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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
152/185

存在感

ノエルのスペシャルバンド? まさか前夜祭でジョニーと喧嘩するつもりなのか?


「ノエル……なんでわたし?」


「君のギターはスペシャルだよ、俺はそう感じた」


ジョニーとノエル。

この2人の兄弟を中心としたコールドプランは問題発言の多い兄とは裏腹に堅実にバンドをまとめ上げてきたノエルの力が大きいと思う。


そんなノエルは俺を認めてくれていた。


「わかったよ、一緒にやろう!」

俺はそう返したが、西田さんは伝えてくれなかった。


だが、ノエルは簡単な日本語がわかるのか、

「マタオヒルニアイマショウ」

と言うと、その場を後にした。


西田さんは少しため息をつき、言った。


「まひるちゃん、ノエルとやる気かい? かなやサヤと直接闘う事になるけどいいのかい?」


「西田さん、闘うってそんな……部活でも違うバンドだった事はありますし……」


「それはそうなのかも知れないけど、ジョニーとノエルは確実に勝ち負けをはっきりさせようとすると思うよ?」


「西田さんは反対なのですか?」

「あぁ、正直反対だ。時子達とだけ一緒にしてくれた方が良いと思っている。 だけど、受けた以上は任せるよ、ただ拗れる可能性も頭に入れといてくれよ」


西田さんは少し諦めた様に言った。



♦︎



お昼近くになると、出演者や関係者がほとんど揃った様だった。


Bステージでは、アーティストが集まり主催による挨拶が始まる。


(本日は……)


挨拶と共に、これからのスケジュールや施設、前夜祭や本番の説明が行われた。


「なぁなぁ。まーちゃんとひな、ノエルとやる事になったんやろ?」


「うん。やっぱりノエルはジョニーを意識してるみたい!」


「やっぱりそうなん? ジョニーも何だかんだで意識してるみたいやで?」


「前夜祭、楽しみだね!」

「せやなぁ、今日はお互いがんばろ!」


やっぱり問題ないだろ? かなも気を使わず気楽に楽しめそうでよかったじゃねーか!


開会式みたいなものが終わると、ひなとノエルに会いに行くと懐かしい人に会った。


「小田さん! お久しぶりです!」

「うん、久しぶり!」

「覚えてくれてたんですか?」

「もちろん!」


そう、ひなが入ったばかりのときのライブに出ていた"マッドウィンプス"の小田さんだった。


「君たちもノエルに呼ばれたクチ?」

「えっ? 小田さんもですか?」


「僕と言うかベースのユウがね! 僕は前夜祭はみんなで歌うやつだけだよ!」


小田さんが居た理由は直ぐに分かった。

帰国子女の小田さんは通訳としてついてきていたみたいだ。


「待たせたね! 練習に行こうか!」


ノエルは気さくにそう言うと、練習に向かう。やっぱりコールドプランの曲をやるのか?


「これでメンバーは揃ったね!」


スタジオに着くと、ひなはやっぱり落ち着かないみたいだ。サヤほどでは無いけどただでさえ男の人が苦手なのに、個性的なメンバーかつ外国人1人。俺でもちょっと人見知りする。


「曲は何をやるんですか?」

「TOOLをやりたいんだけどどうかな? 知ってるかな?」


TOOL、コールドプランにはないヘヴィな感じだけどこのメンバーを考えたら確かにいいかも知れない。


まぁ、ひなは知らないだろうな。

だが、まさにスペシャルバンド。ノエルの纏める力、ユウさんの5弦ベースも相まってハイクオリティなカバーが完成した。


「凄い完成度!」


俺たちは負けない。そう確信できる音だ。


「"ハンパテ★"以前にもましてうまくなったね! これは鳥肌立ったよ」


小田さんも大絶賛。ジョニーがどんな曲で来たとしても負ける気がしない。


その後も少し練習すると、俺たちは前夜祭の準備を終えた。



♦︎



夕方になり前夜祭が始まる。

アーティストや関係者などが集まっただけなのだが、さすがはフェス。


コンパクトにアレンジされたステージはそれでも500人は入る規模。これは普通にライブだな……。


「まひるちゃん!」


後ろから懐かしい声が響いた。


「時子さん!」

「まひるちゃん、コールドプランと一緒に出るんだって?」

「はい! ノエルが誘ってくれて!」

「かなちゃんはジョニーでしょ? 西田さん心配してたわよ?」


「そうなんです……」

「まぁ、でも頑張ろう! わたしも出るから楽しみにしてて!」


「はい!」


そうこうしていると、ノエルが走ってくる。

「メリル! コノT-shirtキテクダサイ!」

「メリルノーノー! マ・ヒ・ル!」

「ゴーメンネ! マリル!」


発音しにくいのかな?

ノエルは黒いイベントTシャツで揃えて出るという事だろう……。


前夜祭が始まると、それぞれのバンドが好きな様にセッションしている。


意外と緩い雰囲氣だけど、流石はメジャーバンドたち、それぞれ楽しませる工夫がされていて、楽しい。


時子さんはスカバンドを携え出てきた。


「ねぇ、まーちゃん」

「うん、時子さんだね!」


俺ははぐれない様に、ひなと手を繋ぎライブをみていた。


「2人でライブ見たの初めてだね!」

「そうかな? でも、確かにないかも」


「ひな……一緒に見れてよかったよ」

「うん……でも、もうすぐ出番だね……」


俺たちが、バックステージに向かうと、ジョニーのバンドがいる。


ジョニーがノエルに何か話しかけて居たが、演奏の音もありよく聞こえなかった。


俺はそっとかなとサヤに手を振りその場を後にした。


久しぶりのギタリストのみでのステージは客席がよく見える。ほとんどメジャーバンドや関係者、冷静に考えたらなかなかプレッシャーだよな。


ノエルがてを上げると、客席が湧いた。

流石はコールドプラン。


ベースのリフが始まると声があがる。

普段のライブとは違いみんな自由な感じだ。


俺も重低音のフレーズを正確に力を込めて弾ききる。


この重さはなかなか出せないだろ?

ひなのドラムもいいキレだ。


ノエルが歌い始めると、空気が変わる。

メインボーカルじゃなくてこの実力……スタジオとは桁違いのオーラが溢れ出す。


これがロックスターか……。

なんだろう、このオーラとしか言えない迫力。


本当に一緒に出来て良かった。



♦︎



ライブが終わると、充実感でいっぱいになっり4人でハグをし合った。


「サンキュー! サンキュー!」

「アリガト! アリガト!」


あとはジョニーのバンドがどんな風になっているかだ……。


まだ余韻に浸っていると、ステージにジョニーが現れた。


ステージに立つと、ジョニーはアコギを置いた。


彼らがカバーしたのは……


"don't look back in anger"


オアシスの名曲。

何より驚いたのは、サヤは知っているが、かなの存在感も尋常じゃない。


ジョニーが歌い始めると、その存在感は掛け算をしたように膨れ上がった。


これ、本当に"ハンパテ★"に帰って来てくれるのだろうか? そんな不安がよぎるくらいのステージに感じた。


◯用語補足

・TOOL

アメリカのダウナーなメタルバンド。

個人的にはプログレにも感じるけど、ミューズにメタル感を強くしたようなかんじかな?


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