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俺の音楽ここにあります!  作者: 竹野きの
メジャーに向けて
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活動休止

最年少広告大賞。


話題だったタキオの事故はメディアで大きく取り上げられる事となった。


俺は準備をすませると、両親にこの事を伝えた。


「お世話になった人なのだろう? とりあえず行きなさい」


父親はそういうと、俺の肩を叩き「辛いかも知れないけど、頑張れ」と優しく言った。


ひなとかなと待ち合わせをして新幹線に乗り込む。


移動中、先に広島に着いた西田さんから連絡がある。病院には着いたみたいだか手術中なのか、面会謝絶なのかタキオとは会えなかったみたいだった。


「なんでこんな事ばっかりあるんやろ?」

「広島の公道。タキオさん疲れてたのかな?」

「とりあえず、回復して欲しいよね……」


広島に近づくにつれ、ひなは実感が湧いてきたのだろう、静かに泣きだしてしまった。


俺とかなはひなを慰めながら病院に着くと、色々な人が来ていた様子で、久しぶりに時子さんに会う事が出来た。


「時子さんも来てたんですね」

「まさかこんな形で会うなんてね……」


タキオは家に帰る途中の道で、運転を誤った車に轢かれたのだと言う。


多分、仕事の帰り道だったのだろう。

周りの人の話では、タキオの容体は思っていたより深刻な様子だった。



♦︎



次の日、容体が落ち着いた為。一旦俺たちは帰る事になる。


回復を祈るしか無かった。

俺は、帰り道ガンウィズとのライブの後のタキオの笑顔を思い出す。


「昔から、この瞬間のために仕事をしてます!」


そう言っていたタキオは、完成するまで理解されない事や、その過程での批判を覚悟し、全力で取り組んでいてくれていたのだろう。


それから、何日か過ぎた日。

もう一つのニュースが目にはいる。


大手広告代理店の女性デザイナーが事故で亡くなったニュースだった。


その日は奇しくもタキオの運命の日の翌日。

俺はすぐに、このニュースが転生前のタキオなのだと思った。


「やっぱり……死んでたんだな……」


そのニュースの2日後、後を追う様にタキオが息を引き取ったと知らされた。



♦︎



それからの1週間くらいは、忙しくてあんまり覚えていない。


葬儀で修学旅行には行かなかった事や、俺が思っていたより沢山の仕事をこなしていた事なんかを沢山知った。


数日後、事態は思わぬ方向に向かう。


話題に上がった事で、"サカナ"はもちろん、ガンウィズとのライブが某掲示板でブレイクを果たした。


俺たちの気持ちとは裏腹に、"ハンパテ★"の知名度は一人歩きを始め、地方の番組や雑誌に取り上げられ、出演依頼が殺到する。


かなや、ひなの受けたダメージは計り知れない。出演してない時に俺たちは話す事すらしなくなっていた。


そんな時、西田さんから連絡が入る。

「まひるちゃん、11月から"ハンパテ★"の活動を制限しよう」


俺は耳を疑う、シーサイドにとっては今のタイミングが一番の稼ぎどきのはずだ。


「西田さん、なんでですか? 今、一番のチャンスなんですよ!」


「中学生が何を言ってるんだ? 大切なアーティストを潰してまで稼ぐ金なんてないんだ」

「わたしはまだ大丈夫です!」


「いいか? まひるちゃん、僕は君たちと契約する時に一つだけ決めていた事がある」


西田さんは少し間を置いて話した。

「君たちを最高のバンドにする事。今、最高のバンドにする為には制限するのが最善と判断した。これは社長命令だ」


西田さんが今まで一度も立場を使う様な事を言った事は無かった。半ば怒りにも近い口調で言ってくれた西田さんに俺はどこかで感謝したのかも知れない。


「2月までだから。それまでに必要な事を済ましておきなさい」


受験……だけじゃないよな。

俺は西田さんにひなや、かなのケアを含めて託された気がした。


「大丈夫、君たちは何度でも上に上がる事はできるよ、また、3月に新しいアルバムを作ろう」


その言葉に俺自身救われた気がした。

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