サヤの過去
サヤの事が俺は気になっていた。
サヤのバンドの人はサヤの事をわがままな天才と思っている節ががる。だけど"ハンパテ★"でのサヤはそうじゃない。
どちらかと言わなくても尽くすタイプ。
俺のギターがあるからなのか?
答えを出すには俺はサヤの事を知らなすぎるのだ。
「ちょっと、ちょっと! サヤちゃんそれはまずいって!」
部屋で待っていると兄の声が聞こえる。
サヤ……何かやらかしたのか?
ドアを開けると、理由は明確だった。
下着姿で服を持つサヤは何故か威風堂々としていた。
「サヤ! それはお兄ちゃんビックリするよ!」
「なんで?」
「なんで? って女の子が下着で居たら驚くでしょ?」
「フフッ。いいけど」
よくねーよ!
「まひる、とりあえずTシャツかなんか貸してやってくれ……」
とりあえず最近着ていないTシャツをきせると兄を安心させるために兄の部屋に行く。
「ちゃんと着せといたよ!」
「報告とかいらねーし! 流石アーティスト、へんな友達多いよなぁ……」
サヤは兄の部屋のギターが気になるようだ。
「ねぇ、その子の音聞かせて?」
あれ? サヤ普通に喋ってない?
「というか、お兄ちゃんギター買ったの?」
兄の部屋にはいつかのエピフォンではなく、ギブソンのSGがあった。
「先週買ったんだ、いいだろ〜?」
「ギター買うならついて行ったのに〜」
「まぁ、自分で気に入った色だからなぁ。その子もギターひくんだろ?」
「うん、上手いよ?」
「自分で言うレベルかよ」
だから、さっきからサヤ普通に喋ってない?
そう言うとギターを弾き始めた。
「上手っ、まひると同じくらい? 俺ギターやめよっかな……」
「これ、いいギターだけど調整した方がいい」
「マジで? 買ったばっかりなんだけど」
サヤはそう言うと工具で調整を始める。
早い……。
しかもチューナーを使わずチューニングまでしてしまった。絶対音感かよ……。
「ちょっと弾いてみて?」
「俺? 弾くの? 笑うなよ?」
そう言って弾いた兄は以前より大分マシになっている」
「フフッ。練習もっとした方がいいよ」
「わーってるよ! てかこの子ひどくね?」
「でもオクターブバッチリ! 良かったねお兄ちゃん!」
兄は複雑な顔で「ありがと」と言った。
♦︎
部屋に戻るとギターに向かうサヤを止めた。
「サヤ、一旦ギターはストップ!」
「!?」
「サヤ、もしかして男の子なら喋れる?」
サヤはコクリと頷いた。
やっぱりか……人見知りは女の子限定か。
「わたしらにも気軽に話してよ?」
「が……がんばる」
俺はそれから、サヤのギターの事や学校の話を聞いた。
「ギターは、お父さんの……」
「サヤのお父さんはギタリストなの?」
「そう、でもほとんど居ない」
俺の知らないギタリストだったけど、のど自慢などのバックで弾く、スタジオミュージシャンだった。
お母さんはおらず、基本的には家では1人父のギターの中からは自由に使えるらしい。
「なるほど、それでデュオジェットなわけね……」
多分、サヤは小さい時そのスタジオミュージシャンの父に着いて日本中を回って居たんだろう。
幼少期を大人の男性社会で過ごしたサヤは待ち時間をほかのスタジオミュージシャンと話し、小学生の時にはもう友達とは話が合わなくて浮いていた……。
「そうだったんだ……でも、ひなやかなには気を使わなくていいよ」
「でも……」
「あの2人は大丈夫だよ」
「うん……」
なんて言ったって俺が大丈夫なんだから!
まだ、染み付いた人見知りは解消されては居ない様だが、心なしか打ち解け始めた様に感じた。
部屋で1人。ギターと過ごす生活か……。
俺的には理想な様で少し切ないな。
その日、一緒に寝ることを俺は提案すると、サヤは驚き、はにかんだ笑顔を見せた。
(まひる、ありがと)
小さく呟いたサヤの声に俺はどこか親近感を覚えていた。
あれ? 最近おれおっさんの感覚なくなってきてないか?




