祝日の練習
家に着いてから、俺は次の曲を考えながらひなちゃんとラインをしていた。
完全に忘れていたのだが、ラインで明日が祝日という事を知った。
夕飯の時に冬服をそろそろ買わなきゃね、とママが言っていたのを思い出し、ひなちゃんたちを誘ってみる事にした。
まひる:明日さぁ、3人で服をみにいかない?
ひな:ごめーん、明日は雅人と予定があって
ん?2人で??気になりすぎるんですけど。
だが年頃の女の子だ……
まひる:えー!デート??
と気軽に返してみた。
ひな:そんなんじゃないよ!楽器の事とか教えてもらおうと思って!雅人楽器暦ながいから詳しいしね!
俺の方が詳しいんですけど!
と、いうわけにもいかず、
そうだね!先約がいるなら仕方ない!
と返した。
俺も行こうかと、行く言い訳を考えてると。
かな:まーちゃんひまなの??ウチちょっと曲で聞きたい事あるからあした家に行っていい?
とかなちゃんから飛んできた。
曲の事なら早い方がいい。
俺は"いいよー"と返して、ちょっと残念だったが明日はかなちゃんを特訓することにした。
♦︎
次の日、朝からかなちゃんがベースを持って家に来た。
「やぁやぁ! 待ってたかい?」
かなちゃんはいつも通り元気そうだ。
部屋にあげると、俺は気付いてしまった。
女の子と2人っきりで6畳の部屋にいるのだ。
ひなちゃんの方が好みなのだが、かなちゃんも流石に同じグループとあってルックスのレベルは高い。
本来なら土下座してでも帰したくない。
俺は下からお茶を持ってきながら、睡眠薬を入れる妄想とかしていた。
「はーい、お茶」
とりあえずお茶を置いて本題だ。
「どう?曲弾けそう?」
「いちおう練習してみたんだけどBメロがあってるかわからんくて……」
なるほど、リズム符だけじゃ難しいかもな……
俺はかなちゃんに、一度弾いて見せてからレクチャーした。
「基本的にリズムは表と裏のになってて、ピックで弾く場合は振り下ろすときが表、振り上げるとき裏のを弾くと安定するよ!」
「おぉ! ほんまやね!」
「まーちゃん、同じ位にはじめたんに、めちゃうまやね!」
いや、ごめん、違うんだ……
練習をしっかりやってるのがわかるだけに、申し訳なくなった。
「ウチも早く2人に追いつかんと……」
「いや、かなも大分上手くなってるよ!」
俺は励ますとつい手を握ってしまった。
恥ずかしくなって別の話を振った。
ひなは雅人と何してるんだろうね??
「だねー、でも雅人だし、普通に楽器の話やない?? ひなもなんかやりたそうやし!」
「そっか!ひなちゃんも何かしたいのかも!」
俺は色々とほっとした。
「まーちゃん雅人が気になる??」
いや、どちらかというとひなちゃん……。
「いやいやいや、雅人はないよ!」
と返した。
「バンドから恋ははじまるかもょ」
かなちゃんのキャラを初めてまともに見た気がした。面白くていい子だなぁ……。
「雅人とひないちゃこらしてたらおもろいのになぁー」
笑いながらかなちゃんは言った。
そんな事はない、ひなちゃんは渡さん!
「ひな、俺、おまえがずっと好きだったんだ!」
雅人の真似をしだす!
「雅人は友達としてしか見れないのでごめんなさい」
俺もひなちゃんの真似で対抗。
ドンッ! 何故か壁ドン。
「そんな事言って、俺のこと好きなんだろ?」
顎をクイッとされた。
いやいや雅人なにキャラだよ。
その瞬間……チュッ。とされた。
「こんなかんじで雅人に唇奪われてないかなー」とかなちゃんは笑った。
えっ? 今、キスされた?
ちょっとドギマギしている。
ドギマギ感をごまかすために、
「雅人何キャラ〜?」 とだけ言っといた。
かなちゃんは特に気にする様子も無く、笑っていた。
そのあとは、特に何もなく。
順調に練習して「ありがとう!」と言って帰っていった。
バンドは順調だが、俺の心の中はかなちゃんのキスでいっぱいになっていた。
(まさかこの身体でキスするとは……)
最後まで読んでいただきありがとうございました!