変人
朝、目がさめるとサヤが隣で寝ている。
移動だのなんだので本当は疲れていたんだろうな……。
おれはそっと頭を撫でると、サヤは目を覚ました。
「あ、おはよう!」
俺は少し慌てて言う。
「おはよ」
サヤは寝ぼけたまま、ギターを手にとり、弾き始める。
ボブマーリーの曲だった。
うん、朝の感じは凄くするけどなぁ……
「心配しなくていいんだよ、全て上手くいくからね」
急に言ったサヤの言葉に俺は驚く。
「ボブマーリーの言葉」
「あ、そうなんだ……」
「まひるは、何か心配してる?」
「そりゃ、色々とね……」
俺がそう言うと、サヤは"マスたんを手渡した。
「まひるも弾くといいよ」
「……うん」
俺は"マスたん"を手にとり、フレーズを重ね口ずさんだ。
「シャララ…(朝がき……)」
「サヤ! それボブマーリーじゃなくて真心のカバーの方だよ!」
サヤは少し驚くと顔を赤くした。
♦︎
「……というわけでサヤがきたんだよ」
「えー? サヤさん学校大丈夫なの?」
「わからないけど、今はわたしの家でギター弾いてる……」
俺は学校につくと、ひなと話していた。
クラスに人が入って来ると、視線を感じる様になった。
「おっはよー! なあなあ、うち来る時声かけられてんけど2人はどうやった?」
「あたしは来る時誰も居なかったから……」
「まぁ、ひなは早いからなぁ……」
「わたしも特には……」
「結構宣伝効果あるかもなぁ」
かなの言うように、クラスでも何人かは知っている様で、声をかけられた。
「木下さん、サマーフェスティバルに出るんでしょ? 夜中のCMでみたよ!」
「うん、良かったら見に来て!」
「サマーフェスティバル行きたい!」
クラスでも、気になってくれた人も居るみたいだけど、俺はどこか気になる部分もあった。
チケットを取って欲しいはいいのだけど、無料で取れると思っている人。ゲストですら正直枠に限りがあって割引なんだけど……。
ただ、仕組みを知らないだろうから、タダで取れるか聞いてくるのはいいけど、機嫌が悪くなるのは本当に困る。
(一般的にはそういうもんなのかな……)
俺は少し憂鬱な気分になった。
♦︎
放課後、サヤを連れてスタジオに行く。
由美もサヤを見たいと合流する事になった。
「サヤさんはじめましてでっす!」
「だれ?」
「さっき話した由美だよ?」
「ギター、するの?」
「はい! 由美もサヤさんのギターが見たかったんでっす!」
「そう……」
(ねぇねぇ、サヤさんっていつもこんなかんじなんでっすか?)
「サヤは人見知りだからねー」
(よかったぁ、由美嫌われたかと思っちゃいました)
サヤはすぐさまアンプを繋ぐと軽く弾き鳴らす。
「えっ、えー! サヤさんめちゃうまじゃないでっすかー!」
「せやで! サヤは唯一まーちゃんに対抗できる高校生なんやで!」
サヤは少し顔が赤くなる。
「お姉様、ギターを教えて欲しいでっす」
サヤは驚いた様に目を見開くとギターを持つ様に手で合図した。
「はい! これでよいでっすか!?」
「何か……弾いてみて?」
由美のレスポールがフレーズを奏でると、サヤは少し笑顔になる。
「由美の音、かわいい」
「本当でっすか!」
案外この2人結構仲良くなるんじゃないだろうか?
ただ、俺はひながやっぱり気になっていた。
やっぱり苦手なのかな?
ひなに目で合図を送るとひなは気づいたみたいで、サヤに話しかけた。
「サヤさん、あたしのこと好き?」




