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閑話 -ある国の公爵令嬢-

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。



・・・というわけで、F.E.Oよりこっちが先に。


俺って奴は・・・!



注意


人物の容姿は読み手の皆さんが想像してください。


飛び飛びの展開です、所謂手抜き(オイ

「シルフィーヌ・セントレア!お前との婚約関係を破棄する!!」


全校生徒の集まるホールにてこの国、アーカイム王国第一王位継承者であるフリーゼン・アーカイム王子より、この私・・・シルフィーヌ・セントレアは婚約破棄を言い渡された。


「・・・・・・?」


何を言われたのか私には分からない、突然のことに頭の中が真っ白になり、茫然としている私にフリーゼン王子は続けてこう言われた。


「お前との婚約を破棄し、私はミュゼと婚約する!!」


フリーゼン王子の言われたことが徐々に理解され、その腕の中にミュゼ・・・ミュゼ・ダナトス男爵令嬢がいた。その二人の姿を認めて、私はやっと正確に理解した。・・・私はフリーゼン王子の口から、公衆の面前にて婚約破棄をされたのだと。・・・何故?私は素直にそう思った。


何故、私が婚約破棄をされなければならないのか?今まで私なりに頑張ってきたというのに、この国の為、良き王妃になる為、ずっと努力してきたというのに、何故突然・・・。


「私は、フリーゼン様に婚約破棄をされるような振る舞いをした覚えはありませんわよ?」


震えそうになる自分自身に活を入れ、何とか口に出した言葉。私には分からない、婚約破棄をされるような事を私はした覚えがない。私は・・・、理由が知りたい。


「身に覚えがないだと・・・!なんと白々しい・・・、ミュゼに対しての暴言の数々、知らぬとは言わせん!」


「暴言とは何のことでしょうか?私は貴族として、淑女として、ミュゼ様に常識をお教えしたことはあります。決して暴言等ではありません、責められる謂れはありませんわ。」


私はフリーゼン王子を真っ直ぐ見詰めてそう言い、その腕の中にいるミュゼ様の方にも視線を向ける。私と目が合ったミュゼ様は、大袈裟に怯えられフリーゼン王子に強く抱き付く。ミュゼ様を怯えさせた私に対して、フリーゼン王子はその顔に怒りを浮かばせる。


「・・・ミュゼを怯えさせることが常識なのか?・・・それに、茶会でミュゼを追い出したらしいではないか。それも常識とでも言うのか?」


「私は、ミュゼ様をお茶会にご招待してはいませんでした。ご招待されていない方が、いきなり参加なさるというのはご法度でしたわよね?」


「・・・だが、追い出すのはやり過ぎだ。」


「いえ、私なりの気遣いでしたわ。本来ならば、自分より位の高いお方のお茶会にいきなり参加した時点で不敬ですから、罪に問われてもおかしくはありません。その不敬を無かったことにする為、あえて追い出したのです。私なりの優しさになるでしょう?フリーゼン様。」


聡明なフリーゼン王子ならば分かるだろう、今はただ・・・少々我を忘れているみたいですけれど、フリーゼン王子ならばきっと・・・。そう思っていたのだけれど、


「そんな筈はない、ミュゼは正式にセントレア公爵家から招待状を受け取っていた。これが証拠だ!」


フリーゼン王子が私の前で広げられたモノ、それは間違いなく我がセントレア公爵家が各貴族へ送った招待状。送った先にはミュゼ・ダナトス男爵令嬢となっている、・・・これはどういうことなのだろう?私は彼女へ招待状を送ったことがない。






見覚えのない招待状、・・・それについて思案していると、思いがけない人から答えを聞いた。


「シル・・・、招待状は俺が送ったのだ。お前には事前に、ミュゼ嬢へ送る旨を伝えた筈だが・・・?」


フリーゼン王子とミュゼ様の背後から、私の兄であるリューハイン・セントレアが現れた。


「お兄様!?・・・私はそのようなこと、聞いては・・・!!?」


私はそんなこと、聞いてはいない。お兄様に視線を合わせ、そのことを言おうとしたのだけれど突然、私の声が・・・声が出てこない!これは一体・・・、言葉を紡ごうとしてもその前に霧散する。この違和感、この不快感、顔をしかめながら何とか・・・、何とか言葉を・・・。


「・・・何だ?そのしかめっ面は。・・・まさかお前、送ったことを知った上でミュゼ嬢を追い返したのか!?」


知らない!私は本当に知らない!お兄様・・・私は!!


「何という恥知らずか・・・!常識がないのはお前の方ではないか!」


激昂するフリーゼン王子、それに続いて・・・、


「・・・お前という奴は、・・・何という愚かなことを。・・・・・・まさか、あの噂も本当のことではなかろうな?」


・・・噂?・・・それは何のことですか?






・・・お兄様の口から語られた噂は、本当に身に覚えがない。何処からそのような話が、噂が出てきたのか?私は人に恨まれるようなことをした覚えがない、故に噂は噂、そう信じたい。


曰く、ミュゼ様の持ち物を勝手に破棄した。曰く、ミュゼ様に因縁を付け、ことあるごとに暴言を浴びせる。曰く、他の方々に命令し嫌がらせを強要した。曰く、ミュゼ様にわざとぶつかり、転ぶ様を見て高笑いをした。


・・・等々、ありもしないこと。私はそのようなことをしていない、神に誓っても良い。それに私は友人であるシャーロット様とニーナ様、二人と共にあったのだ。彼女達ならばきっと、このような噂が真実ではないと言ってくれる、そう信じていた。


しかし現実は・・・、


「私がお止めしてもシルフィーヌ様は、ミュゼ様に対しての嫌がらせを、・・・それをお止めになることはありませんでした。・・・私の力不足で、・・・申し訳ございません。」


目に涙を浮かべながら、フリーゼン王子とミュゼ様へ謝罪するシャーロット様。


「命を聞かねば、家族が路頭をさ迷うことになる。・・・そう言われまして、家族を守る為とはいえ私はなんてことを・・・!お許しくださいませ、ミュゼ様・・・!」


やや芝居がかってはいるものの、涙ながらに謝罪するニーナ様。そして・・・、


「俺もシルフィーヌ様に命令されて・・・。」


「私は嫌だと言いました、けれど家族を・・・!」


「ミュゼ様に足をかけた瞬間を見ました!」


「シルフィーヌ様がミュゼ様の持ち物をズタズタに・・・!」


・・・何なのだろうか、これは。何故シャーロット様とニーナ様が?見知らぬ方々も、全ては私のしたことであると、噂は真実であると言っている。私は・・・!






そして・・・、フリーゼン王子は憤怒の表情で、


「お・・・お前という奴はどこまで・・・!自身の立場を利用してなんたることを・・・!!」


お兄様は私を冷たい目で、


「お前のことを信じたかったが、このような大勢からの訴えがある以上は庇えん。この件は父様と母様に報告をする。覚悟しておくんだ、シル・・・。」


周囲の悪意は全て、私の下へ集まった。私は・・・、


「・・・!・・・・・・!!・・・!?」


何とか無実を、私はやっていないと伝えたいのに、この思いは言葉になることはなく、


「何だその顔は!自身の悪事が皆の前で晒されて怒っているのか?・・・お前は類いまれなる悪女だな!このような女が私の婚約者だったとは・・・!ミュゼ、・・・すまない!」


ただただフリーゼン王子を怒らせるだけ。フリーゼン王子は腕の中のミュゼ様を強く抱き、そしてミュゼ様もその腕の中で・・・。その腕の中で彼女は、私に視線を向けて笑っていた・・・。






・・・それから暫くして、私は城から駆け付けたであろう兵に捕らえられ、城の地下にある牢にへと入れられた。ここにいるだけでも、色々な情報が耳に入ってくる。見張りの兵が教えてくれるのだ、・・・それを聞く度に私は、これから先に来るであろう自身の未来に絶望する。・・・・・・もはや死を避けることは出来ない、身に覚えがなくとも反論も懇願も出来ない私は、その時を待つだけしか出来ないのだから。


牢へ入れられて何日経ったのだろう、その間・・・私の下へ訪れた人物が三人いた。一人は私の兄であるリューハイン・セントレア、・・・いや、もう私の兄ではなくただの他人。・・・私は力なく、彼に視線を向けると嗤っていた。私の見窄らしい姿を見て嗤っているのだ、薄汚れた私を・・・、


「良い姿になったなシルフィーヌ、実に良い姿だ。・・・俺はその姿が見たかった、俺を見下していたお前のその姿を・・・!気分はどうだ、・・・シルフィーヌ!!」


・・・私は貴方を見下したことは一度もなかった、私は私の出来ることを、それで父や母を、兄の手助けになるならと・・・。フフフ・・・そっか、・・・それがダメだったのか、それが見下していたと受け取られていたのね。声の出せない私は、視線を床に戻し項垂れる。兄が私に抱いていた感情を受け止めて、それを噛み締めて項垂れるしかない。そして嗤い声・・・、


「ハハハハハ!声が出せずに項垂れるだけとは、ここに来た甲斐があったというもの!・・・もう分かっていると思うが、お前には未来が無い。故に教えてやろう、お前が声を出せなくなった理由は呪いだよ。お前が幼き頃に、この私が施してあげたおまじないの効果さ。それを無邪気に喜んでいたお前の姿を思い出すと笑えてくる、騙されているまと・・・憎まれていると知らないお前の姿は滑稽だった!」


・・・彼の歪んだ性格は、私のせいなのかもしれない。私が頑張りすぎたから兄は・・・。私の中に残っていた彼との思い出は呪いだった、・・・それはとても悲しい現実だった。


兄が訪れてから数日、次に訪れたのはミュゼ様。その傍らには、騎士団長のご子息であるハロルド・ゼノキサス様。ミュゼ様は牢の外にハロルド様を待たせて、自身は私の傍までやってくる。なんと胆力の強い方なのだろうか、襲われるとは思わないのだろうか?


「久しぶりねシルフィーヌ様、何とも哀れなお姿に。・・・まぁ、私のせいなんですけどね。」


そう言って妖しい笑みを浮かべる。


「貴女は悪役令嬢の癖に突っ掛かってこないからさぁ、自作自演で色々やったらこうなっちゃったの。みんな私のことを信じちゃってね、特に貴女の兄であるリューハイン様!親身になってくれてね、貴女のことは俺に任せろって!・・・貴女、兄であるリューハイン様に相当恨まれていたのね。外で見せる顔は良くても、中で見せる顔は悪だったのね!流石は悪役令嬢、ゲームとは違っていたけど安心したわ!」


ゲームというのは分からないけど、やはりあの噂は真実とは違っていた。・・・今となってはどうでも良いことだけれど。


「貴女のお陰でイベントをこなせたわ、全てのイベントをよ!これから先の未来が楽しみなの、なんて言ったって逆ハーなのだから!私はヒロインなのだから当たり前なんだけどねぇ~♪」


・・・凄く幸せそうな顔、その顔を私に見せに来たのでしょうね。・・・なんて酷いお方なのだろうか。


「・・・っといけない!貴女に教えたいことがあったんだ、私ってばダメね♪」


そう言ってミュゼ様は、私の耳元で・・・、


「ゲームでは貴女、シルフィーヌ様は王国の僻地に飛ばされるの、所謂幽閉ね。安心して、死ぬことはないから。生きていれば良いことがあるわ、だってゲームでは幽閉先で・・・ってこれは後からのお楽しみね♪」


そう言って、私の下から離れたミュゼ様は笑顔で、


「まったねぇ~♪シルフィーヌ様♪」


ご機嫌な様子で出ていかれる。・・・ミュゼ様、貴女は本当に酷いお方。私が幽閉にされるわけがない、私はもう大罪人として囚われている。それを幽閉で終わらせるわけがない、私の辿る道は処刑のみ、それを知っていながらあの方は・・・。


出ていかれるミュゼ様を、色々な感情を抱きながら見詰めていると、


ガッ!


「・・・・・・!?」


腹部に衝撃が走り、私は牢の壁に打ち付けられる。言葉に出来ない痛みに苦しんでいると、髪を掴まれ強制的に顔を上げさせられる。涙を浮かべて痛みに顔を歪めた私の前に、ハロルド様がいた。ハロルド様は怒りに染まった顔で私を睨み、


「汚ならしい大罪人がミュゼ様を見るな!お前は地面に這いつくばって自分自身の罪を悔い続けろ!!」


そう言われ、おもいっきり頬を平手打ちされた。男と女、現役の騎士と牢に押し込められた力無き女。力の差は歴然で、平手打ちされた私は勢いのまま倒れ込む。私は泣くだけ、言葉無く泣くだけ・・・。


「ふん・・・!」


ハロルド様が出ていかれた。遠ざかる足音を聞きながら私は・・・・・・、こんなに苦しむぐらいなら早く処刑してほしい、その思うしかなかった。・・・死を望むしかない、私にはもうそれしか考えられない。






・・・・・・久々に白日の下に出された私は、処刑が行われる大広場へと連行される。幾日も牢へ入れられ、暴力を振るわれ続けた私は歩くのがやっと。痛む身体に鞭打って、ノロノロと歩を進める。私を連行する任を請け負っているハロルド様はそんな私に苛立ち、引き摺るように歩かされる。


私の見窄らしい姿を見た民衆は息を飲む、見るも無惨に変わり果てた私の姿に。民衆の反応を見て、私は安堵する。民衆だけは、私が無実だと信じてくれていると。だって・・・、こんな私を見て、泣いてくれているんだもの。


そして私は死刑台の上へ、そして述べられる罪状は多く、全て身に覚えがないこと。淡々と聞き、最後に・・・、


「罪人シルフィーヌを炎獄の刑に処する、炎の裁きにてその罪を浄化する!!」


・・・炎獄、・・・炎に焼かれて死ぬのね?・・・今の私に恐怖心は無かった、あるのはやっと死ぬことが出来る、その安堵感だけ。






磔のように柱へ縛られた私は、ずっと空を見上げていた。空って何でこんなに青いのだろう、死んだら魂となってこの空を飛べるかな。


・・・私はどうして、・・・どうしてこんな目に合ってしまったのだろう。


・・・貴族ではなく、民衆が一人として生まれていたら、また違う人生が送れたのかしら?


・・・もし生まれ変われるのなら、貧しくても良いから温かい家庭に生まれたい。


色々なことを思いつつ、その時を待つ私の耳に・・・、


「・・・どうして?・・・シルフィーヌは死なないんじゃないの?こんな結末、私は知らない、・・・私は知らない。」


そんな呟きが聞こえた。


そして・・・、


「魔法隊、構え!!」


処刑の時が来た、炎獄の刑・・・圧倒的な火力にて、苦しむ前に燃え尽きる。・・・良かった、これ以上の苦しみは嫌・・・、死ぬ時だけは苦しまずに・・・!


「・・・放て!!」


その合図と共に、魔法隊の面々から一斉に炎が放たれる。・・・私は、・・・私は!!


ゴォォォォォォォォォッ!!


「・・・・・・!!・・・!?」


この国を愛していた元公爵令嬢は、炎獄の刑にて、呪いにより声を上げられず、迫り来る炎に一瞬恐怖し、そのまま燃え尽きた。その様を見ていた民衆の悲鳴が、彼女に対しての鎮魂歌。民衆の想いはきっと彼女を・・・。


・・・この日を境に、アーカイム王国は緩やかに傾いていくことになる。

【ステータス】


名前:ミュゼ・ダナトス

種族:人間

性別:女性


STR:E

DEF:E+

INT:D+

AGL:D-

DEX:E-

MED:D

LUK:D-


【スキル】

〈令嬢〉〈魅了〉


【固有】

〈乙女ゲーム〉


【称号】

異世界の魂

傾国の乙女 NEW!



この転生者は、本編には当分出ません。絡むかも分かりません。

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