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記録  作者: 福森 月乃
10/10

十日目~残業のあと~

前回、車についてお話しして思い出した出来事です。


 会社で残業して外に出たころにはすっかり日が暮れていました。

辺りは真っ暗で、街の灯りと街頭が頼りです。


 車で通勤していたので駐車場を借りていました。

会社から徒歩十五分くらいの場所です。


住宅街の中にある駐車場でした。歩くうちに人の往来もそのうちなくなり、ぽつりぽつりと間隔が広くなった街灯と住宅の窓明かりが頼りの明るさになっていきます。

次第に自分の歩く足音がやけに耳に響くほどの静寂。

もちろん住宅街なので時々、人の声や犬猫の鳴き声を耳にすることはありますがそれも遠くに感じます。


 長くも短くも感じた移動時間が終わり、駐車場に着きました。

車九台ほどが止められる、そう大きくはない駐車場。自分の車以外にも数台停まっています。

個人で経営している駐車場なので、地面は砂利でところどころ草が生えていてそこを囲う柵もなくオープンな状態です。

車以外にトタンと木材で作られた小さな小屋とそこに備え付けられた街灯一つがあるだけ。

駐車場を照らすのはその街灯のみで、うすぼんやりと灯りが届く範囲から外れるとすぐ闇が広がっています。


人気がないのが少し怖くて急ぎ足で車の運転席側のドアへと向かいました。

バックから取り出した鍵を差し込みまわして顔を上げると、自然と灯りのある小屋へと視線が向きます。

視界に赤いものが飛び込みました。


ちょうど光と闇の境目に赤いランドセルが......。

見間違いかな目を凝らすと、女の子がこちらに背を向けて立っています。

赤いランドセルを背負った制服姿の小学生がそこにいたのです。

黒髪なのはわかるのですが、体のほとんどが暗闇に隠れて見えにくい感じです。


駐車場の一番奥にある小屋の裏のほうへ体を向けて、二十三時を回るこの時間にただ一人。

近くに学習塾も学校もありません。

駐車場に入ってきた自分に一瞥もすることなく誰かを待っている様子でもないのです。

自分に気づかないはずもない、歩けば砂利が擦れて大きな音がするしここにはわたしとその子しか居ないのですがら存在に気付かないはずがないのです。


でも、駐車場に足を踏み入れた時は確かに誰もいませんでした。

入り口は私が入ってきた車道側だけ。そこ以外は住宅に四方八方塞がれているのですから。

どこから入ってそこまでどう移動したのか、いつからそこにいたのか。

私の死角にはいるのも難しい場所でした。


ただならぬ雰囲気に息を飲んで、失礼ながらソレが生きている人間ではないと判断しました。

そ知らぬふりを決め込み、落ち着いたふりして車に乗りエンジンをかける。

いつもと変わらぬ動作で駐車場を後にしました。


ちらりとサイドミラーで後方を確認すると、街灯下の小学生の姿はまだあり、その顔がこちらを向いていた気がしました。


 その後、その正体はわからぬまま、声をかけて保護すべきだったかなぁと時々思い出してはそう考える時があります。

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