さくら咲く
受験の結果発表当日俺は寝不足だった。
結果が気になるのもあるが、ひなのDTM、フェスへのアプローチ、さらには高校生になる事を考えるとやる事は山積みだ。
DTMに関しては、流石に基礎知識位はある。
だが確実に古い。無理もない触れたのは俺の全盛期。DAWソフトのプロツールスがウィンドウズで出たとか言った時代だ。
あれから出来る事も増えているはずだ。合間をぬってネットで調べるようにした。
二つ目は、フェスへのアプローチ。
今の周りは西田さん含めどれかは出れると信じて疑わない。
だが、その難易度は俺が一番よく知っている。なぜなら俺は20年フェスに出れていないのだ。
最後は、正直一番の問題と言っていいだろう。高校生になる事だ。
今までは中学生と言う制限が、ある意味武器だった。高校生になれば、お金もある程度使え、本格的に活動出来るバントがふえる。
比較されるバンドやギタリストが格段にレベルが上がるんだ。アーティストで言えばティーンズフェス出身や閃光ライオット出身たちか……山嵐も高校生でほぼ完成していた?
ギタリストも本来の俺とほぼ歳の変わらない森下志音はメジャーに行っていた。
更なる進化を見せられるだろうか?
♦︎
桜がもうすぐ咲きそうな時期。
結果発表を見に行くためにに、2人と待ち合わせをする。
「おっまたせー!」
「かなーギリギリだよー?」
「なんか色々緊張しちゃってん」
「わかるー! でもきっと大丈夫だよ!」
赤信号みんなで渡れば……ちょっと違うか。
3人で向かうと不思議と足取りは軽くなって緊張が少しほぐれた。
張り出された表にはたくさんの受験番号が書いてあり、周りの人は一喜一憂している。
「あー! あたしのあった!」
「うちもー」
ひなとかなは早速見つける。
かなが受かっていて良かった。
えーと、俺のは……。
あれ? あれれれれ?
俺はめを擦る。
えーと、まさか……。
「わたしのが無いんだけど……」
だが2人は不安な顔はしていない。
「え? まーちゃんのあるよ?」
「いやこれ……無いんだけど?」
「いや、あたしの一つ前の番号だし? ちょっとみせてみて?」
ひなはそう言うと、俺の受験票を見る。
「やっぱりあるじゃん!」
「へ?」
9600……0096……あははは!
「ごめん逆さまに見てた!」
「もう、まーちゃん、驚かせないでよ! そもそも9000人も受けてないし!」
「ほんま、まーちゃんはへんなところ抜けてるんやから!」
「あははは。改めて高校でもよろしくね」
「うん、勉強した甲斐あったよね!」
「あれ? うちのおかげちゃう?」
俺たちの笑い声が校庭に響いた。
すると1人の女の子が近づいてきて声をかけてくる。
「あのー? もしかして"ハンパテ★"の方ですか?」
「そだよー! もしかして知ってる?」
「もちろんです! "スターリン"と対バンされてた時から知ってまっす!」
「ふぇー! それホンマにレアやん!」
「もしかして軽音部に入られるんですか?」
「入ろうかなと思っているよ!」
「わたし、牧野由美っていいます! ギターやってるのでよろしくお願いしまっす!」
由美ちゃんは、ポニーテールで150cmくらいの小さい可愛らしい女の子だ。
「ギターやって! まーちゃん!」
「早速友達が出来そうだね!」
「いえいえ、まだまだちょっと弾けるくらいなので色々教えて欲しいでっす」
「ギターは何を使ってるの?」
「ギブソンのレスポールスタジオでっす!」
「おー! いいギター!」
「兄のお下がりなんでっす!」
兄? レスポールスタジオ?
そしてこの喋り方……どこかで聞いたことあるような?
「軽音部にはいるの?」
「はい! 高校生になったらバンドがしたいと思ってまして……」
「ホンマに? うちらと一緒やん!」
「由美ちゃんよろしくね! 同じクラスになれるといいよね!」
「はい! 是非是非お願いしまっす!」
そのあと、バンドの話で少し盛り上がると、
由美ちゃんはまだ、バンドをした事は無い様子だったが、ギターは結構やってる見たいだった。
そして、この時覚えた親近感は後々解る事になる。




