七日目~旅館~
小春日和。
フリーターだった私は、オフ日に床と間のある和室でガッツリ布団を敷いて漫画を読みながらゴロゴロして
いたらいつの間に眠ってしまいました。
森に囲まれた純和風の旅館。湖の浮島にそれは存在し唯一陸地と旅館を結ぶのは、大きな木製のアーチ橋。
朱塗りの手すりに年季が見て取れる旅館に比べて木材は劣化がなく新しい。
親兄弟、祖父母も引き連れて楽しげに話しながら私は橋を渡る。
家族親戚共に仲の良くない現実ではありえない光景だ。
ああ、これは夢なんだな。
橋の半ばにて自覚する。
正面は立派な引き戸があり、仲居さん達が出迎え私たちを中に招き入れる。
意外とこじんまりとしたロビーは石畳で、休憩用にベンチが数台置かれてある。
出迎えた和装の女将さんに案内され部屋へ向かう。
部屋までの道のりは夢なので曖昧だ。はっきりした記憶はない。
ひたすら女将さんがニコニコ笑顔を振り撒いていた。
案内された部屋へと足を踏み入れるとそこには宴会でもできそうな広間があった。
何も置かれていないただの広間。
四方見まわしても部屋を区切る襖しかない。
宿泊施設の客室に置かれていて当然のテーブルや椅子、収納家具アメニティなど一つもない。
ただ、何もない広間がそこにあった。
天井と襖の間には複雑な彫り物がほどこされている欄間がある。
不思議に思い襖を開く。
目の前に映し出されたのは今いる部屋とまったく同じ光景。
そしてそこも襖に囲まれている。
嫌な予感がして奥の部屋の襖を引く。
広間だ。
何度も何度も襖を開くが同じ広間が永遠と続く。
振りかければ開け放たれた襖の向こうにいくつもの広間が連なっていた。
抜け出せない恐怖に駆られ、次々と部屋を暴いていると、遠くの方から女の高笑いが聞こえてきた。
甲高く耳障りな心底おかしいという含みを持つ笑い声。
徐々にその声は大きくなり、嫌だと頭を振ったら目が覚めた。
耳元で女の高笑いが....。
口元を耳に当てたくらいの至近距離からの笑い声。
慌てて頭を横に振るが、そこには誰の姿もなかった。
体を起こし震える自分。
ただ、女の高笑いの余韻が耳に残っていた。