第1話 彼との出会い
この物語はフィクションです。
登場人物及び登場団体は実在するものとは無関係です。
私は人生で初めて、幸福と絶望の壁に挟まれた。
私の名前は榎本 遥、東京に住むごく普通の女子高生。けれども一つだけ普通じゃないことがあります。それは、私には霊が取り憑いていることです。
このことを最初に知ったのは中学三年の修学旅行の後だった。
「ねぇねぇ遥、修学旅行の時にみんなで撮った写真を見ていたんだけど、遥の所に変なものが写っていたんだけど…。」この子は私の友達の一人で、名前は木下
明香里。私はあーちゃんって呼んでます。
「あーちゃんいきなりどうしたの?そんなに変なものが写っていたの?」「うん…見たら分かるよ…。」私はあーちゃんの撮った写真を見てみた。「なにこれ…。」そこにくっきり写っていたのは、私の背後にある白い何かだった。
「まぁ…光かなんかだよ…。」私は誤魔化すように、少し笑いながら答えた。
「それならいいんだけど…なんかあったらすぐ連絡してね?」「あーちゃんありがとうね、今のところは大丈夫だよ。」私はこの日以来、写真を撮るたびに白い何かが写るようになった。
「遥、あんた霊能者の人に見てもらったりした方がいいんじゃない?」「お母さん大丈夫だよ、別に何もないから。」「今が無事だからってこれからも何もないって保証はないんだよ?私も付いて行ってあげるから…ね…?」私はお母さんの不安そうな表情を見て、霊に詳しい人の所に行くことにした。
「これは男の人の霊だね…しかも霊気が強い…あなた無事なことが不思議なくらいの霊気だよ…。」霊能者
の人は怯えるように言った。「この子に取り憑いてる霊は祓えないのですか…?」「何度も試しましたがこれほどの霊気ともなれば…」「そうですか…遥…帰りましょう…」
私は自分がどうなっているのか理解できないでいた。
(遥…久しぶり…僕だよ…か……だよ…)
「はっ…夢…?僕だよ…?」私は夢うつつのまま、顔を洗いに行った。私は何度も同じ夢を見た。
「誰…あの人は誰…分からない…でも知ってる…。」
私の心の中のモヤモヤは大きくなっていった。私はある日、家に誰もいない時を狙って部屋で独り言を言うように問いかけた。「あなたは一体誰なの…私に取り憑いて何をしたいの…?」静かな空間に私の声が響く、少し時間が経ってから答えが返ってきた。「遥…久しぶりだね…僕だよ…海斗だよ…。」私はその聞き覚えのある名前と声で全てを悟った。中学も途中まで一緒だった幼なじみの海斗だった。「海斗…なんで…えっ…どういうこと…?」正体が海斗だと分かったものの、状況は理解できなかった。海斗は中学二年の時に親の仕事の関係で転校したのだった。「実は俺、死んじゃったんだよ…信号無視で突っ込んできた車に轢かれちゃってさ…。」彼は悲しい出来事をどこか嬉しげに話してきた。「死んじゃったじゃないよ…そもそもなんで私に取り憑いてるの…?」最大の疑問を彼にぶつけた。「…遥のことが好きだからだよ。」「えっ…海斗には彼女が居たじゃん…。」悔しいけれども海斗はイケメンで女子からの評価が高かった。「あれは噂だよ、僕には彼女なんて居なかったよ。」私も海斗のことが好きだった、海斗にまた出会えた、けれどもこの世にはいない。嬉しいのか悲しいのか、私はまだ大人になりきれていない分、受け止められなかった。
私は海斗と話をする中で色々と状況が分かった。(海斗は交通事故で亡くなってる・この世に未練があるわけではなく、加害者にも恨みがあるわけでも無い・幼なじみで好きだった私にとりあえず取り憑いてみたらしい)
「じゃあ写真に写っていたのも海斗?」「そうだよ、全部僕だよ。」私の中にあったモヤモヤは消えていった。「海斗の霊ならひとまず安心だね。」「迷惑かけてごめんね?」「大丈夫だよ!気にしないでね!」私は安心し、自然と笑顔になった。「霊になったけどさ、遥…付き合ってくれないか…?」彼の思いがけない言葉に動揺しながら答えた。「わ、私でいいなら…いいよ…?」「本当か?ありがとうね遥!」
私のちょっぴり不思議な恋愛が始まった。
興味を持ってくださりありがとうございます。
最後の展開まで考えてあるので、楽しみに待っていただけたら助かります!