曲作り
バンド名命名式から家に帰った俺は早速曲作りに取り組んだ。
文化祭でインパクトを出すには、イントロの時点で、インパクトを出すのは必須だ。
なるべくシンプルな音選びで、キャッチーに響く方がいいよな……。
俺はゴムで髪を縛り、
早速相棒のマスたんを手に取り、色々とリフを試してみることにした。
明るいメジャー進行で、Aメロは音圧を減らし歌を聴かせたい。
Bメロはリズムの変化で持っていって……サビはイントロのキャッチーさにつながる方がいいな……。
おれは夢中になり、夜まで曲を作り続けた。
4時間以上ノンストップでギターと格闘していたせいか、手がヒリヒリする。
それもそのはずだ、ギターを長年弾き硬くなっていた元の俺の手とは違い、
最近始めた、それも女の子のやわらかい手なのだ。
本来もっと早く豆なり出来て血だらけになってもおかしくないが、多分身体が変わっただけで、
ブランクのまったくない状態なので無駄な力が入っていなかったんだろう。
ようやく曲が完成した、俺的にはかなりの力作だ。西海岸系のリフは、コードの構成はかなりシンプルになる。シンプルさは聞いた時の印象にもなるので是非とも取り入れたい部分だが、昨今の日本の音楽では複雑な雰囲気、世界観的な要素も重要視されているので、曲の色を変えるBメロなんかでその要素は入れたい。そうすると自動的に辻褄をあわせて……っと、ところどころに日本のギターロックを彷彿させるセブンスやナインスをアクセントで入れている。
全体的にかなり聞きやすく、オリジナリティの高い曲になったと思う。
歌詞は意外とすぐに浮かんできた。1週間以上女子中学生をしてみて、新しい刺激が多すぎたのだ。
客観的かつ主体性のある女子中学生ライフが詰まった歌詞になった。
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一仕事を終え、風呂に入る。
最近裸にも慣れてきてすんなり入れるようになった。
風呂から上がり、洗面台にあるものがあることに気付いた。
明らかに若い子向けのムースやヘアケア用品と、
化粧水と乳液らしきものが……。
これはまひるちゃんのものに違いない。
俺は普段洗顔は水でしかしないからまったく気にしていなかったが、今は仮にも思春期の女子だ。
なんとなく使っておこうか。
俺は、置いてあった二つの化粧水と乳液を顔に塗っておいた。
また使い方は調べておこう!
最近は学校で簡単なメイクの話なんかも出たりしていて、
もうすでにメイクしだしている子もちらほらいる。
この機会にちょっと意識して覚えていこうかなと思った。
(明日はみんなに曲を披露だ、気に入ってもらえるといいな!)
○用語補足
・セブンス、ナインス
コードを構成する音の一つ。ルート音を中心として7度の音が入るものをセブンス、9度の音が入るものをナインスといいます。個人的な感覚ではセブンスは少し抜けたような音、ナインスはオシャレ感がでる。わかりにくくてすいません。
ほかにも9度は2度の音だったり、その音を入れることで3度が消えたりとかややこしい内容もありますが……記事になるレベルなので省略します。気になる方は「ナインス コード」などで調べてみてください。