって言うんかな? それがやっぱりつよいんよな」


「どういう事? わたしに影響うけてる?」


「まーちゃんの完璧なイメージがうちも完璧って思うって言うか……」


少し空気が重くなって来た時、サヤはギターをならした。


「サヤ?」

「まひる、ノエルの手紙……」


「うん、ジョニーは分かってるみたいな内容だったよ……わたしは嫌いだけど、もしかしたら何かあるのかもね」


「そう……」

そう言うとサヤはクリーントーンで、ギターを鳴らした。


どこか懐かしいコードの進行。

なんだっけこの進行?


考えていた矢先、ひながドラムを叩きだした。


(初めてコピーした"ねごと"のカロンだ)


すかさず俺も入るとかなも入った。

以前コピーした時とは比べ物にならないクオリティ。サヤも合わせようとしたけど曲を知らない様だった。


かなも、ひなもそこまで覚えていないんだろう。だけど不思議とそれぞれがしたい事がわかる。


俺たちはこんなに成長していたんだ!

演奏が終わると、サヤは驚いた様に言った。


「この曲何??」


「"ハンパテ★"が初めてコピーした曲だよ」

「懐かしいなぁ! あの時のまーちゃん、なんでこんなに弾けるんやろ? って思ってたけど、こんな感覚やったんやなぁ〜」


「うんうん! かなの気持ちすごくわかる! あの時必死だったもん」


そっか。 もう、みんなここまできてるんだ。

ジョニーの言う"知っている"は俺が天才ではないと言う事なのかもしれない。


「ねぇ、今の感覚で私たちの曲もう一度アレンジしない? かなや、ひな。サヤの思う音。自由にだしてみてよ?」


「えっ? でもイメージが……」

「3人はもう自分の音、分かってるよ!」


それから俺たちはアレンジをし直した。

深夜を過ぎ、もう一度まとまった頃には朝日が顔を出していた。



♦︎



フェス当日。空は青く澄んでいて、絶好のライブ日和となった。


少し肌寒い中、湿度が心地いい。

若干寝不足の俺たちには丁度いいかも知れない。


テントに着くと色々なアーティストと挨拶を交わしたり、出店のご飯を持って来てくれたりして、お昼過ぎの出番が来るのを待った。


「ライブ……お客さんくるかなぁ……」


ひなが小さく呟いて不安な顔をみせる。

「きっと大丈夫……」


自信なんて微塵もなかったけど、俺はどこか清々しい気分でいる。


やれる事はやった。

ただ、それだけだったけど今までに無い自信が生まれていた。


ライブ直前ステージから覗く。

3000人くらいだろうか?2〜3割程度入っている。


「殆ど埋まってないよ……」

「何言うてんねん、過去最高やんか!」


そもそも埋まるなんて思ってなんかいない。

かなの言う通り、過去最高人数を誇りに思おう。


「さぁ、いくよ!」


俺たちはステージに向かった。

4000人近く、さっきよりは大分増えたかな? 充分! 最高のステージにしよう!


ひながSEを流し、ステージに立つ。

お昼過ぎの夏の熱気が火をつけた。


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