心機一転!
かな鞄の中から一冊の資料の様な物を取りだした。
「かな? なにしてるの?」
「うちはまーちゃんの事情はわからへんけど、これが出来たら卒業してもシーサイドで活動していけるんちゃうかな?」
かなが出したのは、今までの活動からどうなれば音楽で食べていけるか?という物だった。
「かな……ごめん」
「ええよ、まーちゃんはまだ、うちらを巻きこんだ事に責任をかんじてるんやろ?」
かなやひなだけじゃ無い、まひるちゃん自身も巻き込んで放り出す事は出来ない。
「うちらは巻き込まれたなんて思ってへんよ? やりたいからやってるんやで?」
その言葉に俺は涙がこぼれた。
「昔からそうや、まーちゃんは色々きにして自分でなんでも責任かんじてる。意識は変わったけどそこはなんも変わってへんなぁ」
うすうす感じてはいたけど、まひるちゃんと俺はどこか似てる部分があるのかもしれない。
「うちがショートヘアにしたんも、つづけているんもうちの意思やで」
過去の日記では、色々悩んだりしている事が綴られていた。ただ、まひるちゃんは表には出してはいなかったんじゃ無いだろうか?
「ひなにきいたで。あの子はいつだってまーちゃんを心配してる、ひなを早く安心させたってな」
かなの細い腕が"マスたん"に伸びる。
「なぁ、まーちゃんギター教えてや! うちも
魔法使えるようになりたいねん」
「魔法? わたしそんなの……」
「まーちゃんのフレーズは魔法やで? 軽音部で合わせて改めて思ったわ。あの弾き始める時のドキドキ感は、まーちゃんにしかでけへんよ」
その後俺はかなにギターを教える。
単音では近いからか、かなは苦戦しつつも楽しそうに弾いた。
「かな、とりあえずシーサイドで出来る事をしっかりやって行こう」
かなはコクリと頷いた。
♦︎
それから2週間が経った頃、ヒロタカさんとのイベントが迫っていた。
部活での曲も形になり、それぞれのチームで、交互に見せ合う事になる。
最初はかな達のスカチーム。
部長はトロンボーンを持っていた。
"追憶のライラック"
スカパラとハナレグミがコラボしていた曲で、普段弾かない様な曲をかなやひなが演奏しているのが新鮮だ。
歌は……部長?
「トロンボーンもだけど、部長歌上手い!」
「そうだよ、あの人なんでもできるからね! まぁ、ギターがあそこまで差があったのは相当ショックだったみたいだけど……」
ホーン隊をうまく歌う用にアレンジして違和感を感じさせなかった。
次は俺たちか。
六花のピアノからはいる。ピアノの椅子に座ると雰囲気が変わった。
(え? 六花? スイッチが入った?)
六花は本番で実力を発揮するタイプだった。
その奏でる旋律が、踊る様な表現力。
明らかにピアノが引っ張る……。
俺はマイクに向かうと、由美がニコニコしていた。なるほど、由美はこれを知っていたんだな。
俺はこの心が踊る旋律に合わせ丁寧に歌った。先輩のギターや少し歪んだベース、ピアノにつられドラムもキレをました。
曲が終わると、由美は大きく叫んだ。
「バンド組んで"ハンパテ★"とやりたーい」
「それ! 俺もやる!」
「俺も!」
「わたしも!」
こうして、対ハンパテ★バンドが軽音部内で結成された。




